【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
861 / 1,649
第二十五章

(ユーリス)845 希望を──

しおりを挟む
(ユーリス)

「な、な、なんじゃありゃ────!!!!」

ドノバンさんが耳を押さえたくなるくらいの大声で叫び、黒い蝶の攻撃を消し去ったリーフ様の方を指差す。
いつもは同意しかねる事が多いドノバンさんの話も、今は全くの同意見で……『アレは一体何だ?』と心の中で混乱している。

呪いの攻撃があんなにあっさり消されるなど、絶対にあり得ない事だ。
それはこの場にいる全員が知っている事で、誰も彼もががリーフ様を見上げ、あんぐりと口を開けたまま固まっている。

「か、解析班……?」

ケンさんが呆然としながらそう呟くと、一瞬の間が空いて直ぐに「呪いです。」という答えが返ってきた。
するとそれを聞いて、ケンさんに下がれと命じられ後ろに下がっていた若い前衛隊員達がゾロゾロと前に戻っていく。

「『後は頼んだぜ!』」

「『さぁ、呪いの攻撃、何発耐えられっかな~♬』」

先程叫んだケンさんのモノマネをしながら、ぷぷぷ────ッ!と笑う若い隊員達を見て、ケンさんはブルブル震えながら真っ赤な顔に。

「解析はぁぁぁぁぁぁぁ────────んんんっ!!!!!」

続けてケンさんは大声で怒鳴ったが、解析班からは「呪いでぇぇ────すっ!!」とキッパリ言い返されてしまった。
実は俺も『後は任せろ!』などと言ってしまった手前、ものすごく気まずい。
しかも腹立たしい事にドノバンさんも同じ気持ちなのか、いつもなら真っ先に笑うくせに不自然な程スルーしている。
何となく気まずい雰囲気が漂う中、またしても黒い蝶が攻撃しようと力を貯め始め、全員に再び緊張が走った。

「また呪いの攻撃が来ます!!今度は3つ同時です!!」

解析班の者達がそう叫ぶと、即座にケンさんは大盾を構え隊員たちに指示を出す。

「今度こそくるぞ!!若い奴らは下がれぇぇぇぇ────────!!!!!!!」

展開されたスキルで迎え撃つ準備をしたケンさん。
若い隊員達はまた即座に後ろへと下がった────が……またしてもその攻撃はリーフ様によって全て打ち消されてしまった。

シ~ン……。

戦闘中とは思えない程静まり返る中、またしても後ろに下げられた若い隊員達は「『今度こそくるぞ!』」「『若い奴らは下がれぇぇ────!』」とモノマネをしながらスタスタと自身の持ち場に戻る。
ケンさんは胸ポケットからタバコを取り出し、スッ────……と大きく吸い込むと、直ぐにその顔は突如怒りの形相へと変わった。

「解析はぁぁぁぁぁぁ────────んんんっ!!!!!!」

「だから呪いですってばぁぁぁ────────っ!!!」

先程よりも大音量で叫ばれるやり取りに、近くにいた隊員達は耳を塞ぐ。
しかし原因であるケンさんは、そのまま大きく震える手でタバコをスッパスッパと吸いながら、右へ左へとブレブレに揺れる指をリーフ様へ向けた。

「いやいやいやいや────??!あっりえないだろぉぉぉぉぉぉ────!?!?!呪いを消すなんざ聞いたことねぇしっ!!
なんでアイツあんなにケロッとしてんの?何??何??あいつホントに何なの??
────……あ~救世主様だった。よしっ!祈っておこう。」

そのままブツブツと祈り始めてしまったケンさんに影響されたのか、守備隊員達は膝をつき全員が祈り始めてしまった。
更にヘンドリクさんに至っては懐から小さなイシュル像まで出して本格的に祈っている。

一体何をしているんだ……。

流石に戦闘中にこれはないと思い口を出そうとしたのだが、その前にマルクさんがため息をつきながら前に出る。

「全く……混乱しすぎだよ。ケン、皆。ちょっと待って。今パン作るから。」

そう言ってマルクさんは自身の大鎌に付いているトゲ付き鉄球を持って、スタスタと何処かへ歩いて行こうとしたので慌てて羽交い締めにした。

「ちょっと!貴方が一番落ち着いて下さいよ!」

そう必死になだめていると、ドノバンさんがそのやり取りを見てブブ────ッ!!と吹き出し、そのままゲラゲラと笑い出す。
それを限界まで細めた目で見つめながら『これだからおじさんは嫌なんだ!』と改めて強く思った。

柔軟性はなくてすぐにパニックになるし、デリカシーはないし……俺からすれば呪いと同レベルの厄介な生き物だ!

『俺は絶対にこんな歳の取り方はしない!』
そう誓いながら極力落ち着いた声で、動揺してグズグズのおじさん集団に言った。

「皆さん、とにかく落ち着きましょう!とにかく今は『何故?『』と考えるより、今見たモノをそのまま受け入れるべきです。
リーフ様はどうやら呪いに対抗する力を持っている……それに強い!
俺はもしもの話をするのは好きではありませんが、リーフ様ならアレを倒してくれるのではないかと……そんな夢みたいな事を期待し始めています。」

かつてルセイル王国の半分を飲み込んでしまった大厄災『呪災の卵』 
最強と謳われた戦士たちがなすすべもなく倒されてしまった最強の化け物を、たった12歳の子供が倒す……そんな夢物語、誰も信じやしない。

今、目の前で目撃した俺達以外は。

黒いモヤが生き物の様に絡みつくおぞましい化け物を見上げ、グッ!と唇を強く噛む。
しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

無能と呼ばれた婚約者は王を完成させる〜替え玉婚約者のはずが、強すぎる王太子に手放してもらえません〜

統子
BL
兄の身代わりとして王太子の婚約者になった伯爵家次男リュシー。 嘘の名を名乗ったはずが、冷静で誠実な王太子リオンは彼を「力の装置」としてではなく、対等な伴侶として扱おうとする。 本物になりたいと願う替え玉と、完成された王太子の静謐な王宮ロマンス。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

処理中です...