【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第二十四章

804 ルセイル王国

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(ソフィア)

嫌な気配がジワリジワリと静かに地面を這っていき、それに伴い空気が淀んでいくのを感じる。

一体この気配は……何?

私はアゼリアと共に専用の馬車に乗り込み、教会へと急ぎながら、頭の中で考えを整理する。

先程<緊急伝煙>が上がり、それから少しづつ強くなっていった今までに感じた事のない様な嫌な気配……。
以前学院の野外授業の時に感じたモノと似ている気がするが、これは全くの別物らしい。
その証拠に以前は倒れてしまったが、今は何とか意識を失う事なく、重い胸焼け程度で済んでいるからだ。

「……っハァ。」

私は、一度胸を軽く叩いて大きく息を吐きだす。
そうは言ってもまだマシなだけで、とにかくただ事ではない事は確か。だから、まずは情報を集めたい。

不安を出さぬ様、手をギュッと握りしめると、それから直ぐに教会へ辿り着いた。
そこでまず目に飛び込んできたのは、神官見習いの者達の忙しなく動き回る姿と、街の人々が避難しているであろう治療院近くにある巨大スペースへ走っていく姿だ。

街の人達は最近人員の余裕ができていた守備隊員達により、定期的に避難訓練を行っていた為、かなり迅速な避難ができたらしい。
ガヤガヤという、たくさんの人々の声がここまで聞こえるが、その中には悲鳴や泣き声に近い声も……。

「ソフィア様。」

「えぇ、急ぎましょう。」

私はアゼリアと目を合わせ頷き合うと、直ぐにヨセフ司教に話を聞くため教会内の<議会室>へと足を早めた。

<議会室>は、何か緊急の事態や決定が必要な際に使われる部屋で、王都を初めとする各地にある教会や主要各所、教会本部と連絡がとれる【通信映像体】が設置されている。

認証式の【魔道路】を通り<議会室>へと移動すると、中では既に、その場の最高責任者であるヨセフ司教と数十人にも及ぶ神官達が【通信映像体】の準備を終え、様々な話が飛び交っている状況であった。

「!!ソフィア様!」

一人の神官が私の存在に気づいて声を上げると、全員が一様にホッと安堵の表情を見せ、私の無事を喜びながら頭を次々に下げる。
そして最初に頭を上げたヨセフ司教は、私とアゼリアに駆け寄り胸に手を当て、はぁ~……と大きく息を吐いた。

「よくぞご無事で……。教会に向かうという連絡を受けましたが、途中で一旦連絡が途絶えたので何かあったのかと肝を冷やしましたよ。」

「ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。
学院を出る際、数多くの【魔導馬車】が、次々と学院内に入ってくるもんですから……何事かと少々様子を伺っていたのです。」

「【魔導馬車】???」


<魔導馬車>

馬の代わりに<スターホース>を繋ぎ、ありとあらゆる防御魔法や隠蔽魔法が施された最高性能を持つ馬車。
主に王族や高位貴族が止むなく危険地帯に行く場合のみ使用を許されていて、王宮管理品の一つに認定されている。
個人所有する場合は、たくさんの手続きが必要となる。


<スターホース>

通常の馬の2~3倍はある筋肉質な体格の馬型Fランクモンスター。
スピードはポッポ鳥に続く第二位と言われており更にパワーは高ランクモンスターに匹敵する程であると言われているため、馬車を引くモンスターとしてはNO・1の人気を誇る。
ただし、草食にしては気性が荒いため『御者』系の資質持ちの専門の者と共に訓練をしなければ大人しく馬車は引いてくれない。
道中モンスターに襲われても、後ろ足の強烈な攻撃で並のモンスターなら一撃で倒してしてくれるため、危険地帯でも問題なく走る事ができる。


その言葉を聞き、ヨセフ司教も他の沢山の神官達も顔を歪ませ口を閉じた。
その面々の顔を冷静に見回しながら、私はゆっくりと口を開く。

「王宮管理品の最高責任者は、メルンブルク家の当主かつ宰相の座についている<カール>様。
そして【魔導馬車】の個人所有を許されているのはエドワード派閥の高位貴族達だけです。
これで敵が誰だかハッキリしましたね。まぁ、最初から分かっていましたが……。」

「何と……。しかし、コレは絶好の機会ですよ!これを証拠に奴らを追い詰める事ができそうですね。
勿論、今の状態を切り抜ける事が最優先ですが……。」

ヨセフ司教が険しい顔をしながら、メガネをクイッと上げる。

ヨセフ司教や他の神官達全員の顔色が悪い事からも、事態が非常に悪い事は理解した。
私とアゼリアが、直ぐに表情を引き締めたのを確認すると、ヨセフ司教は話し始める。

「冒険者ギルド支部長のヘンドリク様が、とんでもないものを森の奥にて発見いたしました。
かつて、あのルセイル王国の半分を飲み込み人の住めぬ魔素領域に変えてしまった呪いの集合体……『呪災の卵』です。」


『呪災の卵』

その言葉が耳から脳へ到達すると同時に、私の足から力が抜け思わず崩れ落ちそうになった。
それにいち早く気づいたアゼリアが支えてくれたため転倒は免れたが、足が震えて上手く立てない。
そんな情けない私を見下ろしたヨセフ司教は、悲痛な表情を見せた。

は、王家に代々語り継がれてきた【裏の歴史】の一つ。

ルセイル王国は、かつて世界一の広大な土地を持ち、季節はこの世界で唯一春夏秋冬の四季を巡る、まさに楽園と言っても過言ではない豊かで栄えていた国であったらしい。

勿論それに比例して兵力も世界一を誇り、その気になれば他国へ攻め込み、一強国として世界に君臨できたのだろうが……当時国を治めていた王は、穏やかで平和を好むお方であったため、人々は平和に暮らしていたそうだ。
しかし────…………その王が何者かに暗殺されてしまい、次に即位したのは王の実の息子である第1王子であった。

彼は王とは正反対ともいえる残虐極まりない性格をしていたそうで、複数いた兄弟達を全て処刑し、更に自身に逆らう者達を全員磔にして、国民達に見せしめる。

”逆らえばこうなる”

そんな強大な力を見せつけられた国民達は彼に屈し、彼の周りはYESしか言わない臣下達で固められーールセイル王国は、新たな王の欲望のまま、厳しい統治がされてしまった。
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