【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第三十五章

1119 今更……

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( マービン )

驚いてバッ!と空を見上げれば、そこには沢山の飛竜達の姿が……。

飛竜達はこちらを見ながらひたすら鳴き続け、その中でもひときわ大きく鳴いているのは、あの白い飛竜であった。


「 なぜここに飛竜達が……? 」


不思議に思って呟きながら、まるで通せんぼするみたいに前に出された腕を追って隣へ視線を向ける。


するとそこにいたのは…………俺の父、ダリオスだった。



「 と……父さん? 」



父は俺と同様に境界線の上に立ち、進もうとする自身の歩みも必死に止めている様子で、大量の汗を掻いている。

そんな余裕のない父の姿を見たことがなかった俺は非常に驚き、思わずポカンとその姿を見つめると、父は額から汗を垂らしながら酷く辛そうな声で俺に言った。


「 ────行くのか? 」


「 ……だった何だ? 」


正直俺にとって父は空気と同等の存在で、俺や母がどんなに暴言を吐こうが、俺がどんなに悪い事をしようが、無表情、無感情を貫く人であった。

幼い頃は、それでも父に対し、俺を ” 見て ” 欲しいと願うことはあったが……一切返ってこないリスポンスに、俺の中ではとっくに父は存在しない者になっている。


だからこそ、質問された事に対しそっけなく答えたが、父は酷く悲しそうな……初めて見せる表情を浮かべた。


「 そちらへ行けば、もう戻ってこれない。

それでも行くのか? 」


それを言われて、強い怒りの感情がグワッ!とこみ上げ、その感情のまま隣に立つ父を怒鳴りつける。


「 うるさいんだよ!!!

あんたはいつも俺を ” 見て ” なかったじゃないかっ!!!


そんな俺がどこに行こうと勝手だろう!!

今更俺に何を言う権利があるっていうんだ!! 」


今まで何も言わなかったくせに!!

俺が感情を顕にして怒鳴り散らすと、父は悲しげに顔を歪ませ、下を向く。



「 ……俺は……俺はどうすれば良かったのだ……。


────あぁ、俺が全て悪かったのか……。

マクベルの時だって俺はこうだった。

あいつは幼い頃からルィーンと同じ気質を持っていて、迷うことなく直ぐにあちら側へ行ってしまった……。


俺も……もうまもなく……あちらに……。


これが……目を逸らし続けた事の……代償……か……。 」



ブツブツそんな事を呟いた父は、その後ひたすら「 すまない……すまない……。 」と謝り続けた。

やはり初めて見るそんな父の様子に驚きながらその全身を見ると────なんと父の身体はペラペラで、まるで一枚の紙の様になっている事に気付く。


ギョッ!!とした俺が慌てて目を擦ると、父の姿はまるで最初からいなかったかの様に消えていて、同時に空を飛び回っていた飛竜達も全員消えてしまった。


な、何だったんだ……??今のは……。


軽く目を揉み込み、先ほど見たモノを忘れようとしたが、そこでフッ……と幼い頃の父について思い出す。


父は物心ついた頃から寡黙な男で、いつも母の後についていっては、時に理不尽な八つ当たりをされていた。


” 両親もいない野良犬を拾ってあげた私は世界一優しいでしょう?

しかもキチンと躾までしてあげているのだから感謝しなさないね。 ”


” はぁ……もう少しまともな事が言えないのかしら?


────あ、ごめんなさいね?

元低位貴族の貴方には無理なお話だったわ~。 ”


” 私は正統なライロンド家の血筋を持つ選ばれし者なの。

だから私の言う事は全て ” 正しい ”

野良犬は野良犬らしく、少しでもこの私の役に立ちなさい。 ”



何を言われても淡々と仕事に打ち込んでいた父。


そんな父が一度だけ、俺が ” 勉強が嫌だ!! ” と駄々をこねた時に、穏やかな笑みを浮かべながら口を開きかけた事があった。


しかし……。


「 まぁっ!!!なんてことなのっ!! 」


母のヒステリックな叫びによって、その口は閉じられ、笑みも一瞬で消えてしまう。


「 マービンがこんな事を言うなんて!!

家庭教師は全員クビね!!

もっと最高級の家庭教師を今直ぐ探してきて頂戴!!分かったわね!?? 」


母は俺を抱きしめながら、周りにいる従者達に怒鳴り散らすと、俺に顔を合わせてニッコリと微笑んだ。


「 マービンは何も悪くないわ。

勉強が嫌いになる様にしか教えられない家庭教師が悪いの。だから変えましょう。

それなら大丈夫よね?


た~くさん勉強しないと、どっかの小汚い野良犬みたいな惨めな人生になってしまうのよ。

母と一緒に頑張って、将来はもっともっと家を大きくしましょうね。 」



この日から父のあの穏やかな笑顔を見る事は二度となかった。


あの時の父は俺に何を言おうとしていたのだろう?


多少気にはなったが、今更の話だ。



俺は頭を軽く振り、父の事を頭の中から追い出すと、仕切り直しと言わんばかりに足を大きく前に出そうとした、その瞬間────────。



「 君っ!!!早まってはダメだ!! 」


今度は切羽つまった男性の声が背後から聞こえて、突然襟元をグイッ!!と後ろへ引っ張られる。
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