【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第四十一章

1323 無駄じゃなかった?

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( ジェニファー )

ヨセフ司教の指を追い、再度自分のドレスを見下ろすと、本当に酷い状態だった。


さっきより汚れてしまった……。

でも、私はこれが誇らしい。


それが私の今の本心だ。


「 これは……大事なモノでした。


” 私 ” が必要とされていると……愛されていると証明するモノだったから……。 」



でも、同時にこれは、私から ” 個 ” を奪うモノでもあった。


” 私 ” を出してはいけない。

ずっとずっと閉じ込めておくための檻の様なモノ。


そうして父を救うモノでもあったコレは……最後には、父を進んではいけない場所へと導くモノでもあったのだ。


「 選んだ答えが絶対的に ” 正しい ” とは思ってません。

でも…… ” 私 ” はもう、それ以上進みたくないと思ってしまいました。 」


私の ” 愛 ” では父を救う事はできなかった。


今は、私が今までにしてきた事全てが父を進んではいけない道へ導いてしまったのではないかとすら思っている。


きっと私と父の ” 愛 ” は相性が最悪だったのだと思う。


私は今、この瞬間にも進んではいけない道へ進み続けている父を想い、視線を下げた。


非常に似ている気質を持った私達は、どこまでもどこまでも真っ暗な底なし沼の様な場所へと一緒に歩いていってしまう。

私達は自分で道も決められない、どうしようもない人間なのだ。


暗く沈んでいく自分を必死に引き上げようとすると、ヨセフ司教が突然笑いだした。

何故笑うのか分からずキョトンとしていると、ヨセフ司教は穏やかな雰囲気を纏いながら話を始める。


「 いや~、本当に君とグレスターは双子の様にそっくりだ。

自分というモノの価値を、とても低いモノだと思っている。

それでいて攻撃的な思考を元々持ってないから、それを人のせいにして逃げられないんだね。

とても不器用で損な性格だ。 」


「 そ、そうでしょうか……。 」


自分の価値など正直ないに等しい。

こんな自分が人の役に立つものかと、常に心にそんな想いはある。


それに……。


フッ……と頭に浮かぶのは、父の悲しげに微笑む姿。


私はたった一人の家族すら救えず、こんな大厄災が起こる事を知っていたのにただ震えていただけの愚か者だ。


そんな自分に価値などないのではないか?


それを目で訴える私を、ヨセフ司教は困った様な顔で笑いながら頭を掻く。


「 親子とはここまで似てしまうモノなのか。

我が息子達は、全然セイに似なかったのに……。


まぁ、そっくりである事は、剣にも盾にもなるんだよね。


お互いの事が分かるから居心地が良い半面、一緒に狭い価値観の中に閉じ籠もってしまったり、同じモノを欲して争いになったりもする。

行ってはいけない道に進んでしまった時には────心強い道連れのパートナーにも……ね? 」


────ドキッ……。


最後は人差し指を口に当て、内緒話をする様に囁くヨセフ司教に心臓が跳ねた。

まさにその通りである内容に血の気が引く。


仮にあのまま父と二人で、人として外れた道を踏み越えても、 ” 隣に父がいる ” 

それに罪悪感は吹き飛び、安堵感に包まれながら、そのうち何も感じなくなったに違いない。


その事を改めて思い知らされ、恐ろしさに震えた。


私も父も罪人だ。

そしてヨセフ司教はそれを正しく理解している。 


私はここでヨセフ司教に裁かれるのだろうか……。


ブルブルと震えながら、その覚悟を決めた瞬間……何故かフワッと頭を撫でる感触がして、驚いて顔を上げた。

すると、ニコニコと笑顔で私の頭を撫でているヨセフ司教の顔がすぐそこにある。


「 あ、あの……。 」


「 んん~……。あんなに小さかった君が、こんなにいい子に育ってくれて、私はとても嬉しいよ。 」


予想していたのとは180度違う対応に私が目を白黒していると、ヨセフ司教は突然手を止めて、ペコリと頭を下げた。

またしても予想外の行動を取られてしまい狼狽える私になんと「 ありがとう。 」などと言うので、思わず目が点になってしまう。


「 い、一体何に対してのお礼なのですか……? 」


全く思いつく事がなかったため、素直にそう尋ねると、ヨセフ司教はゆっくり顔を上げて私を見詰めた。


「 今の今まで傷ついたグレスターに寄り添い、ここまで止めてくれていたお礼だよ。


必要だったのは、正しい言葉でも光に引っ張ってくれる手でもなかった。

心が回復するまで、ただ同じ場所で側に寄り添ってくれる存在だったんだ。


今まで我が親友が生きてこれたのは君のお陰に他ならない。

だからずっとお礼を言いたかったんだ。


ありがとう。 」


お礼の意味を理解した瞬間、ブワッと熱いモノが溢れて、ヨセフ司教から慌てて顔を逸らす。


私がしてきた事は無駄ではなかったの……?


そんな言葉が頭の中をぐるぐる周り、涙が零れそうになってしまった。


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