【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第三十六章

1133 真実を教えてあげる

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( マリナ )

その御令嬢は私と同じ歳で、その日はピンクのドレスにこれでもかとフリルが沢山ついた可愛らしいドレスを身にまとい、周りが贈る ” 可愛い ” にニコニコと満面の笑みを浮かべていた。


そんな上機嫌な彼女を見て私が思った事は……  ” あんな醜い子に着させられたドレスが可哀想……。 ” ────であった。


あまりに酷い出来事にクラクラと目眩を起こし、倒れそうになるのを必死に堪え、目の前の無情な現実を嘆く。


” 可愛い ” の欠片もない醜い顔のモノがあんな可愛いドレスを着るなど、ドレスを作った職人の顔に泥を塗るようなもの。

いや、そもそもの話、私があんな外見でこの世に生まれてきたら、申し訳なさから即座に命を断つというのに……。

安っぽいお世辞を真に受けて嬉しそうに微笑む御令嬢に対し、酷く不快な気持ちになった。


” パーティーの主役に乾杯! ”


誰かがいった言葉に、その場の全員が拍手を贈り、ワインやシャンパンに口づける。


────主役?

私は手に持つジュースを静かにテーブルに置き、プッと小さく吹き出した。


あんな醜い子が主役なんかになれるわけないでしょう?


そのままクスクスと笑う私を見た近くの者達は、顔を赤らめウットリと私に見惚れている。


物語に出てくる勇敢な騎士や王子様達が選ぶのは、いつだって美しいお姫様。


主役は ” 美しさ ” を持っている者しかなれない。


醜い外見を持っている時点で、死ぬまでそのモノは脇役でしかなくて、主人公を引き立てる道具として生きる。

それが変える事のできない運命で現実なのに、ねぇ?


可哀想に……。


私はその哀れな ” 道具 ” に向かって、一歩、また一歩と近づき、全てを魅了する様な美しい笑顔を浮かべながら、完璧な礼をした。


「 ごきげんよう。本日はパーティーにお誘いいただきありがとうございます。

素敵なドレスですわね。 」


「 ────!!は、はいっ!ありがとうございます!!

マリナ様も、その白いドレス、す、素敵です。 」


私の雰囲気に圧倒されたのか、モゴモゴと言葉を噛む御令嬢に嫌悪感が湧いたが、それは笑みの下に完璧に隠す。


「 ありがとうございます。実はこのドレスは贈り物の一つですの。

毎日毎日沢山のドレスやアクセサリーが贈られてきますので、誰から贈られてきた物か分からなくて困ってしまいますよね。

努力はしているのですが、なにせ数が多すぎて……。

そのドレスはどちらの方からの贈り物か覚えていらっしゃいますか? 」


「 ……えっ……?

……いえ……これは……自分で……。 」


カアァァ~と赤くなっていく顔を隠す様に、御令嬢は上げていた顔を下へ下へと下げていき、それを見た私はクスッと笑った。


ドレスやアクセサリーをプレゼントされる事。

これはこの国では貴族女性の一種のステータスの一つで、男性貴族は ” 美しいな ” ” 好ましい ” などの心を動かしてくれた女性に対し、自身の手でオーダーメイドしたドレスやアクセサリーを贈る習わしがある。


勿論美しい女性程その数は多く、パーティーやお茶会では、その贈り物の中で最も気に入った物をつけて出席する。


そうする事で男性貴族達は、闘争心を掻き立てられて、より高価で良質なモノを贈る様になり、それによりその女性の価値が高まっていくのだ。

私が身につけている物は全て、そんな贈り物の中でも最も高価なものであり、嫌と言うほど周りに私という女の価値をアピールしている。

私は自分の身につけているモノを見せつける様に胸を張り、オーバーリアクションで驚いたフリをした。


「 まぁ!そうでしたの!

凄いですわ~ご自身で身につけるモノを用意するなんて!

私など、自分で選んだ事がないので何を選べばいいか分からないんですよ。

あ……これ、恥ずかしいので秘密にしてくださいね。 」


「 ……は、はぁ……。 」


シーッ……と人差し指を唇につけるジェスチャーを見せると、周りにいる男性達の目は私に釘付けで、本日の主役のはずの ” 道具 ” になど目をやる者達はいない。

” 道具 ” は自分たちが注目されているという事に恥ずかしがって、また視線を下げてしまい、現実を教えてあげている私にお礼の一つもしようとしない。


醜いモノにはマナーも礼儀もない様だ。

残念すぎる外見と内面に呆れ果ててため息を漏らしたその時、一人の同世代らしき御子息がガチガチに緊張しながら私へと近づいてきた。
 
確かは我が家より爵位が劣る子爵家の御子息だったはず。

突出した商業性も持たず、今後親しくしてもあまり得はない相手。


「 ごっ……ごきげんよう。マっ、マリナ様。 」


顔を真っ赤にしながら挨拶してくるその御子息に対し、即座に今後の関係について計算をはじき出した私は、そのまま無視しようと思ったのだが……目の前の御令嬢に視線を移せば、先ほどとは違った様子でもじもじと手足を細かく動かしている事に気づく。

それで全てを悟った私は、心の中でニヤリと笑った後、話しかけてきた御令息に笑顔を見せ優雅で美しい礼をした。
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