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第二十九章
(レンジュ)966 正しい正義
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(レンジュ)
だ……大神官様……!?
大神官と言えば教会の中ではエリート中のエリート。
ほんの一握りしかなれないと言われている立場だ。
私が両親の手を握ったままポカ~ン……としていると、お兄さんはニンマリと笑った。
「はい。私はこの度こちらに派遣されましたイシュル教会大神官のヨセフです。
近くの街が突然のモンスター被害を受けたと聞き、直ぐに駆けつけたのですよ。」
「そうでしたか……。ご苦労さまです。」
守備隊員はヨセフ大神官にそう言い頭を下げた後、直ぐに両親をまた引っ張っていこうとしたが、それをやはりニッコリ笑顔のヨセフ大神官は止める。
それに対し守備隊員も周りの人達も不思議そうな顔をし、とうとう街の人達が声をあげた。
「ヨセフ様!なぜそんな罪人をかばうのですか?!そいつ等は盗みを働きました。
正義の元に裁くことが『正しい』事ではないですか!」
その人の言葉に周りの人達も「そーだそーだ!」と騒ぎ立て、私達をまるで憎き敵の様に睨みつける。
それが怖くて怖くて目をギュッ!と瞑ったが、反対にヨセフ様は突然吹き出し、そのままクスクスと笑いだしてしまった。
私も両親も周りの人達もそれにはギョッ!として口を閉ざしたが、ヨセフ司教は何でもないかの様に話し始める。
「『正義』……ですか。─────ふむ。確かに人のモノを盗む事、それは悪い事ですよね?それはこの国の誰もが認める犯罪で、それを裁く事は『正義』だ。」
「そ……その通りです!ですので、早くあの罪人たちを裁くべきです!
それが『正しい正義』なのですから!」
「そうですよ!!全く……!この犯罪者っ!!街に置いてやっているだけ有り難いと思えよ!」
そうだそうだ!!と周りからいくつも上がる声。
両親達は更に私の手を握る力を強めた。
私もこみ上げる涙が堪えきれずにポロポロと涙を流しながら下を向くと、ヨセフ大神官様は、フゥ……と呆れる様なため息をついた。
「やれやれ……。『正しい正義』……ねぇ?
どうやらその『正しい正義』は、今見えているはずのモノ全てを奪ってしまう怖いモノの様だ。
私にとってそれは世界で一番恐ろしいモノに見えますよ。」
「─────はっ???」
声高らかに叫んでいた人達は何を言われているのか分からずキョトンとしてしまったが、そのやり取りを見ていた一人の小さな子供が、自身の父親のズボンをくぃくぃと引っ張る。
「ねぇ、ねぇ、お父さん。あの人達凄く泣いてるよ……。何でそんなに虐めるの……?
僕、怖いよ……。」
一人の子供がそう言うと、他の子供たちもグスグスと泣き出し、嗚咽混じりに自分の気持ちを口にする。
「あの人達服もボロボロだし、沢山怪我もしているよ。前からお腹も空いてて、パンを下さいって苦しそうに言ってた。」
「私のおやつのパンをあげるから……お願い……許してあげてよ……。」
子供たちの声に大きく歪んだ顔で『正義』を叫んでいた人達の顔は、次々と青ざめ元に戻っていく。
そして下を向き黙ってしまった人達の顔を、ヨセフ大神官はゆっくりと見回した。
「柔軟性をうしなった『正義』はいつか必ず『悪』に変わります。
勿論ご自身の生活全てを犠牲にしろとは言いません。それも『悪』ですから。
しかし、私はこんなにも苦しむ人達に『正義』を振りかざす姿が正しいモノには見えない。
何故誰も教会に知らせるなどの然るべき対応をしなかったのですか?」
「そ……それは……。」
言い淀む大人達へ、ヨセフ大神官はトドメを差すように言い放った。
「ご自身の『喜び』のため、ですよね?
『優越感』はご自身の境遇の不満を和らげてくれる最高のモノですから。」
ニコッと微笑む大神官に……もう誰も何も言い返せなかった。
守備隊員は青ざめながら両親から手を離し、私達は泣きながら抱き合ってお互いの無事を喜んだ。
ヨセフ大神官に何度も「ありがとう、ありがとう。」とお礼を言い、パンを盗んでしまった人に対しては「ごめんなさい。」と泣きながら謝る。
そんな私達を見てヨセフ大神官はフフッ!と笑った。
「現在第二騎士団と聖兵士団によって、元の街を襲ったモンスター達の討伐が開始されました。
それが終わるまでは教会があなた達の身を預かります。他の避難できた方々もいますのでご安心を。」
「────!!他の生き残りの人達も……!!」
両親はワッ!と泣き出し、私もそれに続いて泣きだすと、周りの人達はすっかりうなだれてしまい、子供達に続き泣き出す人達まで。
それをやれやれとため息をつきながら見たヨセフ大神官は、両親が盗んでしまったパン一つ分のお金をそのパン屋のおじさんの手に握らせると、そのまま私達を連れて教会へ連れて行ってくれた。
だ……大神官様……!?
大神官と言えば教会の中ではエリート中のエリート。
ほんの一握りしかなれないと言われている立場だ。
私が両親の手を握ったままポカ~ン……としていると、お兄さんはニンマリと笑った。
「はい。私はこの度こちらに派遣されましたイシュル教会大神官のヨセフです。
近くの街が突然のモンスター被害を受けたと聞き、直ぐに駆けつけたのですよ。」
「そうでしたか……。ご苦労さまです。」
守備隊員はヨセフ大神官にそう言い頭を下げた後、直ぐに両親をまた引っ張っていこうとしたが、それをやはりニッコリ笑顔のヨセフ大神官は止める。
それに対し守備隊員も周りの人達も不思議そうな顔をし、とうとう街の人達が声をあげた。
「ヨセフ様!なぜそんな罪人をかばうのですか?!そいつ等は盗みを働きました。
正義の元に裁くことが『正しい』事ではないですか!」
その人の言葉に周りの人達も「そーだそーだ!」と騒ぎ立て、私達をまるで憎き敵の様に睨みつける。
それが怖くて怖くて目をギュッ!と瞑ったが、反対にヨセフ様は突然吹き出し、そのままクスクスと笑いだしてしまった。
私も両親も周りの人達もそれにはギョッ!として口を閉ざしたが、ヨセフ司教は何でもないかの様に話し始める。
「『正義』……ですか。─────ふむ。確かに人のモノを盗む事、それは悪い事ですよね?それはこの国の誰もが認める犯罪で、それを裁く事は『正義』だ。」
「そ……その通りです!ですので、早くあの罪人たちを裁くべきです!
それが『正しい正義』なのですから!」
「そうですよ!!全く……!この犯罪者っ!!街に置いてやっているだけ有り難いと思えよ!」
そうだそうだ!!と周りからいくつも上がる声。
両親達は更に私の手を握る力を強めた。
私もこみ上げる涙が堪えきれずにポロポロと涙を流しながら下を向くと、ヨセフ大神官様は、フゥ……と呆れる様なため息をついた。
「やれやれ……。『正しい正義』……ねぇ?
どうやらその『正しい正義』は、今見えているはずのモノ全てを奪ってしまう怖いモノの様だ。
私にとってそれは世界で一番恐ろしいモノに見えますよ。」
「─────はっ???」
声高らかに叫んでいた人達は何を言われているのか分からずキョトンとしてしまったが、そのやり取りを見ていた一人の小さな子供が、自身の父親のズボンをくぃくぃと引っ張る。
「ねぇ、ねぇ、お父さん。あの人達凄く泣いてるよ……。何でそんなに虐めるの……?
僕、怖いよ……。」
一人の子供がそう言うと、他の子供たちもグスグスと泣き出し、嗚咽混じりに自分の気持ちを口にする。
「あの人達服もボロボロだし、沢山怪我もしているよ。前からお腹も空いてて、パンを下さいって苦しそうに言ってた。」
「私のおやつのパンをあげるから……お願い……許してあげてよ……。」
子供たちの声に大きく歪んだ顔で『正義』を叫んでいた人達の顔は、次々と青ざめ元に戻っていく。
そして下を向き黙ってしまった人達の顔を、ヨセフ大神官はゆっくりと見回した。
「柔軟性をうしなった『正義』はいつか必ず『悪』に変わります。
勿論ご自身の生活全てを犠牲にしろとは言いません。それも『悪』ですから。
しかし、私はこんなにも苦しむ人達に『正義』を振りかざす姿が正しいモノには見えない。
何故誰も教会に知らせるなどの然るべき対応をしなかったのですか?」
「そ……それは……。」
言い淀む大人達へ、ヨセフ大神官はトドメを差すように言い放った。
「ご自身の『喜び』のため、ですよね?
『優越感』はご自身の境遇の不満を和らげてくれる最高のモノですから。」
ニコッと微笑む大神官に……もう誰も何も言い返せなかった。
守備隊員は青ざめながら両親から手を離し、私達は泣きながら抱き合ってお互いの無事を喜んだ。
ヨセフ大神官に何度も「ありがとう、ありがとう。」とお礼を言い、パンを盗んでしまった人に対しては「ごめんなさい。」と泣きながら謝る。
そんな私達を見てヨセフ大神官はフフッ!と笑った。
「現在第二騎士団と聖兵士団によって、元の街を襲ったモンスター達の討伐が開始されました。
それが終わるまでは教会があなた達の身を預かります。他の避難できた方々もいますのでご安心を。」
「────!!他の生き残りの人達も……!!」
両親はワッ!と泣き出し、私もそれに続いて泣きだすと、周りの人達はすっかりうなだれてしまい、子供達に続き泣き出す人達まで。
それをやれやれとため息をつきながら見たヨセフ大神官は、両親が盗んでしまったパン一つ分のお金をそのパン屋のおじさんの手に握らせると、そのまま私達を連れて教会へ連れて行ってくれた。
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