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第三十章
(レイナ)1006 排虫箱
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(レイナ)
『呪いたい程憎んでいる過去がまだ生きている。』
それがトマスの出現により判明したため、それから直ぐにトマスの事、街の生き残り達の事について情報を集めた。
その結果、確かに全滅した街の跡地に小さな村レベルの集落ができていて、少しづつ生活基盤が整ってきていることを知る。
「トマスの言う通り、大きくなった妹と弟も生きてる……。
クソッ!面倒くさいスキル使いやがってっ!」
更に詳しく調べると、かつて見送った生き残りの友人達も全員いて、以前と変わる事なく畑を耕し酪農を行ったりと、吐き気がするくらいの慎ましい生活を送っている様だった。
私は自室でその調査結果を見ながら、イライラと足を揺する。
不幸を不幸と気づかない閉鎖的な環境に、その象徴とも呼べる汚らしい元婚約者と弟妹達、それに元友人たち。
それらがこの世界に存在している事が嫌で嫌で仕方がない。
この完璧で美しい世界にそれがある限り、過去の大嫌いな自分は何処までも何処までも追いかけてくるのを感じて身震いをした。
「……どうする?どうすれば……。」
ガリガリと爪を噛みながら思考を巡らせていると────不意に<排虫箱>の存在が目に入る。
<排虫箱>
ハエ類などの害虫や害虫モンスターなどを小さな光で呼び寄せ排除する箱型魔道具
小さく穴が空いているガラスの箱の中は淡い光が点灯しており、そこに向かってブンブンと小さな虫たちが飛んで入っていっては一瞬で燃えていく。
炭となってしまった虫を見て、私はフフッと笑い、その直後大声を立てて笑った。
そうかぁ~~。邪魔な虫は消してしまえばいいだけじゃない♡
大笑いしながら、そんな簡単な事に今まで気づかなかった自分に更に愉快がこみ上げ、そのまま腹を抱えて笑い続ける。
過去は害虫と同じ。
いらないモノなんだから消すのが正解でしょ?
しばらく笑い続け、その後やっと落ち着いてきた私は目尻に溜まった涙を拭った。
この美しい世界を汚す害虫の駆除は、最大の慈善事業だ。
この私が一肌脱いでその慈善事業をしてあげようじゃないか。
そうしてクスクスと静かに笑いながら、私は慎重に策を練った。
少ないとはいえ、それなりの人数を一気に手を掛けたらあの忌々しいエルビスとカルパスにバレてしまう可能性が高い。
勿論出し抜く事もこの私なら可能だが、ハイリスクな事は避けたい。
ましてやあの街の連中との関係性を露見させたくなかったため、私は少し時間を掛ける事にした。
しかしトマスの始末だけは、早急に行わなければならない。
まずはそれを終わらせてしまおう。
トマスはあれだけ私にハッキリ言われたにも関わらず、まだ王都の端の方にある下層住区に留まり、私と接触を持とうとしていた。
無駄なのに本当に気持ち悪い。
でもそれが逆に助かった。
トマスが街に戻れば、私が生きていたという情報が広がってしまい、その結果、どこでその情報が流れてしまうか分からないためだ。
情報は一つの繋がりを見つければ、それから芋づる式に証拠を見つけられる事があるため油断はできない。
今なら下層住区に住んでいる汚らしいゴミ男一人くらい消してもバレる事はないだろう。
私は真っ赤な口紅で飾られた唇を大きく上に上げた。
田舎町から夢を見て王都へやってきた若者。
それがモンスターに襲われ命を落としてしまう。
ありがちなストーリーを頭に描きながら、さっそく下層住区で野宿していたトマスに連絡をとる。
するとトマスは疑う事など微塵もなく、ホイホイと王都近くにある大きな大樹海【ポルクの森】へとやってきた。
その顔は期待に満ちていて、私が黙っているのを良いことにトマスはペラペラと私との思い出を語る。
初めて出会った時、私は恥ずかしがって母の後ろから出てこず、慣れるまで時間が掛かった事。
毎日毎日朝早く畑に行って、自分たちで植えた苗の様子を見ては喜んだり、悲しんだりした事。
将来はお嫁さんになって理想の結婚式を挙げてみたいと言って、よく花冠を作っていた事。
トマスはその思い出の一つ一つを大事な宝物の様に語り、最後は不安げな瞳を私に向けてきたため、私はそれを見てニコリと笑う。
するとトマスは嬉しそうに微笑み、昨日同様もう一度私に手を差し出して言った。
「さぁ、帰ろう。レイナ。」
私は笑顔を浮かべたまま、そんなトマスに近づき────────そのまま背後にある崖に突き飛ばす。
するとトマスは驚愕の表情を浮かべながらゆっくりと先の見えない崖下へと落ちていき、その姿が見えなくなった頃、私は大声をあげて笑った。
心にあったのは、はじめて自分の手で人の命を奪ってしまった恐怖でも、元は愛していた人への罪悪感などではなく、いらないものをやっと捨てる事が出来たという達成感と爽快感だけ。
これで一番面倒なモノは消えた。
後は妹達や旧友達だが────流石に立て続けに動けばバレてしまう可能性もあるため、時間を置いて動こう。
そう考えて、その後は何食わぬ顔で帰宅し、当分は大人しく諜報ギルドの依頼をこなした。
────といっても、貴族達とのコネクション作りに忙しかった私は、舞い込んでくる依頼のほとんどを厳選して選んでいたため、殆どが偽善大好き野郎のカルパスがこなしていたが……。
『呪いたい程憎んでいる過去がまだ生きている。』
それがトマスの出現により判明したため、それから直ぐにトマスの事、街の生き残り達の事について情報を集めた。
その結果、確かに全滅した街の跡地に小さな村レベルの集落ができていて、少しづつ生活基盤が整ってきていることを知る。
「トマスの言う通り、大きくなった妹と弟も生きてる……。
クソッ!面倒くさいスキル使いやがってっ!」
更に詳しく調べると、かつて見送った生き残りの友人達も全員いて、以前と変わる事なく畑を耕し酪農を行ったりと、吐き気がするくらいの慎ましい生活を送っている様だった。
私は自室でその調査結果を見ながら、イライラと足を揺する。
不幸を不幸と気づかない閉鎖的な環境に、その象徴とも呼べる汚らしい元婚約者と弟妹達、それに元友人たち。
それらがこの世界に存在している事が嫌で嫌で仕方がない。
この完璧で美しい世界にそれがある限り、過去の大嫌いな自分は何処までも何処までも追いかけてくるのを感じて身震いをした。
「……どうする?どうすれば……。」
ガリガリと爪を噛みながら思考を巡らせていると────不意に<排虫箱>の存在が目に入る。
<排虫箱>
ハエ類などの害虫や害虫モンスターなどを小さな光で呼び寄せ排除する箱型魔道具
小さく穴が空いているガラスの箱の中は淡い光が点灯しており、そこに向かってブンブンと小さな虫たちが飛んで入っていっては一瞬で燃えていく。
炭となってしまった虫を見て、私はフフッと笑い、その直後大声を立てて笑った。
そうかぁ~~。邪魔な虫は消してしまえばいいだけじゃない♡
大笑いしながら、そんな簡単な事に今まで気づかなかった自分に更に愉快がこみ上げ、そのまま腹を抱えて笑い続ける。
過去は害虫と同じ。
いらないモノなんだから消すのが正解でしょ?
しばらく笑い続け、その後やっと落ち着いてきた私は目尻に溜まった涙を拭った。
この美しい世界を汚す害虫の駆除は、最大の慈善事業だ。
この私が一肌脱いでその慈善事業をしてあげようじゃないか。
そうしてクスクスと静かに笑いながら、私は慎重に策を練った。
少ないとはいえ、それなりの人数を一気に手を掛けたらあの忌々しいエルビスとカルパスにバレてしまう可能性が高い。
勿論出し抜く事もこの私なら可能だが、ハイリスクな事は避けたい。
ましてやあの街の連中との関係性を露見させたくなかったため、私は少し時間を掛ける事にした。
しかしトマスの始末だけは、早急に行わなければならない。
まずはそれを終わらせてしまおう。
トマスはあれだけ私にハッキリ言われたにも関わらず、まだ王都の端の方にある下層住区に留まり、私と接触を持とうとしていた。
無駄なのに本当に気持ち悪い。
でもそれが逆に助かった。
トマスが街に戻れば、私が生きていたという情報が広がってしまい、その結果、どこでその情報が流れてしまうか分からないためだ。
情報は一つの繋がりを見つければ、それから芋づる式に証拠を見つけられる事があるため油断はできない。
今なら下層住区に住んでいる汚らしいゴミ男一人くらい消してもバレる事はないだろう。
私は真っ赤な口紅で飾られた唇を大きく上に上げた。
田舎町から夢を見て王都へやってきた若者。
それがモンスターに襲われ命を落としてしまう。
ありがちなストーリーを頭に描きながら、さっそく下層住区で野宿していたトマスに連絡をとる。
するとトマスは疑う事など微塵もなく、ホイホイと王都近くにある大きな大樹海【ポルクの森】へとやってきた。
その顔は期待に満ちていて、私が黙っているのを良いことにトマスはペラペラと私との思い出を語る。
初めて出会った時、私は恥ずかしがって母の後ろから出てこず、慣れるまで時間が掛かった事。
毎日毎日朝早く畑に行って、自分たちで植えた苗の様子を見ては喜んだり、悲しんだりした事。
将来はお嫁さんになって理想の結婚式を挙げてみたいと言って、よく花冠を作っていた事。
トマスはその思い出の一つ一つを大事な宝物の様に語り、最後は不安げな瞳を私に向けてきたため、私はそれを見てニコリと笑う。
するとトマスは嬉しそうに微笑み、昨日同様もう一度私に手を差し出して言った。
「さぁ、帰ろう。レイナ。」
私は笑顔を浮かべたまま、そんなトマスに近づき────────そのまま背後にある崖に突き飛ばす。
するとトマスは驚愕の表情を浮かべながらゆっくりと先の見えない崖下へと落ちていき、その姿が見えなくなった頃、私は大声をあげて笑った。
心にあったのは、はじめて自分の手で人の命を奪ってしまった恐怖でも、元は愛していた人への罪悪感などではなく、いらないものをやっと捨てる事が出来たという達成感と爽快感だけ。
これで一番面倒なモノは消えた。
後は妹達や旧友達だが────流石に立て続けに動けばバレてしまう可能性もあるため、時間を置いて動こう。
そう考えて、その後は何食わぬ顔で帰宅し、当分は大人しく諜報ギルドの依頼をこなした。
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