【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第三十八章

1210 自分で探しに行く

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( ベリー )

父は何かを思い出しているのか、顔を歪めて何度も頷いた。


「 そ……そうかな……。

でも……私達が女の子らしくないっているのは本当だし……。 」


「 ……結局はそこなんだよね……。 」


父のあまりにもポジティブ過ぎる発言に、私達はしどろもどろになりながら答えたが……結局根本的な問題は解決しないため、それをボソボソと小さな声で訴える。

しかし、父はそんな私達の言葉もこれまたあっさりと吹き飛ばした。


「 あのよぉ~……そもそも ” 女らしさ ” なんざ、少なくとも本当に強いヤツは、そんな事気にしねぇぞ?

相手に ” ~らしさ ” を求める時点で、自分が欠けてっから、” 人 ” を使って埋めようとしているだけだ。 」


「 ……自分が欠けているから……? 」


キョトンとして聞き返すキュイちゃんに、父は大きく頷いた後、晴れ渡る青空を見上げる。


「 要は ” ~らしさ ” を使って、相手を ” 下 ” にしたいって事。

弱ぇヤツは ” 下 ” を見ないと幸せを得られない。

” 上 ” にはこんな青空が広がってるっつーのに、勿体ねぇよな~。 」


父は美しい青空を見ながら、穏やかに笑うと「 あいつは ” 女らしさ ” なんざなかったけどな。 」と最後はポツリと呟いた。


父が言った ” あいつ ” とは、多分私達の母の事。


母はそれはそれは逞しい体格をしたゴリゴリのパワー系前衛職の傭兵だったそうで、父との出会いも高ランクモンスターの生息地だったそうだ。


父はあろう事か、その地にたった一人で足を踏み入れお目当ての素材を採集していたが、運悪く高ランクモンスターと居合わせてしまったらしい。

勿論命からがら逃げ出したが、疲れはピーク、魔力はゼロ。

手持ちの魔道具やアイテム類も底をつき、流石に死を覚悟した。


しかしそんな時に、たまたま依頼の帰りだった母が父を発見し、そのモンスターを拳で殴り、母はそのまま動けない父をお姫様抱っこして街まで運んでくれたのだそうだ。


これが父と母の馴れ初めらしい。


ちょっと父の情けなさにため息が出たが、これで母に惚れた父は、それこそ母が根負けするまで毎日毎日口説き見事結婚までこぎつけたそうで、それだけは凄いと思っている。


だから父にとっては外見云々は、全く気にするものではない様だ。

母のこういう所が可愛かっただの、こういう所が好きだのと、お酒に酔うとよく言っていたから。


” 女らしさ ” がない母にベタ惚れな父。

なんだか父の言いたい事が分かる様な分からない様な……。


なんとなく複雑な想いで、私達が顔を見合わせていると、視線を青空から私達に移した父は、ヤレヤレと大きく肩をすくめた。


「 世の中ってなぁ~、すんごぉぉぉぉぉ~く広いんだぜ?

だから色んな人がいて色んな価値観っつーモンがある。

どれが正しいなんざ、それが人に危害を加えるモンじゃない限りは、他人が決める事じゃねぇよ。

結局は自分に合うか、合わないか。

それだけなんだよ。 」


父は大きく両手を広げ ” 世界 ” の広さを現した後、しみじみしながら目を閉じ何度も頷く。

そして片目だけパチッと開けて、ニヤッと片方の口角を上げた不敵な笑みを見せてきた。


「 だからこれから二人でゆっくり探しに行け。

” くせに ” やら ” らしさ ” なんてない、自分だけの幸せの居場所ってやつ。

だから今は何も考えずに、それを探しに行ける ” 力 ” をひたすら身につけるこった。

それがねぇと、結局探しに行けねぇからさ。」


言葉を失ってしまった私達を他所に、父はこの話はおしまい!とばかりに、一度手を叩く。

そしてボンヤリしている私達に喝を入れる様に、その日はそれはそれは厳しい戦闘訓練をさせられた。



この時の私達にとって、父の言葉は難しくてピンッとこなかったが、それから多くの知識を得て、実力をつけていくうちに、いつしかそれが自分の目標になっていく。


” いつか自分の居場所を見つける ”


沢山の可愛いモノに出会って、それに囲まれて……それが ” くせに ” とか ” らしさ ” とか関係ない、自分らしく生きていける場所。


そんな場所、あるのかな?

そんな不安は、父の言う ” 広い世界 ” とやらがかき消してくれる。


きっとそんなにも世界というモノが広いなら……きっとどこかにはあるんだ。


そんな ” 希望 ” は、周りで囁かれる、嫌な声達を全て消し去ってくれた。


そうして私とキュイちゃんは無事準成人を迎え、とりあえず戦闘経験を積むため守備隊に入り、やがて成人を迎える。

その頃私達は、特に ” 辛い ” も "    楽しい "   のない守備隊で、悪くいえば流される様に過ごしていた。

多分意識だけが広い世界に行って、それだけで満足していたのかもしれない。


でも、そんな現状に満足し始めていた私達を……父は許してくれなかったらしい。



その年の盛大なイシュル祭を堪能してきた私達が、可愛いお人形やアクセサリーを買ってご機嫌で帰宅した時の事。


「 ただいま~! 」


「 凄く楽しかったけど人が多かったよ~。 」


多少人酔いしながら帰宅した私達。

早速買ったモノを父に見てもらおうと、部屋の奥に進んだ私達が見たもの……それは、まるで今から冒険にでも行く様な格好をした父の姿であった。
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