【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第三十六章

1149 許す事

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( グレスター )

つまりその視点で見れば、私は ” 無価値な子供 ” で、弟は ” 価値ある子供 ” 。


だから私が切り捨てられるのは仕方がない事だと理解していたし、悪いのは両親でもその価値観でもないとも分かっていた。


沢山の選択肢を得るためには ” 余裕 ” が必要で、 ” 貧しさ ” は人からそれを奪うモノ。

だから今回の私を捨てる選択をした両親に負の感情を向けるのは、非常に違和感があったのだ。


そのため私は両親の申し出にコクリっと素直に頷くと、両親は涙を流しながら何度も何度も私に謝ってきて、弟も悲しげな顔を私に見せた────が……私の耳には彼らの ” 声 ” がしっかりと届いていた。


” あ~これで厄介な無駄飯食いがいなくなってくれる。

生活に少し余裕ができるから、今日は少し奮発したごちそうを作ろう。 ”


” こんな弱々しい子、何の役にも立たないもの。

このまま家に居座られても困るから、教会に預かって貰って一人で生きていってもらいましょう。 ”


” このまま家で兄貴を養うなんて冗談じゃない。将来の俺の負担になっちまうもんな。

良かった、いなくなってくれて。 ”



<癒人師の資質>(先天スキル)

< 贈られる心声 >

自分に対してある一定以上の感情を向けた心の声を聞くことのできる特殊系先天スキル

ただし自身がそれを拒否した場合は、聞こえなくする事も可能



それを聞いてもなお、やはり私の心には怒りや憎しみ、悲しみ、そのどれも浮かばない。


” そうだね。 ” 


そんな賛同する言葉しか思いつかなかった。



そして私はなんの不満も持たぬまま、近くにある街の教会へと送られ、そこで暮らす様になるのだが……今思えば多分この時からだ。


私の中には大きくそこの見えない程深い穴が開いていて、そんな穴を少し離れた場所から見つめている事に気づいたのは……。


一体この穴はなんだろう?


最初はとても小さい穴だったのが、少しづつ少しづつ大きくなっていく様な気がして……私は何となく怖くなって目を逸らして日々を過ごす。

不安と恐怖、それが常に心の奥底にあったが、気を紛らわせてくれたのは教会内にあった図書室の沢山の本達であった。


右を見ても本、左を見ても本!


故郷では農業に関する数冊の本しかなかったため、勿論その村から出たことがなかった私にとってそんなにも沢山の本を見たのはこれが初めて。

しかもその種類は多種で、私はその本達が見せてくれる世界に夢中になっていった。


” 知識 ” を与えてくれる本。

” 愉快 ” を与えてくれる本。

” 悲しみ ” を与えてくれる本。


こんなにも沢山の感情を与えてくれる本達。


自分ではない第三者視点で語られる物語は、私を様々な世界へと連れていき、沢山の感情を教えてくれた。


” 穴 ” がない心で見た世界はなんと美しく、キラキラしているのだろう!


第三者の視点で世界を見ることで、私は無限に ” 幸せ ” を得る事ができるのだ。


そうしてその ” 幸せ ” に浸る事で、私を教会に預けた後、一度も会いに来ないし連絡すらもしてこない両親の存在は徐々に薄れていき────……最終的に私にとって ” 家族 ” とは、ただの薄ぼんやりとしたイメージとして残る程度になってしまった。


でも、それでいい。


私と ” 家族 ” は、今後も決して交わらぬ別々の人生を歩んでいく。

だから私はこの世に生み落としてくれた事だけ感謝し、これからは振り返る事なく自分の人生を歩んでいこう。

そう考えて、私は私を幸せにしてくれる世界でマイペースに過ごしていた。



そんなある日の事。

その日はとても良い天気だったため、私は読もうと思った本を片手に図書館の端の方……木漏れ日が漏れる窓の側に行き、設置してあったテーブルに座ってゆったり本を読み始めた。


その本は少し前に子供たちの間で流行っていた、少年が主人公のファンタジー小説で ” なるほど、確かに子供が好きそうな話だな。 ” などと思いながらサクッと読み終える。


そして他の本を探しにいくかと、その場を立とうとした瞬間……突然後ろから声が聞こえた。


「 その主人公、俺は好きじゃないな。

” 悪 ” を許すって、酷く傲慢で自己陶酔的な行為だと思うから。

ねぇ、君はどう思う? 」


慌てて声がした方向を振り返れば……そこには私と同じくらい歳の少年が立っていた。


ハッと目を引くような美しい顔貌とアクアマリンを想像させるサラサラの髪。

それだけでも印象的である少年だったが、それよりも更に私の目を引いたのはその目だ。


何もかもに絶望している様な……諦めた様な目。


それなのに纏う雰囲気は鋭い刃を何十にも巻き付けている様な、人を酷く拒絶する様なモノで……何だかそれが彼を守る存在の様にも感じた。
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