【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第二十七章

929 ペンギン

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(メル)

「そ、そっか~メルちゃん、そんなに強いのに戦闘職にはつかないのか……。せっかくペンギンなのに勿体ないな。
まぁ、でも人生色々だから、好きな事が見つかるといいね。」

とても残念!と言わんばかりに大きなため息をつくリーフに、首を傾げたのはメルだけではなくレイドもだった。

「??ペンギンなのに勿体ないってどういう事だ?? 」

レイドが不思議そうにそう尋ねると、今度はリーフまで不思議そうに首を傾げる。

「だって獣人って祖になる生物によって特化している能力が違うんでしょ?」

その答えで余計に話は拗れた。

ペンギンは何をやらせてもイマイチ。
『慈愛』に特化し、家庭を守る事に向いている動物……。

「……リーフにとってペンギンってどんな動物……?」

ドキドキしながら尋ねると、リーフは少し考え込んだ後、ビシッ!と空を指す。

「ペンギンは大空を飛ぶ翼を捨てて、海へ挑戦した『勇気ある挑戦者』!
生物は自分の有利になるフィールドでしか戦わないのに、これは凄い事だよ。
戦闘職の中で弓を選ぶ人は少ないというのに、それに敢えて挑戦するメルちゃんはまさしくペンギンの鏡だね。
俺も皆もメルちゃんの弓には沢山助けられているから、それを辞めるとなると俺は凄く複雑なんだ。」

そう言ってがっくり肩を落としてしまったリーフを見て、何か言わなくちゃと思ったが、何も言えなかった。

だって体中が雷に打たれた様にビリビリと痺れて動けなくなってしまったから!

『ペンギンは弱い』
『ペンギンは何をやっても中途半端』
『ペンギンは戦闘に向かない下等種』

それが『常識』で、メルだってそう思っていたのに……。
でも────……。

メルはリーフが指し示していた空をバッ!と見上げて目を輝かせる。

リーフの目から見たらペンギンは『勇気ある挑戦者』なんだ。
心に勇気を灯し、無謀と言われても辞めろと言われても諦めない挑戦者。
その言葉はメルの心の中に強烈に焼き付き、あっという間に同化してしまった。

自分の中に溢れる気持ちに整理がつかず、相変わらず言葉が出ないメルの背中をポスポスとレイドが叩く。

「確かにメルはペンギンの鏡だな!心配しなくてもメルは戦うの辞めないぜ。俺の相棒だからな。
ちょっとしたスランプってやつだから気にしないでくれ。」

「そうだったのかい。それは良かった!」

やほ~い!と素直に喜ぶリーフ。
そんなリーフを見つめながら、フッ……とレイドが真剣な顔になった。
どうしたのか?とその変化に気づいたメルは思ったが、レイドはそのままらしくないほど緊張した様子でリーフに話しかける。

「あ……あのよぉ~。ちょっと聞きてぇんだけど……リーフって強いから大抵の事はできるだろう?
そういう時、それ以上物事を突き詰める時ってどんな事を考えて続けるんだ?
……その……嫌になったりしないか?」

ペラペラと矢継ぎ早に質問するレイドに対し、リーフは気にする素振りもなくあっさりとそれに答えた。

「う~ん……俺、気になっちゃうと次に進めないタイプだからなぁ……嫌とか考えた事ないかも。
だから昔は『アクティブ・ストーカー』って言われていて、気がついたら周りより一歩どころか百歩くらい話題が遅れてるんだよね。
そのせいで『玉手箱男』って言われてた時期もあったな。」

『玉手箱』が何かは分からなかったが、とりあえずリーフにはレイドの様な悩みはないらしい。
その事が分かったレイドはへにょりと耳を伏せると「やっぱりリーフはすげぇな……。」と力なく言った。

「そうかな~?ありがとう。」

そう言った後、リーフが最後のパンの欠片をレオンの口に詰め込むと、レオンがマイペースにモグモグとそのパンを噛む。
それを見つめながら、レイドはおずおずと話を続けた。

「あとさ、俺、家族や故郷の奴らからは『80点男』って言われてるんだ。
なんとなくはできるけど、何をやっても100点は取れない中途半端な男って意味で。
自分でも駄目だって分かってるんだ。でも出来ない……。
他の事に直ぐ興味が移っちまって、一つを突き詰められないんだ。
兄ちゃんや姉ちゃんに相談したら嫌味かよって殴られたし、両親に相談しても『お前の気持ちの問題だ。精神力を鍛えろ、甘えるな』としか言ってくれねぇ。」

ボソボソと告げられるレイドの話をリーフは、頷きながら聞いている。
それを確認したレイドは両手の拳を握り、パッ!とリーフにまるで縋る様な目を向けた。

「こんな事聞かれても困ると思うけどさ、俺、どうやったらメルやお前みたいになれるかな?
俺も100点とりたい。何か一つを極めたい。
手当たり次第に興味があるモノに手を出して、全部中途半端な自分は……駄目だと思うから。」

レイドはそう言い切った後、下へと視線を落とす。
そしてリーフの答えを待ったが、そんなリーフから最初に返ってきたのは、はぁ~……という大きなため息だった。
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