988 / 1,649
第二十九章
(レンジュ)972 成長するモノ
しおりを挟む
(レンジュ)
その場にふんわり香る小麦の香りは、緊迫したこの場にとってちょっとした癒やしになった様で皆の表情が僅かに和らぐ。
その女性は【森の恵み】という食堂を経営している店主マリン。
何と待機所にある調理器具と食材を使って、飲食店の者達総出でちょっとした軽食や飲み物を作っているそうだ。
その行動力に驚かされながら、とりあえずお礼を告げてそれをヒョイッと口に入れると次の瞬間────。
パァァァァ────!!
身体が一瞬光り、その後はフワッと疲れが瞬く間に消えてしまった。
「な……何だ??これは……?」
驚きながら周りを見れば、他の人達の身体も同様に一瞬輝き、その後は「あ……あれ??」「身体が楽に……??」と驚きの声をあげている。
するとマリンは自慢気に胸を張り、私達に向かってニヤッと笑った。
「どうだい?何か面白い変化、あっただろう?」
<調食師の資質>(ユニーク固有スキル)
< トッピングの魔法使い >
自らが手を掛けた料理に様々なバフを付加する事ができる特殊系強化スキル
ステータスUPの他、各種耐性、特殊効果、更にスタミナ回復もその対象。
ただしバフの効果は自身の感情と感情の強さ、想いに左右されるため、負の感情を持てばデバフに変わってしまうため注意が必要
(発現条件)
一定以上の調理経験、喜び、発想力、応用力、基礎力を持つこと
一定種類以上の料理を完成させること
『ランクS』以上の食材を食べた事がある事
※摂取済み食材<ダイヤ・エデンフィッシュ>
「こんな強力なバフ付きの料理など……。とんでもない能力ですよ!これ……。」
マリンのバフ付きの小麦ボールを食べたヨセフ司教は目を見開いて驚いたが、マリンは何でもないかの様にハッハッ!と笑って言った。
「それがねぇ、少し前に新しいスキルが発現したようなんだ。
まさかこの歳で新しいスキルなんざ驚いちまったが、なんと言ってもウチは『救世主様』御用達の食堂だからね。
どうやらとんでもないご加護を貰ったみたいだ。」
「そ……そんな……バカな……。」
スキルはそんな簡単に発現するものではなく、殆どスキルが発言しないまま一生を終える奴らだっている。
それを知っている私や神官達、ヨセフ司教はポカン……としてしまったが、マリンは怪我が直って戻ろうとしている兵士を捕まえては口にドスッ!ドスッ!と小麦ボールを突っ込んで戦場に帰し、そのままあっけらかんとした様子で空っぽになった皿を脇に抱えた。
「戦う力なんざ一つも持ってないが、私も私なりに戦いに参加するさ。
『救世主様』と一緒にね。」
マリンはそう言い残し、また自身の戦場である調理場の方へと戻っていった。
軽くなった身体を感じながら、私は拳を握り弱気になっていた自分を叱咤する。
そして周りを改めて見て『一体これは何だ……?』と少しだけ恐怖を抱いた。
あれよあれよと誰も彼もが動き出す。誰に引っ張られるわけもなく自らの足で。
こんなの……まるで…………。
「『奇跡』……かもしれませんね。今の状況を敢えて一言で表現するなら。
しかもそれは止まる事なくどんどん成長している。
────『成長する奇跡』か……。
もしかして我々は物凄い瞬間に立ち会おうとしているのかもしれませんね。」
ヨセフ司教が正面の門を見つめながら、フフッと嬉しそうに笑ったが────直ぐに険しい顔で空を睨みつける。
「……しかし『悪』もまた成長し続ける非常に強大なパワーだ。
悪意は人に急激な変化をもたらし、小さな奇跡など簡単に飲み込んでしまう。
それに勝つには生半可な奇跡では駄目なのですよ。────このまま……届くか……?」
見つめる先の空は真っ黒で、更にバチバチ!!という黒い雷の様なモノがそこら中を走り周っている。
光り全てを覆い尽くす黒が、まるでその『悪』そのものの様な気がしてゾッと背筋を凍らせていると、空を飛び回る伝電鳥が各門での戦闘状況を伝えてきた。
それを聞く限り、今のところはどこも問題なく守れている様子。
それにホッと胸を撫で下ろし、戦場で戦う者達にエールを送っていると、突然街の方角から────。
ボンッ!!!
ボンッ!!!!
ドドドドド────ンッ!!!
大きな爆発音が連続して聞こえ、大地が僅かに揺れる。
「なっ、なんの音だっ!!!」
驚いて声を上げるのと同時に、今度はさほど遠くない場所で多種多様のモンスターの鳴き声が聞こえ始めた。
────!!街の中でっ!!??
あり得ない妄想だと思いたかったが、周りの者達も同様の事を思ったらしく一気にその場は緊迫する。
「な、なぜモンスターの鳴き声がっ??!どこの門も壊されていないというのにっ!」
空を見上げ、伝電鳥を睨みつけたが、やはりどの門も壊されたという情報は伝えていない。
ヨセフ司教も同様に伝電鳥を見上げ、一瞬考える仕草をみせたが、直ぐにハッ!!とした様子で呟いた。
その場にふんわり香る小麦の香りは、緊迫したこの場にとってちょっとした癒やしになった様で皆の表情が僅かに和らぐ。
その女性は【森の恵み】という食堂を経営している店主マリン。
何と待機所にある調理器具と食材を使って、飲食店の者達総出でちょっとした軽食や飲み物を作っているそうだ。
その行動力に驚かされながら、とりあえずお礼を告げてそれをヒョイッと口に入れると次の瞬間────。
パァァァァ────!!
身体が一瞬光り、その後はフワッと疲れが瞬く間に消えてしまった。
「な……何だ??これは……?」
驚きながら周りを見れば、他の人達の身体も同様に一瞬輝き、その後は「あ……あれ??」「身体が楽に……??」と驚きの声をあげている。
するとマリンは自慢気に胸を張り、私達に向かってニヤッと笑った。
「どうだい?何か面白い変化、あっただろう?」
<調食師の資質>(ユニーク固有スキル)
< トッピングの魔法使い >
自らが手を掛けた料理に様々なバフを付加する事ができる特殊系強化スキル
ステータスUPの他、各種耐性、特殊効果、更にスタミナ回復もその対象。
ただしバフの効果は自身の感情と感情の強さ、想いに左右されるため、負の感情を持てばデバフに変わってしまうため注意が必要
(発現条件)
一定以上の調理経験、喜び、発想力、応用力、基礎力を持つこと
一定種類以上の料理を完成させること
『ランクS』以上の食材を食べた事がある事
※摂取済み食材<ダイヤ・エデンフィッシュ>
「こんな強力なバフ付きの料理など……。とんでもない能力ですよ!これ……。」
マリンのバフ付きの小麦ボールを食べたヨセフ司教は目を見開いて驚いたが、マリンは何でもないかの様にハッハッ!と笑って言った。
「それがねぇ、少し前に新しいスキルが発現したようなんだ。
まさかこの歳で新しいスキルなんざ驚いちまったが、なんと言ってもウチは『救世主様』御用達の食堂だからね。
どうやらとんでもないご加護を貰ったみたいだ。」
「そ……そんな……バカな……。」
スキルはそんな簡単に発現するものではなく、殆どスキルが発言しないまま一生を終える奴らだっている。
それを知っている私や神官達、ヨセフ司教はポカン……としてしまったが、マリンは怪我が直って戻ろうとしている兵士を捕まえては口にドスッ!ドスッ!と小麦ボールを突っ込んで戦場に帰し、そのままあっけらかんとした様子で空っぽになった皿を脇に抱えた。
「戦う力なんざ一つも持ってないが、私も私なりに戦いに参加するさ。
『救世主様』と一緒にね。」
マリンはそう言い残し、また自身の戦場である調理場の方へと戻っていった。
軽くなった身体を感じながら、私は拳を握り弱気になっていた自分を叱咤する。
そして周りを改めて見て『一体これは何だ……?』と少しだけ恐怖を抱いた。
あれよあれよと誰も彼もが動き出す。誰に引っ張られるわけもなく自らの足で。
こんなの……まるで…………。
「『奇跡』……かもしれませんね。今の状況を敢えて一言で表現するなら。
しかもそれは止まる事なくどんどん成長している。
────『成長する奇跡』か……。
もしかして我々は物凄い瞬間に立ち会おうとしているのかもしれませんね。」
ヨセフ司教が正面の門を見つめながら、フフッと嬉しそうに笑ったが────直ぐに険しい顔で空を睨みつける。
「……しかし『悪』もまた成長し続ける非常に強大なパワーだ。
悪意は人に急激な変化をもたらし、小さな奇跡など簡単に飲み込んでしまう。
それに勝つには生半可な奇跡では駄目なのですよ。────このまま……届くか……?」
見つめる先の空は真っ黒で、更にバチバチ!!という黒い雷の様なモノがそこら中を走り周っている。
光り全てを覆い尽くす黒が、まるでその『悪』そのものの様な気がしてゾッと背筋を凍らせていると、空を飛び回る伝電鳥が各門での戦闘状況を伝えてきた。
それを聞く限り、今のところはどこも問題なく守れている様子。
それにホッと胸を撫で下ろし、戦場で戦う者達にエールを送っていると、突然街の方角から────。
ボンッ!!!
ボンッ!!!!
ドドドドド────ンッ!!!
大きな爆発音が連続して聞こえ、大地が僅かに揺れる。
「なっ、なんの音だっ!!!」
驚いて声を上げるのと同時に、今度はさほど遠くない場所で多種多様のモンスターの鳴き声が聞こえ始めた。
────!!街の中でっ!!??
あり得ない妄想だと思いたかったが、周りの者達も同様の事を思ったらしく一気にその場は緊迫する。
「な、なぜモンスターの鳴き声がっ??!どこの門も壊されていないというのにっ!」
空を見上げ、伝電鳥を睨みつけたが、やはりどの門も壊されたという情報は伝えていない。
ヨセフ司教も同様に伝電鳥を見上げ、一瞬考える仕草をみせたが、直ぐにハッ!!とした様子で呟いた。
254
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います
緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。
知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。
花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。
十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。
寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。
見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。
宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。
いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます
日色
BL
「ぼく、あくやくれいそくだ」弟の誕生と同時に前世を思い出した七海は、悪役令息キルナ=フェルライトに転生していた。闇と水という典型的な悪役属性な上、肝心の魔力はほぼゼロに近い。雑魚キャラで死亡フラグ立ちまくりの中、なぜか第一王子に溺愛され!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる