【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第四十章

1291 最悪な可能性

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( マービン )

スタンティン家は、貴族のみに魔道具を販売している事に誇りを持っている。

そのため、エドワード様と対立などすれば……家は100%潰されてしまうだろう。


それでも……戦いに参加したのは、恐らく俺より先に到着していたらしい、自分の子息に背中を押されてだと思われる。


リーフ様の背中を熱心に追いかけていたスタンティン家の子息は、随分と早くここに到着していたらしいから……きっと迷うことなく自分の正しいと思う道へ走った。

そしてそんな我が子の姿に、当主達は同じく自分の心のままに動く事を決意したのだろう。


親と子の絆というものをまざまざと見せつけられ、自分には決して手に入れる事のできなかったモノにただ感動する。


凄いな……。


これは、富、財産、地位なんか比べ物にならないくらい凄いモノだ。


” 羨ましい ” という気持ちが湧き上がったが、もうそれが怒りや悲しみと直結する事はない。


だってあの変なじいさんにまた怒られちゃうからな!


ギュッと握った拳を見下ろした後、俺は直ぐに同志達へ指示を出す。


「 よし!防壁の維持をしているチームは、けが人の収容を優先し、ダックス防衛団とストリング魔術団のサポートをメインに連携せよ!

更にスタンティン家の魔道具部隊も参戦した。

これで戦いが楽になる。

我々貴族の力、モンスター共に思い知らせるぞ!!! 」


《 おおおおぉぉぉぉ────────っ!!!! 》


同志たちからの雄叫びが上がると、先程より勢いを増して迫ってくるモンスター達は後退していく。


俺もこの復讐劇に喜んで参加しよう。

貴族としての誇りと、代々境界線を守ってきた我がライロンド家の誇りを汚した黒幕達と……母に。



そこでフッ……と偽の楽園の境界線で踏ん張っていた、ペラペラの紙の様になっていた父の姿を思い出した。


父はあの後どうなったんだろう?


気にはなったが、俺は首を振ってそれを追い出し、直ぐに戦闘へ意識を集中させる。



その後大きくモンスター共を後退させる事に成功した俺達は、更にどんどん参戦する私兵達や届けられる物資に驚かされながら、そのまま前線を安定させてホッと一息ついた。

しかし……特に問題が起きていないというのに、何故か先程から胸騒ぎが収まらない。


嫌な予感に内心苛立ち、思わずチッと舌打ちをする。


あの母が……そしてそれ以上の悪意を持った人間が、このままで終わるのか?


「 …………。 」


ガリガリと爪を齧りながら、その事について考え込んでいると、グリムとスワンがご機嫌な様子で話しかけてきた。


「 戦況は完全に安定しましたね。 」


「 このままこの場をキープできれば、俺達の勝ちです。

ザマァ見ろですね。 」


グリムとスワンは周辺のモンスター達を軽く薙ぎ払うと、お互いハイタッチをして喜んだが……俺の考え込んでいる顔を見て表情を引き締める。


「 あぁ、俺もそう思いたいが……どうにも嫌な予感がするんだ。

あの女の執念深さと醜悪さはよく知っているからな。 」


「「 …………。 」」


グリムとスワンは神妙な顔でお互い顔を見合わせた。


モンスターを討伐したと見せかけて捕獲していた事は間違いない。

目的はいざとなったら中から防壁をぶち破るため。


では万が一……それが失敗失敗したら、奴らはどう出る?


そこまで考えた所で、一瞬頭の中を過った最悪の可能性に、ブワッ!と汗を掻き、慌てて地面の方へ視線を向けた。


まさか────……。


明らかに顔色が悪くなった俺を見て、グリムもスワンもゴクリと喉を鳴らす。


「 マービン様、一体何を考えているのですか? 」


不安そうに尋ねてくるスワンに、青白い顔のまま質問をした。


「 ……もしもの話だが────モンスター共をこれだけ用意して、それがうまくいかなかった場合、二人ならどうする? 」


「 ────へっ??

えーっと……そもそもこれほどの猛攻撃に失敗するとは思いませんね。

これ以上は特に何も……。 」


「 俺もスワンと同じく、これ以上は考えません。 」


二人は顎に手を当て考えながら、質問に答える。

俺はそんな二人に向かって大きく頷いた。


「 そうだろう。それが常人の考えだ。

しかし、悪意を持つ人間は、相手の全てを根こそぎ叩き尽くさないと気が済まない。

そのためには過剰とも言える手を使ってくるんだ。

それこそ、街にいる蟻一匹仕留めるのに、住んでいる人間達ごと街を全て焼き払う……くらいは平気でやる。

目的のためなら努力を惜しまず、それが例え何千、何万と犠牲が出ようとも、奴らは突き進む……勝利のために。 」


グリムとスワンは、俺の話を聞いてサァ……と青ざめていく。

二人も正しく悪意ある人間を知っているため、恐怖を感じた様だ。


そのせいで、先ほどまでの上機嫌なオーラはどこかに飛んでいってしまった。

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