【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
1,389 / 1,649
第四十三章

1373 【 七星昇華陣 】

しおりを挟む
( アゼリア )

やつの喉の奥に、小さな丸い透明な膜の様な物に包まれている物体……それは大きな目玉に小さな体と手足がついている、胎児の様な姿をしているモノであった。

それが一瞬、またすぐに閉じられてしまった口の奥に見えたため、それを伝えると────ドルトン様は目を見開き、ニヤッ……と笑う。


「 お手柄だな、アゼリアっ!

恐らくそれがヤツの本体……瘴核だ。

いい目を持っているな。 」


「 瘴核……?あれが……? 」


初めて見る形の ” 瘴核 ”

つまりそれを潰せば……私達の勝ちだ!


「 レイモンド家のアゼリア様が< ヒャクメ・カオス >の瘴核を発見しました!!

口の奥!!胎児の様な姿をしている模様!! 」


解析班から全員に情報を伝達すると、またワッ!と歓声が上がるも、全員がそれを破壊する事の難しさを痛感し汗を掻く。


モンスターの弱点 ” 瘴核 ” は発見できた。

しかし……問題はどうやって全属性の耐防御結界を突破し、瘴核を破壊するか?だ。

それが最大の課題、かつ不可能である事を同時に悟る。


「 ────クソっ……。弱点が分かっても、あの防御結界がある限り、奴を倒す事は……。 」


クラークが悔しげにそう言い、私も同様の気持ちを持って沈黙した。


《 ががががぎゃぎゃぎゃっギャッ!!! 》


< ヒャクメカオス >はまるであざ笑うかの様に大声で鳴きながら、何百にもある魔法陣を出現させると、無差別に多属性魔法弾を撃ってくる。


するとドルトン様は向かってくるそれを拳で撃ち落としながら、同じくそれぞれの魔法で対応している四柱達と目を合わせ頷き合う。

その後、ドルトン様が私とクラークの方に視線を向けてきたのだが、なんだかその顔がすごく晴れやかで……嫌な予感がした。


「 ” 戦いの中で命を散らす事。”

それは戦いを生業にする者たちにとって、最も幸せな事だと思っていたが……そうではなかったらしい。

それを幸せだと言えるのは、自分の ” 死 ” が無駄ではなかったからだ。

自分という存在がいなくなっても、未来を進んでいってくれる存在が……希望があるから幸せだと言えるのだと、私は学んだ。 」


「 ドルトン様……?一体何を……? 」


戦いの最中に、突然語りだすドルトン様を訝しげに見つめるクラーク。

多分私も同じ表情をしていたのだと思う。

ドルトン様は私とクラークの両方の顔を見比べてフッと静かに笑った。


「 ただ自分の誇りを守るため、自死を選んだ所で何一つ ” それ ” は手に入らなかっただろうな……。

過去は未来のためにある。

過去はとても大事なモノだが……そのために未来を犠牲にしては、先は ” 絶望 ” しか残らない。

だから私は、これから ” 希望 ” を持って、未来を選ぼうと思う。 

────四柱、すまんな。覚悟はいいか? 」


呼びかけられた四柱は、他の私兵達と共に< ヒャクメ・カオス >の相手をしながらも、迷う事なく「「「「 はっ! 」」」」と返事を返す。


それをしかと聞いたドルトン様は、頷きそのまま魔力を一気に放出すると、宙に見たことのないくらい複雑な文字が書かれた魔法陣が描かれた。

真っ赤な文字で描かれたそれは、禍々しい魔力を放ち、黒い稲妻の様なモノがバチバチと魔法陣の周りを走っている。


一体なんの魔法を使うおつもりか?


「 おい、クラーク。これは一体……? 」


私が問いかけるが、クラークは真っ青になっていてそれに答えない。

嫌な予感は加速しドルトン様を見上げると、ドルトン様は迷いない目で告げた。


「 これより四柱と共に、レイモンド家の秘術【 七星昇華陣 】を使って、ヤツの防御結界を打ち破る!!

皆のもの、その後は頼んだぞ!! 」


「 し……【 七星昇華陣 】……だと……?

これが……? 」


幼い頃にボンヤリと聞いた覚えがあるその名に、ゾッと背筋を凍らせる。

【 七星昇華陣 】は、魔法の名家であるレイモンド家が独自に創り上げた秘術で、魔法というカテゴリーでいえば最強であると言われている大魔法を使う事ができる。


通常【 火 】【 水 】【 風 】【 土 】【 雷 】【 闇 】【 光 】の7つの属性を使う魔法だが、その【 七星昇華陣 】は、属性というモノを持たない。


つまりどういう事かというと、” 属性を持った魔法を使う ” のではなく、” 魔力というモノそのものを《 分解 》する ” ……というのが正しい魔法なのだ。


まさに魔法の頂点と言える大魔法なのだが…………勿論その力の ” 代償 ” はある。


「 ドルトン様……死ぬ気だ。 」


クラークが、青ざめた顔色のままボソッと呟き沈痛な面持ちで下を向く。

それに釣られる様に、私も同じく視線を下げて悔しさと虚しさに耐えた。
しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...