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第二十四章
806 生きなければ……
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(ソフィア)
『逆らう者は皆殺し』
勿論その街を治めていた貴族達は、全員が容赦ない残虐な方法で処刑されていく。
その圧倒的な力と、迷うことなく実行に移されていく残忍性。
それにカリスマを見出した人々は一人、また一人と仲間になっていき、とうとう国の戦力をも上回った男は王都の侵略を開始した。
王と貴族達は、全戦力を駆使して戦ったが敢え無く惨敗。
国民達が見守る中で、その全員が酷い拷問の末処刑され、その地獄の様な時代は大量の血で洗い流される形で幕を閉じたのだった。
そうしてその平民の男は王になり、国は【ルセイル王国】から【ドロティア帝国】と名を変え、現在まで歴史を紡いできたというわけだ。
私はその歴史を思い出し、そのあまりの悲惨さに心を痛めた。
ドロティア帝国の『侵略こそ正義』という考えは、これが始まりだ。
たった一人の絶対的強者の力によって国は侵略され、それが見事悪政を打ち砕いた。
当時の人々にとってそれこそが<希望>であったのだから、それがどんな過酷で辛い状況下だったのかは考えるまでもなく分かる。
当時の国民達は侵略され、統治下に置かれることで救われた。
そして救われた国民達は、救われた事に正義を見出し、『強者に統治される事こそ人が幸せになれる唯一の方法である』────という価値観を創り上げたのだ。
そしてそれは、ドロティア帝国の根本として今もずっと根付いている。
私は震える足に叱咤をしてアゼリアの支えなしでしっかり立つと、心配そうに見つめるアゼリアとヨセフ司教、そして沢山の神官達の顔を見回した。
「今、この国はかつてのドロティア帝国と同じ脅威にさらされていると言う事ですか。
そして、私か大勢の国民の命か……それを天秤に掛けなければならない時が迫っていると。」
「…………。」
私の言葉を聞いたヨセフ司教と神官達は黙って悲しげな表情を見せた。
言葉よりも分かりやすい答えに視線を僅かに下げた、その時────……。
「ソフィア様、貴方は生きなければなりません。」
分かりきった答えを口に出せない私の代わりに、アゼリアが背中を押す様に言い放つ。
私は何があっても生きなければならない……そう答えは最初から決まっている。
私に選択肢は、与えられないのだ。
「…………。」
下げていた視線を上に向ければ、力強い瞳で私を見るヨセフ司教や神官たちの顔と、隣には同様の目で私を見つめるアゼリアがいた。
一つしか選べぬ答えを理解し私は────……。
皆に対し、『何かいわなければ』と開きかけた口は、突然耳に入ってきた声によってピタリと閉じる。
《ソフィア、聞こえるか?》
【通信映像体】の巨大スクリーンから、我が父でありこの国の現王<ニコラ王>の声が聞こえてきた。
私が直ぐに頭を下げて礼をすると、スクリーンの向こうの父は、いつもと変わらぬ穏やかな笑みを浮かべている。
《状況は分かっているな?》
「…………はい。」
確認するように質問した父に、小さく頷きながらそう答えた。
すると父は、僅かに悲しげな色を瞳に映す。
《そうか……。ならばどうすれば良いかも分かっているな?
王として、ドロティア帝国と同じ道を国民達に歩ませるわけにはいかぬ。
そのために、私は<聖令浄化>を使用する事を決めた。》
予想通りの展開に、私は必死に感情を出さぬようグッ……と拳を握りしめた。
そして了承の返事を返そうとしたのだが、突然父がフッ……と笑いを漏らしたため、首を軽く傾げる。
「?お父様、何故笑っているのですか?」
私の質問に父は笑みを浮かべたままそれに答えた。
《いや、すまぬ。あまりにもお前が感情を表に出すものだからつい……な。
────ソフィア、お前は気づいていないかもしれないが、少し前からお前は随分と変わった。
以前は決して弱みは見せまいとまるで血の通わぬ人形の様であったというのに、今は張り付けた仮面の下でマグマの様な熱い『人』の心を感じる。
『敵か味方か』、そうでしか人を見れなかったお前を変えてくれたのは、一体誰なのだろうな?》
ドキッと動揺してしまった胸の内を知られぬ様、素知らぬ表情を貫いたつもりだったが────父にはお見通しだった様だ。
更に、クックッと笑いを口から漏らした父は、話を続ける。
《『物事は他局面から見て判断せよ』
言うには簡単だが実際にそれを実行するのは酷く難しい。
それに必要なのは多くの知識と経験、そして柔軟な心が必要だと私は思う。
沢山の感情で溢れたこの世で多くの視点を持つためには、『人』の心を持っていなければならないのだ。
だから私は今のお前の成長が王として、父としても本当に嬉しい。まぁ、隠しきれずに外に出してしまう所はまだまだだが……。》
父から語られる私に対しての想いを聞いて内心驚いていると、そこから一転。
突然父は『王』になり、周囲にピンッと張り詰めた空気が漂った。
『逆らう者は皆殺し』
勿論その街を治めていた貴族達は、全員が容赦ない残虐な方法で処刑されていく。
その圧倒的な力と、迷うことなく実行に移されていく残忍性。
それにカリスマを見出した人々は一人、また一人と仲間になっていき、とうとう国の戦力をも上回った男は王都の侵略を開始した。
王と貴族達は、全戦力を駆使して戦ったが敢え無く惨敗。
国民達が見守る中で、その全員が酷い拷問の末処刑され、その地獄の様な時代は大量の血で洗い流される形で幕を閉じたのだった。
そうしてその平民の男は王になり、国は【ルセイル王国】から【ドロティア帝国】と名を変え、現在まで歴史を紡いできたというわけだ。
私はその歴史を思い出し、そのあまりの悲惨さに心を痛めた。
ドロティア帝国の『侵略こそ正義』という考えは、これが始まりだ。
たった一人の絶対的強者の力によって国は侵略され、それが見事悪政を打ち砕いた。
当時の人々にとってそれこそが<希望>であったのだから、それがどんな過酷で辛い状況下だったのかは考えるまでもなく分かる。
当時の国民達は侵略され、統治下に置かれることで救われた。
そして救われた国民達は、救われた事に正義を見出し、『強者に統治される事こそ人が幸せになれる唯一の方法である』────という価値観を創り上げたのだ。
そしてそれは、ドロティア帝国の根本として今もずっと根付いている。
私は震える足に叱咤をしてアゼリアの支えなしでしっかり立つと、心配そうに見つめるアゼリアとヨセフ司教、そして沢山の神官達の顔を見回した。
「今、この国はかつてのドロティア帝国と同じ脅威にさらされていると言う事ですか。
そして、私か大勢の国民の命か……それを天秤に掛けなければならない時が迫っていると。」
「…………。」
私の言葉を聞いたヨセフ司教と神官達は黙って悲しげな表情を見せた。
言葉よりも分かりやすい答えに視線を僅かに下げた、その時────……。
「ソフィア様、貴方は生きなければなりません。」
分かりきった答えを口に出せない私の代わりに、アゼリアが背中を押す様に言い放つ。
私は何があっても生きなければならない……そう答えは最初から決まっている。
私に選択肢は、与えられないのだ。
「…………。」
下げていた視線を上に向ければ、力強い瞳で私を見るヨセフ司教や神官たちの顔と、隣には同様の目で私を見つめるアゼリアがいた。
一つしか選べぬ答えを理解し私は────……。
皆に対し、『何かいわなければ』と開きかけた口は、突然耳に入ってきた声によってピタリと閉じる。
《ソフィア、聞こえるか?》
【通信映像体】の巨大スクリーンから、我が父でありこの国の現王<ニコラ王>の声が聞こえてきた。
私が直ぐに頭を下げて礼をすると、スクリーンの向こうの父は、いつもと変わらぬ穏やかな笑みを浮かべている。
《状況は分かっているな?》
「…………はい。」
確認するように質問した父に、小さく頷きながらそう答えた。
すると父は、僅かに悲しげな色を瞳に映す。
《そうか……。ならばどうすれば良いかも分かっているな?
王として、ドロティア帝国と同じ道を国民達に歩ませるわけにはいかぬ。
そのために、私は<聖令浄化>を使用する事を決めた。》
予想通りの展開に、私は必死に感情を出さぬようグッ……と拳を握りしめた。
そして了承の返事を返そうとしたのだが、突然父がフッ……と笑いを漏らしたため、首を軽く傾げる。
「?お父様、何故笑っているのですか?」
私の質問に父は笑みを浮かべたままそれに答えた。
《いや、すまぬ。あまりにもお前が感情を表に出すものだからつい……な。
────ソフィア、お前は気づいていないかもしれないが、少し前からお前は随分と変わった。
以前は決して弱みは見せまいとまるで血の通わぬ人形の様であったというのに、今は張り付けた仮面の下でマグマの様な熱い『人』の心を感じる。
『敵か味方か』、そうでしか人を見れなかったお前を変えてくれたのは、一体誰なのだろうな?》
ドキッと動揺してしまった胸の内を知られぬ様、素知らぬ表情を貫いたつもりだったが────父にはお見通しだった様だ。
更に、クックッと笑いを口から漏らした父は、話を続ける。
《『物事は他局面から見て判断せよ』
言うには簡単だが実際にそれを実行するのは酷く難しい。
それに必要なのは多くの知識と経験、そして柔軟な心が必要だと私は思う。
沢山の感情で溢れたこの世で多くの視点を持つためには、『人』の心を持っていなければならないのだ。
だから私は今のお前の成長が王として、父としても本当に嬉しい。まぁ、隠しきれずに外に出してしまう所はまだまだだが……。》
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