【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
889 / 1,649
第二十六章

(サイモン)873 可愛いって何?

しおりを挟む
(サイモン)

ジャラジャラと胸元や指、手首と全身を飾る見るからにお高そうな装飾品の数々。
服は全体的にダラシなく着崩し、無駄にヒラヒラが多いデザインの白シャツに意味なく胸元がパックリ開いているのが最高に気持ち悪い。

まさに『お金で身体を着飾る』そのものと言える壊滅的なセンスに、思わず意識が遠くなり、ストンと表情は消え失せた。
隣に立つリリアの目もとっくに死んでいて、一切の感情が抜け落ちているのが分かる。
                    
「……ホント気持ち悪い男だよねぇ~。何かを思い出すよ……キモチワル~。」

「フフッ。私も同じ事を思ったわ。下品で気持ち悪い不快な男って何処にでもいるのね。」

心底ウンザリとした様子でそう言ったリリアを見て、ボクは昔の事を思い出す。

◇◇
ボクとリリアは双子の兄妹で、生まれた時から母親しかいない母子家庭で育った。

『母』────と言っても性別は男で、母は男の身でありながら小さな街でたった一人僕たちを生み落としたのだ。
そしてそれからは、不自由を感じる事のないくらいの生活を送らせて貰っていたが、男性とはいえ一人親。
しかも双子をたった一人で育てるというのは中々大変な事だったはずだと思うが、母は物凄く頭が良く、知力を重視するエルフの国では重宝される存在であった。

母の資質は【妖狐人】

主に参謀、諜報、交渉などの能力に長け、更には幻影魔法に特化している能力を持っていたので仕事に困る事はなかった様だ。
しかし、『一人親』『男のくせに女の様な美しい外見』『父親知らずの子を、ましてや男の身で身ごもって出産』『人を誑かす話術や幻影魔法が得意』、その事実を知った者達の中には、心無い言葉を投げつけてくる人達も多かった。

『男を手玉に取る男娼。』
『散々男と遊んで、最後は惨めに捨てられたんだろう。』

鋭く尖った剣の様な言葉で斬りつけられた母は、どうしたかと言うと────合理的かつ正攻法なやり方で、攻撃してきた奴ら全員を身ぐるみを剥いで破滅させていった。
その容赦ないやり方に幼心に恐怖していたのだが、母はニヤッ~と悪い笑みを浮かべてボクとリリアに様々な事を教え込む。

『何かと人を叩くヤツには、触られたくない事1つや2つ絶対ある。』

『正面から戦うより、まずは回り込んで弱みを握れ。それがこっちを舐めてるクソ野郎と対等に話すコツ。』

『相手を利用しようと近づいてくるクズには容赦するな。逆に利用して身ぐるみぜ~んぶ剥いでやれ。』

ハンっと鼻で笑いながら、まだよく理解出来ていないボクとリリアを見下ろし頭を軽く叩くと、最後は寂しそうな顔でポツリと言った。

『知力は、力で劣る者達の最高の武器になる。頭をフル回転して関わる相手を見極めた方がいい。ついていく人を間違えると一生地獄だよ。』

今思っても小さい子供に言う言葉ではないと思うが、母は母でこの世の苦労や苦しみを知っていたからこそ、僕たちに悲しい思いをしてほしくなかったのだろうと思う。
その言葉は、大きくなるにつれて身にしみて理解していった。

まずはボク。
母にそっくりで美しい外見はとにかく人の目を引く。

好意的な目と、あからさまにチヤホヤと構ってこようとする男の大人達。
しかし、ボクが男だと知ればあからさまに嫌な態度をとってくる様なヤツもいた。
男と知っていても尚近づいてくる者達もいたが、そういう奴らの目的は全部同じ。

『物珍しい観賞用兼楽しく遊べそうなおもちゃ。』
『つれて歩く変わったペット、もしくはアクセサリー。』

この場合、ほとんどの男には恋人や伴侶が既にいて、要は────『完全な遊び感覚で将来使いたい。』『そのために、今から見せかけの優しさで恩を売って唾をつけておこう。』……それが本音のようだった。

『周りの人達は意地悪だね。でも俺だけは違うよ?』
『君の悲しみは全て分かっている!だから頼っていいんだよ。
辛い事があるなら相談して?全部受け止めてひどい人達から君を守ってあげるから。』

真剣な表情でそんなバカみたいな事をいう大人の男達に、気を抜けば吹き出しそうだった。

安全な場所から優しい言葉を掛けるだけなら誰でもできる。
言葉の裏にある本音に気づかず、上辺の言葉だけでその手をとれば地獄が待っているんだ。

そういう奴らは、『孤独』を抱えた人から、偽善の言葉で全てを奪い尽くそうとする最低のクソ野郎共。
母のいう通りだ。人生は相手を見極めなければ地獄が待ってる。
家に届いた美しい花束や高価なプレゼントと共に届く沢山の『成人後は是非第二夫人に~。』というメッセージカードを見下ろし、ボクは完全に人生というモノを悟った。

ボクは誰かにとっての一番には決してなれない存在で、でも側に置いたり連れ歩くには最高の存在なのだそうだ。
そんな所に僕の居場所はなく、存在意義は『立って笑っているだけ』。

それってさ、生きてるって言えるの??
『可愛い』ってなんて軽い存在なんだろう。

この時点で僕の心の中には様々な感情が渦巻き、自分の気持ちがよく分からなくなっていた。

『可愛い』と言われる事は嬉しい。
大好きで尊敬する母とコピーの様にそっくりな外見を褒められると、母が褒められているという事だから。

でも『可愛い』からこんなに嫌で惨めな思いをしなければならない。
『可愛い』のせいで自分の居場所がない。

男の同級生には距離を置かれ、女の同級生からは疎まれ、大人の男の人からは気持ち悪い目で見られ続けている。

でも『可愛い』から皆が僕を見てくれる。
価値があるって思ってくれる。

だから『可愛い』は自分の大事な一部でもあるのだ。

しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...