【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第二十六章

(サイモン)883 強い男

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(サイモン)
◇◇
僕は目の前で、下品な笑いを浮かべるナックルに意識を戻して睨みつけると、フフッと笑う。

猫は場所につくと誰かが言っていたが、その通り。
この幸せの場所を愛し、そこを与えてくれた主人と仲間たちを守るため、壊そうとする奴は全力を持って排除する。

両手に持つタガーをギュッと握りしめると、近くにいるリリアが言った。

「Cクラス冒険者、【氷龍の宝玉】の<ナックル>、資質は《曲剣士》。
剣がメインの戦闘系資質だけど、剣の形を変えたり遠距離攻撃も可能なトリッキータイプの剣士ね。注意して、兄さん。」

「オッケ~☆」

バチンッとウィンクしながら、いつも通りの軽~い調子で返事を返すと、ナックルからはドス黒いオーラが立ち込めており、かなりお怒りの様子が見て取れた。

「……お前ら、あのクソガキの知り合いだったのか?
────俺をコケにしたこと、地獄で後悔しろ。」

ナックルは怒りの形相で自身の手に持つサーベルを上に向かって掲げ、スキルを発現した。


<曲剣士の資質>(ノーマル固有スキル)

< 鷹の爪 >

剣の残像を創り出しそれを一斉に相手にぶつける遠距離型攻撃スキル
その攻撃は鋭く肉をえぐり、まともに喰らえば体はバラバラになってしまう
剣の残像数はスピード、威力は体力と力に依存する
(発現条件) 
一定以上の攻撃力、体力、スピードを持つ事
一定回数以上相手の視界外からの攻撃に成功すること



スキル発動後、ナックルの上空には沢山の剣の残像が浮かび上がり、その全てが僕達に向かって一斉に飛んでくる。

ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ド────ッ!!!!

剣の雨の様な攻撃は地面にも落ちて、そのせいで土煙がその場に発生し視界は一気に悪くなった。

「ハ──ッハッハッツ!!!バカどもが調子に乗るからこうなんだよ!!
ゴミ野郎は黙って俺の機嫌でもとってりゃ~良かったんだよ、ばぁぁぁ~っか!!」

ご機嫌で叫ぶナックル。
しかし、やがて視界がクリアーになった瞬間、ストン……と面白いくらいに表情をなくす。
視界の先には、既に物言わぬ死体になった僕たち────は、いなくてピンピンした状態で立っている僕とリリアの姿が見えたからだ。
僕たちは透明な壁の様なモノで覆われていて、それによりナックルの攻撃は全て完璧に防がれていた。

「────なっ!!ば、ばかな……!何なんだ?その透明な壁は!?
俺の攻撃がこんなあっさり防がれるなんてっ!!そんなっ……あり得ねぇ!!」

「《スライム結晶》────物理系攻撃に耐性がある物質よ。貴方程度の攻撃ならこれで十分防げるわ。」


< スライム結晶 >
まるでスライムの様にうっすら青く、また硬い粘土の様な感触の結晶
物理耐性を持つため、防具などの制作には重宝されているが、非常に珍しい物質であるためレア素材として扱われている。


リリアのスキル<登録図鑑>と<創造構成>は、ストックされた知識を元に物質を創り出す錬金術の原点とも言える凄いスキルだ。
ただし、相当の知力がなければ使えず大抵の者は一生使えずその生を終える者達が多い。
それを瞬時に理解したらしいナックルは、途端に欲望で輝き出した目をリリアに向けて、にやぁぁ~と笑う。

「な、なぁ!そのスキルってもしかしてだけどよぉ~?それ、金や宝石なんかも出せるんじゃねぇのか~?」

「……えぇ、出せるわよ?そんな単純な物質、作ろうと思えばいくらでも。」

リリアはあっさりそう答えると、そのままスッ……と、右手を前に差し出す。
すると、手からは金貨や宝石が溢れんばかりに出現しポロポロと地面に落ちていった。
ナックルは落ちていく金貨や宝石を目で追いながら、非常に興奮して叫ぶ。

「まじかよっ!!!その能力があればいくらでも金が手に入るじゃあねぇか!!大富豪……いや、国だって作れるっ!!
────おいっ!!女!!今からお前は俺のモンだ。
あ~、何だったら正妻にしてやっから、これから俺の言う通りにその能力を使えよ!
嬉しいだろ~?俺が隣でその能力を使って世界一幸せな女にしてやるよ。」

リリアはナックルの言葉を聞いて、コテンッと首を横に倒す。

「?なんでゴミと結婚しなければいけないの?」

心底不思議そうに尋ねるリリアに、ナックルは一瞬ポカン……とした後、顔を真っ赤に染めて怒りの形相へと変わった。

「はぁぁぁっ!!?誰がゴミだぁぁ??!!俺程の男と結婚できるんだぞ!!??
女として強い男のモンになるのは、最高に幸せな人生だろうがっ!!」

「そうね、それも一つの女の幸せだわ。」

リリアが肯定した事でナックルは、ニヤッと笑い気分を良くした様子だったが、続くリリアの言葉に白目をむいて固まる。

「でも貴方、弱いじゃない?それに下品だし、センスも悪いし、器も小さいし、とても気持ち悪いわ。
何一つ魅力を感じないの。
強い男っていうのは……そうね。兄さんやリーフ様の様な人の事を言うんだと思うわ。」

『リーフ様』

その言葉がナックルの怒りのツボを突いたらしく、ドカンッ!!と大噴火するように怒りが爆発してしまった様だ。
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