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第三十章
(レイナ)1008 真の目的
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(レイナ)
────ガラガラ………。
私の輝かしい世界にヒビが入り崩れ落ちると、頭を思い切り殴りつけた様な激しい衝撃が体を襲う。
『私ではなくカルパスが選ばれた。』
その事実は受け入れがたいモノであり、私はその場に呆然と立ち尽くしてしまったが、当の選ばれたカルパスといえば、いつも通りのすまし顔を崩さず感情らしい感情を読み取る事ができない。
それが余計に腹立たしかった。
カルパスは一瞬エルビスに視線を投げたが、直ぐにニコッと薄ら寒い爽やかな笑みを浮かべ、カール様達に頭を下げる。
「有り難くお受けいたします。」
その一言で、カルパスはその瞬間、上流層のトップへと登り詰めたのだった。
それからパーティーは続いたが、勿論その日の主役はカルパス。
特に低い地位の貴族達などは目の色を変えてカルパスにゴマをすり始め、口々に称賛の声を上げた。
『わたくしは恐らくカルパス様が選ばれると知っておりました。諜報ギルドでの働きぶりは本当に素晴らしいの一言です。』
『諜報ギルドでカルパス様の右に出る者はおりませんね。』
先程まで自分に向かって吐かれていた言葉がそのままカルパスへ。
そしてそんなお世辞も、カルパスはサラッと流して余裕そうな笑みを見せる。
それが憎くて憎くて堪らず、とてもではないがこんな場所にいられるかと、私は荒々しくその場を去った。
『クソっ…クソっ…クソっ!!!』
荒れ狂う感情のままドスドスと足音を立てて歩いていくと、辿りついた場所は、今の私の心の中とは正反対と言える、それはそれは美しい庭園であった。
「……綺麗。」
マリナ様ご自慢の庭園には真っ赤な美しいバラが咲き乱れ、私の怒り、憎しみをいくらかマシにしてくれる。
完全なる『美』と上品さを兼ね備えたバラ達。
その中に他の地味でみすぼらしい花はなく、だからこそここは完璧な美しさを保っていられるのだ。
この庭園こそが私の望む世界なのに……。
美しい世界に紛れ込んだみすぼらしい花の様なカルパスを思い出し、ギリギリと唇を強く噛み締めていた、その時────……。
「あら、駄目じゃない。せっかくの美しい唇が傷ついてしまうわ。」
優しげで耳にスッと入ってくる透明感のある女性の声。
まさか────!!
私は直ぐに声がした背後を振り返ると、そこには壮絶なる美しさを持ったマリナ様が微笑んでいた。
「こっ、これはこれはマリナ様!気づかず失礼いたしました。」
背後にいた事に気づかなかった事を慌てて謝罪すると、マリナ様はイタズラが成功した少女の様にコロコロと笑う。
「フフッ。せっかくのパーティーなのに、とても可愛らしいお嬢さんが抜け出すのを見てしまったから、つい追いかけてしまったの。久しぶりね、レイナ。」
マリナ様は非常にフレンドリーに話し掛けながら、私の隣までゆっくりと近づいてきた。
ドキドキしながら、私は必死に言い訳する。
「大変失礼いたしました。人酔いをした様で、少しだけあの場を離れたかったのです。マリナ様のご気分を害してしまうつもりは……。」
「あら?私は気分を害してなどいないわよ?
少し貴方とお話がしたかったから、寧ろちょうど良かったわ。
よかったら私のお気に入りの場所に連れて行ってあげる。着いてきて。」
マリナ様は、バラに負けないくらい真っ赤でみずみずしい唇に人差し指をつけると、内緒だよと言わんばかりにシーッと囁いた。
そしてそのまま歩き出すマリナ様の後ろについていくと、そこは白いベンチと真っ赤なバラでできたアーチ型の大きな屋根がある場所で、その見事な出来に私は思わず息を吐く。
「素敵……。」
「気に入ってくれて嬉しいわ。さぁ座りましょう。」
マリナ様は白いベンチに座り、隣をトントンと叩くので、私は緊張しながらもその隣に座った。
「美しいでしょう?私は赤いバラが一番好きだわ。
誰もが認める美しさの象徴……美しさって何よりも価値があるモノだと思うのよ。
美しくないモノに価値はない、私もカールもそう思っているわ。」
マリナ様は近くに咲いていたバラを一輪の手に取り、それを私の髪にソッ……つけると嬉しそうに笑う。
「だからこの子が生まれる前にレガーノに居を移すことにしたの。
生まれてくる可愛い我が子には美しいモノだけ見てほしいから。」
レガ―ノは王都から遠く離れた田舎町だが、バラの品種改良に成功し様々な貴族御用達の花を製造していた男爵家が住んでいたはず。
その事を思い出し、『なるほど』と納得した私はその事を賛辞した。
「レガ―ノは自然豊かで治安も良いとお聞きしております。そこならば、心穏やかに出産の日まで過ごせるでしょう。」
「えぇ、そう思うわ。────でもね?実は、それだけが目的ではないの。」
マリナ様は手に持っていた扇子を広げ口元を隠す。
そして自信の顔を私の方へグッと近づけた。
────ガラガラ………。
私の輝かしい世界にヒビが入り崩れ落ちると、頭を思い切り殴りつけた様な激しい衝撃が体を襲う。
『私ではなくカルパスが選ばれた。』
その事実は受け入れがたいモノであり、私はその場に呆然と立ち尽くしてしまったが、当の選ばれたカルパスといえば、いつも通りのすまし顔を崩さず感情らしい感情を読み取る事ができない。
それが余計に腹立たしかった。
カルパスは一瞬エルビスに視線を投げたが、直ぐにニコッと薄ら寒い爽やかな笑みを浮かべ、カール様達に頭を下げる。
「有り難くお受けいたします。」
その一言で、カルパスはその瞬間、上流層のトップへと登り詰めたのだった。
それからパーティーは続いたが、勿論その日の主役はカルパス。
特に低い地位の貴族達などは目の色を変えてカルパスにゴマをすり始め、口々に称賛の声を上げた。
『わたくしは恐らくカルパス様が選ばれると知っておりました。諜報ギルドでの働きぶりは本当に素晴らしいの一言です。』
『諜報ギルドでカルパス様の右に出る者はおりませんね。』
先程まで自分に向かって吐かれていた言葉がそのままカルパスへ。
そしてそんなお世辞も、カルパスはサラッと流して余裕そうな笑みを見せる。
それが憎くて憎くて堪らず、とてもではないがこんな場所にいられるかと、私は荒々しくその場を去った。
『クソっ…クソっ…クソっ!!!』
荒れ狂う感情のままドスドスと足音を立てて歩いていくと、辿りついた場所は、今の私の心の中とは正反対と言える、それはそれは美しい庭園であった。
「……綺麗。」
マリナ様ご自慢の庭園には真っ赤な美しいバラが咲き乱れ、私の怒り、憎しみをいくらかマシにしてくれる。
完全なる『美』と上品さを兼ね備えたバラ達。
その中に他の地味でみすぼらしい花はなく、だからこそここは完璧な美しさを保っていられるのだ。
この庭園こそが私の望む世界なのに……。
美しい世界に紛れ込んだみすぼらしい花の様なカルパスを思い出し、ギリギリと唇を強く噛み締めていた、その時────……。
「あら、駄目じゃない。せっかくの美しい唇が傷ついてしまうわ。」
優しげで耳にスッと入ってくる透明感のある女性の声。
まさか────!!
私は直ぐに声がした背後を振り返ると、そこには壮絶なる美しさを持ったマリナ様が微笑んでいた。
「こっ、これはこれはマリナ様!気づかず失礼いたしました。」
背後にいた事に気づかなかった事を慌てて謝罪すると、マリナ様はイタズラが成功した少女の様にコロコロと笑う。
「フフッ。せっかくのパーティーなのに、とても可愛らしいお嬢さんが抜け出すのを見てしまったから、つい追いかけてしまったの。久しぶりね、レイナ。」
マリナ様は非常にフレンドリーに話し掛けながら、私の隣までゆっくりと近づいてきた。
ドキドキしながら、私は必死に言い訳する。
「大変失礼いたしました。人酔いをした様で、少しだけあの場を離れたかったのです。マリナ様のご気分を害してしまうつもりは……。」
「あら?私は気分を害してなどいないわよ?
少し貴方とお話がしたかったから、寧ろちょうど良かったわ。
よかったら私のお気に入りの場所に連れて行ってあげる。着いてきて。」
マリナ様は、バラに負けないくらい真っ赤でみずみずしい唇に人差し指をつけると、内緒だよと言わんばかりにシーッと囁いた。
そしてそのまま歩き出すマリナ様の後ろについていくと、そこは白いベンチと真っ赤なバラでできたアーチ型の大きな屋根がある場所で、その見事な出来に私は思わず息を吐く。
「素敵……。」
「気に入ってくれて嬉しいわ。さぁ座りましょう。」
マリナ様は白いベンチに座り、隣をトントンと叩くので、私は緊張しながらもその隣に座った。
「美しいでしょう?私は赤いバラが一番好きだわ。
誰もが認める美しさの象徴……美しさって何よりも価値があるモノだと思うのよ。
美しくないモノに価値はない、私もカールもそう思っているわ。」
マリナ様は近くに咲いていたバラを一輪の手に取り、それを私の髪にソッ……つけると嬉しそうに笑う。
「だからこの子が生まれる前にレガーノに居を移すことにしたの。
生まれてくる可愛い我が子には美しいモノだけ見てほしいから。」
レガ―ノは王都から遠く離れた田舎町だが、バラの品種改良に成功し様々な貴族御用達の花を製造していた男爵家が住んでいたはず。
その事を思い出し、『なるほど』と納得した私はその事を賛辞した。
「レガ―ノは自然豊かで治安も良いとお聞きしております。そこならば、心穏やかに出産の日まで過ごせるでしょう。」
「えぇ、そう思うわ。────でもね?実は、それだけが目的ではないの。」
マリナ様は手に持っていた扇子を広げ口元を隠す。
そして自信の顔を私の方へグッと近づけた。
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