【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第三十七章

1176 負けたら楽しくない

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( リゼル )


────ドサッ……。


赤く染まっていく大地の中、その場に残された後衛班の下半身達が一斉にその場に崩れ落ちると、空に打ち上げられた上半身は次々と地面に落ちてくる。


その光景を見て、ピエロ野郎は骨むき出しの口元を大きく歪ませニィィィ……と笑った。



『 ギャッ、ギャギャギャッ────。



ハッハッハッハッ────ッ!!!!!! 』



酷く掠れた声で楽しそうに笑うピエロ野郎は、血のついた剣をベロリと舐めて、俺達前衛班を挑発しようとした────が……。


突然頭上に現れた巨大な光の槍が、ヤツの脳天を突き刺す。



『 ────────????!!!ギ……ギギギ……ッ!!! 』



さしてダメージが通った様には思えないが、舌を出していた事で噛みちぎられてしまった舌の一部が、ポ────ン……と宙に放り出されてしまった。

そしてボトリッと地面に落ちると、その舌は陸に上げられた魚の様にビチビチとその場で跳ねる。


ピエロ野郎はブワッ!!と怒りのオーラを出しながら、自身の口元を押さえて正面をギロリと睨みつければ、そこには斬り殺したはずの後衛班がピンピンした様子で【 聖歌魔法 】を使い続けていた。



「 あ~……ごめんね?俺って結構嘘つきだからさ。

もしかして信じちゃった? 」



兄はクスクスと笑いながら、地面でビチビチ跳ねるヤツの舌の所まで歩いていくと、何のためらいもなく、その舌をグチャリッと踏み潰す。




<聖愛師の資質>(ユニーク固有スキル)

< 愛は盲目 >

相手の視覚を盲目状態にし、嘘の現実を創り出す幻覚系スキル

他者に向けられた ” 愛 ” が深い程、その威力と精度は上がる

(発現条件) 

一定以上の聖属性魔力、魔力、魔力操作を持ち、かつ、愛情、慈愛、信頼などの正の感情を他者から受け取った経験値を持つこと

一定回数以上幻覚魔法に掛かり、それを打ち破る事、人の心を守るための嘘をつくこと




兄の創り出す偽の現実を見せられ、更に舌を踏み潰されたヤツは更に激昂し叫んだ。


『 ギ、ギギギギィィィィィ────ッ!!!!!! 』


ブワッ!!と立ち上る禍々しい魔力。

そしてそれと同時にちぎれた舌がボコボコと膨れて長くなっていき、元の舌の何十倍もの長さを持つ舌が生えてくる。

肌に突き刺さる様なピエロ野郎の魔力を全身に受けると、背中にはゾワゾワとした悪寒が走った。


「 あ────……奴さん随分とお怒りの様だぞ。

ちょっとやべぇんじゃねぇの? 」


「 ……正直圧倒的に戦闘員が足りないよ。

でも特殊属性を持つこいつに対して、下手に応援を呼べば全員犠牲になっちゃうし……詰んでるよねぇ~。

人数不足による火力不足に、背にはソフィア様と街の人達、さらに多数の高ランクモンスターとSランクモンスター複数体……と。


……うん、詰んでるね。 」


「 詰んでるなぁ~。 」


「 詰んでますね。 」


「 詰んでます。 」


「 山詰みです。 」


乾いた笑いで肯定する俺に続けとばかりに他の団員たちも、それを肯定してくる。


「 ハハッ!だよねぇ~。 」


兄は軽い感じで笑ったが、一片の隙もなくレイピアを構える兄に、いつもは感じる余裕は微塵も感じられない。


そのことから、この戦いの勝機は本当にゼロ。

恐らくは全滅するであろう事が嫌でも分かってしまった。


俺は大きく息を吸い込み、フゥゥゥゥゥ~……と息を吐き出す。


それでも逃げる事は絶対に許されない。

後方には国の未来を握るソフィア様と、街の沢山の人々やけが人達。

そしてヨセフ率いる神官達もいるのだ。


ここを突破されてしまえば、この戦いは俺達の敗北、しいては未来は地獄へ一直線って事。


「 負け……ねぇ?

そしたら楽しくねぇよな~。 」


俺は槍を握る手に目線を滑らせ、フッと昔の事を思い出す。




まだセイ父さんが生きていた頃。

小学院に通う前に絶賛反抗期中であった俺は、何をしても口でも実力でも勝てぬ兄やヨセフとはまともな喧嘩ができず、また飄々と何でもできてしまう兄に対しコンプレックスも拗らせていたため、毎日の様にセイ父さんに当たり散らしていた。


どうしようもできない苛立ちやジレンマ、不満や上手く行かない焦燥感……。


その全てを泣きながらセイ父さんにぶつければ、セイ父さんはいつも「 そうかそうか~。 」と全て受け止めてくれた。


その日もいつもの様に、理不尽に感じる事やどう頑張っても兄に勝てない事への憤りをセイ父さんにぶつけていたのだが、どうにもイライラが収まらず、俺はセイ父さんに向かって怒鳴る。


「 もう止めた!!俺はこれから頑張る事なんて二度としねぇ!! 」


そう宣言してプイッ!と顔を背ける俺に、セイ父さんはおや?と目を僅かに見開き、俺に尋ねた。


「 リゼルはこれから頑張る事を止めてしまうの? 」


「 そうだよっ!!だって頑張ったって無駄じゃん!!

どうせ兄さんには勝てねぇし!


そもそも何で頑張ったり、色々我慢して生きていかないと駄目なんだよ。

大人は皆 ” 将来のために必要 ” とか ” 幸せになるためだよ ” って言うけどさ、結局その将来の最後って ” 死 ” じゃん。


最後が分かっているのに、頑張ったり、泣いたり、笑ったり……ぜ~んぶ無駄じゃね?

馬鹿みてぇ!! 」


ケッ!!と不貞腐れた様に言い捨てる俺を見て、セイ父さんはウンウンと頷きながら答える。


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