【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第三十六章

1153 害悪は……

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( グレスター )


「 兄貴だけとても裕福で優雅な生活をしているそうじゃないか。

こっちは兄貴の代わりに毎日毎日汗水垂らして畑を耕しているんだぞ?

そんな生活を一人だけしているのはズルいと思わないのか? 」


「 そうだぞ。

そんなに余裕があるなら、なぜ直ぐに俺達に知らせなかったんだ。

独り占めなど酷いじゃないか? 」


「 私達は家族なんだから、お互い助け合って生きていかなきゃ。

だからこれからはよろしくね。 」


弟や両親はそれがさも当たり前といった様子で語り、最後はニヤニヤと欲望に塗れた顔で笑っていた。

要は、私は彼らの ” 家族 ” として、彼らの ” やりたい事 ” が見つかるまで生活全てを援助することが正しいと、そう言っている様だ。


その独特の考え方に対し考えながら黙っていると、私が了承したと思った三人はそのまま話を続けた。


「 とりあえず妻と数人の子供たちを直ぐに呼ぼうと思っているから、まずは両親と俺達が悠々と住める一軒家を建ててくれ。

子供たちのためにもできるだけ大きい家にしてくれよ。 」


「 それに孫たちには最高の教育を受けさせてやりたいから、その準備と費用は全てグレスター、頼むぞ。 」


「 後は、私達が十分に暮らしていけるだけの生活費を毎月キッチリ出して頂戴ね。

私、色々なお店を見てみたいわ~。

きっと見たことがない様なモノが沢山あるんでしょうね! 」


三人は夢の様な生活をお互い語り合い、アレヤコレヤと私に対する要求はどんどん増えていく。

そして少し落ち着いたのか、三人は一旦話を止めて私の方を向くと────……最後はこう言って話を締めた。



「「「 優秀な家族がいて、俺達(私達)は本当に幸せだ。 」」」



それを聞いた私がどう思ったかというと……やはり何も感じなかった。

怒りも憎しみも喜びも、何もかも……。

風化寸前の ” イメージ ” に対し、きっと私の感情は動かなかったのだと思う。


彼らとはとっくの昔に別々の道を歩いているのに、突然私の進む道の前に飛び出てきた所で、正直道端に生えている草と変わらない。


ただ道端に生えている草。

それに感情が動かないのと同じ。


別の道を歩む彼らの言葉を理解する事は永遠にできないが、神に仕えし者としてできる限りの事をしよう。


そう考えた私は、彼らのために自分ができることを考えた。


私にできる事、それは教会に助けを乞う者たちと同じ。

その者の話に耳を傾け、最善であると思える答えを提示する事だけ。


手を叩き合って喜ぶ彼らを見て、次に私は ” 最善 ” を考えた。


まず彼らにとっての悪は ” 私 ” だ。


私という存在を恐らくは村に定期的に来る商人にでも聞き、それによって負の感情が生まれてしまったのだろう。

表に見えるキラキラしている生活の部分だけを見て、今まで幸せだと感じていた生活が途端につまらないモノに見えてしまった。


そして我慢の限界を超えて今回の再会に繋がったのだと、そう思われる。


私さえいなければ、商人の語る話は夢物語として ” 世の中にはそんな夢の様な暮らしもあるんだね~。 ” 程度で終わっていたはず。


実際はそんな夢の様な暮らしにだって苦労はある。

だから結局は ” 平等 ” であると思うが……彼らには嫌な部分は見えないらしい。



” その通りだ。私達は血の繋がった家族なんだから助け合おう。 ”


彼らを許し、肯定しておけば、一番楽なのかもしれないが……。


私はフム……と悩んだ後、一つの答えに辿り着き、踊り狂うくらいに喜んでいる彼らへ近づくと────そのまま彼らに向かってスキルを発動した。



<癒人師の資質>(ユニーク固有スキル)

< 心の守り人 >

対象と決めた者の記憶の中に意識を飛ばし、その記憶がその対象にとっての ” 悪 ” だと判断した場合、消し去る事ができる精神干渉系スキル

” 悪 ” に対する判断は術者の善悪の価値観によって決定する

記憶の改ざんも自由に可能


(発現条件) 

一定以上の魔力、魔力操作、自愛、合理性、冷静、穏やか、慎重、繊細を持つこと

一定回数以上人の心を癒やす事

一定以下の精神汚染度である事




人の本体は ” 心 ”


だからこそ心の治療は、ただの入れ物の体の何十倍……いや、何万倍も難しい。


特に自身の身に起きた酷い体験は、下手をすれば死ぬまでその者を苦しめる。


それが限界を迎えた時、私はこのスキルを用いて、その者の辛い記憶を消したり、または違うモノに塗り替えたり一部塗りつぶしたりして、心を守りながらその回復を待つ。


消せる記憶は、その対象にとっての ” 悪 ” の記憶のみ。

つまり ” 元家族 ” 達にとっての ” 悪 ” は────。



この私、グレスターの記憶だ。



私は三人の頭の中から ” グレスターの記憶 ” を完全に消し去った。


そしてスキルを掛け終わると、三人はキョトンとした顔で教会内を見回す。


「 何故俺達は教会に……?? 」


「 今は収穫の時期で忙しいのに、何してたのかしら?? 」

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