【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
1,176 / 1,649
第三十六章

1160 皆で行こう

しおりを挟む
( グレスター )

それから私はヨセフが言った通り、カトリーナとジェニファーの側でゆっくりと自身の心を修復していった。

” 穴 ” はまた少しづつすこしづつ塞がっていき、とても穏やかな日々が続く。


このままいけば遥か遠くにいる君の背に、追いつくことができるのだろうか?


相変わらずキラキラ光り輝くヨセフを見て、私は ” そんな日が来るといいな ” と思ったが……その日は永遠に来ることはなく、ヨセフと私の道は完全に分かれてしまった。


カトリーナの突然の ” 死 ” によって。



その日は酷い雨が降っていて、珍しく仕事が休みのカトリーナと朝から三歳になるジェニファーとゆったりと過ごしていたが、突然一本の連絡が入った。


” 隣街にカトリーナが入荷待ちしていた宝石が入った ” と。


早速ウキウキしながら用意を始めたカトリーナを見て、私は心配でそんな彼女に話しかける。


「 明日にしたらどうか? 」


止めても無駄な事は分かっていたが、やはり心配でそう言った。

そしてそんな私の言葉を聞いたカトリーナは予想通りの言葉を返してくる。


「 何を言っているの!

こうしている間にも誰かに取られちゃうかもしないし、このカトリーナに ” 待つ ” なんて選択肢はないの。

欲しいものは誰よりも早く自らの手で掴みにいくわ! 」


グッ!と力強く拳を握ったカトリーナは、足元でキョトンとしているジェニファーをそのまま上に持ち上げ抱きしめた。


「 ジェニファ~!

また母様がすごく素敵なモノを手に入れてくるからね~!

それでその冒険記を聞かせてあげるわ! 」


フフンっ!と得意げに言うカトリーナに対し、ジェニファーは嬉しそうに笑う。


「 おかあしゃまのお話、ジェニファーは、だいしゅき!

たのちみにしているね! 」


ジェニファーは私ととても似ている気質を持っている子で、物静かで外より家の中でゆったりする事を好む。

だからこそ私同様、直ぐに外に飛び出していくカトリーナの話が楽しく楽しくて仕方ない様で、何度もその冒険記を聞きたがった。

ジェニファーの言葉を聞いて、完全にカトリーナのやる気スイッチが入ったのを感じた私は、仕方なくそのまま彼女を乗せた馬車をジェニファーと共に見送る事にしたのだ。


しかし────……。


次第に強まっていく雨と風。

それに竜巻の様なモノまで遠くの空に見え始めた時には、彼女を送り出した事を後悔した。


こんな悪天候で馬車は走れるのだろうか……。


ジェニファーに心配掛けまいと、笑顔でいたが、内心は気が気ではなかった。


そして外が真っ暗になっても帰ってこないカトリーナに、我慢の限界がきたその瞬間────我が家に緊急の連絡が入る。



” カトリーナの乗っていた馬車が竜巻に巻き込まれ、木っ端微塵になった。 ”



……それから気がつけば、殆どの部分が欠けているカトリーナだったモノが目の前に置かれた。

その中でも一番綺麗だったのは左腕で、その薬指には大きな< 魔石 >がついた指輪が嵌められている。


< 魔石 >

魔力を吸収する事で様々な効果を得る事ができる特殊な鉱石

その性質と希少性からとても高価で、また様々な魔道具に使われるが、宝石の様な外見をしている事からアクセサリーとしての価値も高い

また吸収した魔力によって色を変えるため、貴族女性のトレンドアクセサリーの一つ



私は震える手でその手を取り、その指輪を呆然と見下ろした。

綺麗な金色……。

その指輪からは私が入れた癒しの魔力が感じられ、この腕は紛れもなくカトリーナ本人のモノであるという何よりの証拠であった。


「 ────────っ~~~~っっ!!!!!??? 」


それが認識できた途端、私は獣の様な声を上げ、何度も何度も回復魔法をその身体に掛けたが、何の変化も起きやしない。


” 死人に回復魔法は効かない ”


つまりもう片方しかない状態のカトリーナの目は……開く事は二度となかった。


それでも私はヨセフの静止する声をどこか遠くに聞きながら、回復魔法を掛け続け────フッ……と気づけば、目の前には自室の部屋の天井が。


どうやら私はベッドで寝ているらしい。

そして横から悲しげなヨセフの顔と今にも泣きそうなジェニファーの顔が見え、私は直ぐにニコッと笑った。


「 ちょうど良かった。

ヨセフ、次の休みはセイさん達も誘って皆で新しいイベントへ行かないか?

カトリーナももうすぐ帰って来るからまた四人で計画を立てよう。

ジェニファーもお兄ちゃんたちが来るから楽しみだろう? 」


ペラペラと語られる言葉を聞いて、何故かヨセフは大きく顔を歪め、ジェニファーは泣き出してしまう。

なんだか漂う雰囲気が怖くて、何か言おうと思ったが、それより先にヨセフが話し始めた。


「 グレスター……ジェニファーはもう帰っているよ。

それに……セイにはもう二度と会えないんだ。 」


「 ……えっ? 」


キョトンとした私を見て、ヨセフは辛そうな顔で首を振る。

そしてジェニファーの鳴き声だけが響く中、ドキンっ……ドキンっ……と自分の大きな心臓の音が耳を叩く。
しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...