【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第三十七章

1188 俺の夢

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( ザップル )


「 保護された子供達は全員口を揃えて言っておったよ。


” ザップルがいつも助けてくれたから、今度こそ助けたい ” と。


お主はあやつらにとって ” 大恩人 ” で ” 大事な存在 ” になってしもうた。

じゃからこれから大変じゃぞ。


お主は自分を大事にしなければならん。なぜか分かるか? 」


「 ……ひっ……えぐっ……分から……ない……っ……。 」


ヒィヒィと喉を鳴らしながらそう答えると、ヘンドリク様は俺の頭を更に激しく撫で回した。


「 大事な人が傷ついたり、辛い思いをすれば、酷く傷つくからじゃ。

お主が今まで通り、己を犠牲にするやり方で周りを守った所で、傷つくお主を見て深く傷つく。

そしてまた無茶をしてでもお主を助けようとしてしまうじゃろうな……。


自分を大事にするのは、自分を大事に想ってくれる者達のために、絶対に守らなければならん事なんじゃ。 」



俺を助けるために< モーニング・スターベア >の前に立った仲間たち。

そして助けを呼ぶため、モンスターがいる様な道を走ってくれた仲間たち。


俺が無茶をすれば、また彼らはこんな無茶をしてしまうかもしれない。



俺はなんて重たい責任を背負ってしまったのだろう。



それに恐怖するのと同時に、今いる世界が……凄く綺麗なモノに見えたんだ。



そんな世界に立つ自分が俺は好きになって、そしてそんな美しい世界の一部である仲間たちの事も大好きになると、今まで見えていた濁った世界はキラキラと眩い程の光で溢れ────その美しい姿の全てを見せてくる。


そこに一緒に立って俺に手を差し出してくる仲間たちを見て、俺はそれを守りたいと心から望んだ。



「 俺は……俺はどうすれば、アイツらを傷つけないでいられますか? 」


不躾な質問だったが、ヘンドリク様は気を悪くした様子もなく、俺の頭から手を離す。


「 強くなる事じゃ。

自分に襲い来る脅威を全てぶっ飛ばしてやればいい。


簡単じゃろう? 」


ニヤッと笑うヘンドリク様を見て、俺は下を向いて、服の袖で乱暴に顔を擦った。


強くなること。

そうすれば俺は大事な人達を傷つけないで済む。


俺は自分の実体験から、美しい世界に存在するこの悲しい連鎖を断ち切りたいと、強く思った。


虐げられ、その鎖に縛られてしまう人達を救う。

それが ” 正しい ” 世界を作っていきたい。


それが、今この瞬間俺の夢になった。



でもその夢を叶えるには、俺は強くならなければならない。


そうしないと大事な人達を傷つけてしまうから。



明確な夢と決意を胸に顔を上げると、ヘンドリク様が俺の背中をバンバンと強く叩く。



「 さっ!早速行くぞぃ!

ザップルよ、お主の荷物はそれだけかのぉ?


まずは買い物からじゃな……。 」



「 は……?荷物は確かにこれだけですが……行くとは?? 」



孤児院で虐げられていた俺の持ち物は、下着が一着にボロボロのシャツとズボンが一着ずつだけ。

ヘンドリク様はヤレヤレと困った様に頭を掻きながら、ベッド脇の小さなテーブルの上に纏めてあったそれを手に取り俺に持たせると、さっさと歩き出した。


俺は理由が分からぬまま、慌ててそんなヘンドリク様の後について行く。


オロオロとしている俺を他所に、ヘンドリク様は治療をしてくれていた神官に「 今日退院するぞい。 」と伝え、呆れた様子の神官に半ば無理やりYESを言わせると、サッサと教会の出口へ向かってしまった。


呆気に取られながらも、俺は神官に「 今までありがとうございました! 」と頭を下げると、神官はニコッと困った様に笑う。


「 これからまたここに来る事がない様祈ってます。

神の祝福があります様に。 」


心からそう願ってくれたのが分かり、俺はもう一度頭を下げて心からのお礼を告げると、ヘンドリク様を追いかけ走り出した。


そして出口の扉の前でやっと追いついた俺の前で、突然ヘンドリク様はピタリと止まり、こちらを振り向く。

体力不足からハァハァと息を乱しながら、俺が ” なんだろう? ” とヘンドリク様を見返すと、ヘンドリク様はイタズラが成功した少年のような笑顔を見せた。


「 ワシはのぉ~結構冒険者として長く働いてきたが、この年まで受け持った弟子はたった一人だけじゃった。


自分の人生で得た力や教訓を伝えたいと、そう思える強者はとても少ない。


お主はその二人目となったわけじゃ。

ワシは厳しいぞ。ついてこれるな?ザップルよ。 」



ヘンドリク様の思ってもいない言葉に、俺はヒュッ!と喉を鳴らし、その後止まったはずの涙がまたボロボロと流れ出す。



「 ………っ…………は、はいっ……!!!! 」



感極まって一杯一杯な様子で返事を返す俺を見て、満足そうに微笑んだヘンドリク様は、出口の扉に手を掛けたが……もう一度ピタリと止まった。
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