1,495 / 1,649
第四十八章
1452 カルパスの人生
しおりを挟む
( カルパス )
するとその男は味をしめたのか、その後も何度も何度も我が家に盗みに入っては、泣いて土下座をし許され、盗みに入っては泣いて土下座をして許され……その手口や手段もどんどんと大胆なモノになっていく。
そして何度目かに盗みに入ってきた時、私は土下座をして泣きわめく男を見て悟った。
こいつにとっての ” 謝罪 ” は、とっくの昔に相手に対する罪悪の気持ちを示すものではなく、金を手にするための " 手段 " でしかないのだと。
残念ながらそうなってしまえば、他人から与えられる優しさは、ただ都合よく利用できるモノでしかなくなってしまう。
だから行動はどんどんとエスカレートしていくのだ。
" もっと得がしたい。 "
" 便利な道具をもっともっと使って使って……使い切ったら、また新しい道具を探せばいい。 "
" 世の中には沢山沢山使えるモノがあるんだから! "
そう高らかに叫んで笑う男の姿が頭の中を過ると……泣いている男の口元が大きく歪んで見えた。
私はため息をつきながら、両親が動揺している間に直ぐに守備隊へ連絡。
そしてやってきた守備隊に、今までの所業を証拠つきで全て提出してやると、その男は泣き顔から一転……怒りの形相で私に怒鳴り始めた。
「 お前は人としての優しさもないのかっ!!!
こんなに反省して謝っている人間に対して慈悲も与えないなんて……この悪魔っ!! 」
自分のしてきた事を全て棚上げして怒鳴る男に向かい、私は鼻で笑ってやったが、両親と兄たちはオロオロとするばかり。
そのため、私は男にハッキリと告げてやった。
「 お前は許しによって救える人間ではなかったと言う事だ。
罪にふさわしい罰を受けろ。
それでも這い上がれないなら……そこがお前のふさわしい居場所だ。 」
結局男は納得などするはずもなく、そのままギャーギャーと私を罵る言葉を残して守備隊へ連れてかれたのだが、詳しく調べると余罪がゴロゴロと出てきたらしい。
その中には重犯罪に当たるモノもあったらしく、男は犯罪奴隷へ。
そのまま二度と日の目を浴びない人生を送る事になったそうだ。
その知らせを聞き、当然の結果だと笑う私とは対照的に、両親と兄たちは酷く落ち込んでしまった。
それは男のこれからの人生に対して悲しい気持ちもあった様だが、一番ショックだったのは、私にその決定をさせてしまった事の様だ。
罪悪など感じる必要などないのに…。
毎日気まずそうに気にかけてくる両親と兄たちに、私はため息をつきながら言った。
「 優しさによって救われる者もいれば、逆にさらなる奈落に落ちていく者もいる。
そんな救われる事を拒む者達を叩き落とす事に、私は罪悪など感じない。
寧ろスッキリしている。 」
キッパリと自分の気持ちを伝えると、両親と兄たちは全員顔を見合わせた後、何故かペタペタと私の背中や肩、頭を触ってくる。
子供扱いが嫌でその手をやんわりと振り払うと、父が突然ボソッと言った。
「 カルパスは戦う事ができる子なんだな。 」
言っている事が分からずキョトンとする私を見て、父は大声で笑った。
「 私はきっと戦えない人なんだと思う。
許すことは自分のためでもあるんだ。
怒りや憎しみを持ちながら戦うよりも、自分が我慢してしまった方が楽なんだよ。 」
「 私もよ~。
自分が我慢して争いが起こらないなら、それでいいかって思っちゃう。
ストレスでしょ?って周りに言われても、争いになる方がストレスなのよね……。 」
父の話に母も便乗し、揃ってウンウンと頷くと、兄二人も同じく頷く。
私はニコニコと笑い合う家族達の顔を見て、複雑な気持ちを持ったが、最後は呆れめに近い気持ちになった。
「 ……あの男は、もっと早く父さんと母さん達みたいな人間に出会えればよかったのに。 」
手遅れであった泥棒の男を思い出し、そう呟く。
こういった優しさにより救われる人たちだっている。
許しが救いになる事も考えれば、両親達の様な人々はこの世界に必要なモノだと思う。
しかし────……。
私の脳裏には、優しさを利用することしかできなかった泥棒の男が過った。
きっと行く所まで行ってしまえば、優しさは自分を救うものではなく、より深い闇へと引きずり込むモノへと変わる。
それを見誤れば…………私は救えるはずの人間を永遠の奈落の底へと落としてしまう事になるのだ。
唐突にそれに気づくと、思わず体が震えた。
人を ” 裁く ” 事の難しさ。
それを思い知らされて、私はこの日から足を踏み出す事ができなくなってしまった。
そしてそんな自分に転機が訪れたのは、高学院に入学した時だ。
その時に群を抜いて身分が高かった同級生は、侯爵家ジェンスター家の子息である< ドノバン >。
そいつは全ての事をどうでもいいといわんばかりに、流すだけの軽い男に見えた。
目の前で身分を盾にとった虐めを見ても ” お~頑張れ~。 ” の一言で知らんぷり。
日々を怠惰に過ごしているだけの男。
それがドノバンという男の第一印象で、勿論大嫌いなタイプであったが……。
今の私も同じか……。
それに気づいてしまうと、思わず笑いが漏れた。
するとその男は味をしめたのか、その後も何度も何度も我が家に盗みに入っては、泣いて土下座をし許され、盗みに入っては泣いて土下座をして許され……その手口や手段もどんどんと大胆なモノになっていく。
そして何度目かに盗みに入ってきた時、私は土下座をして泣きわめく男を見て悟った。
こいつにとっての ” 謝罪 ” は、とっくの昔に相手に対する罪悪の気持ちを示すものではなく、金を手にするための " 手段 " でしかないのだと。
残念ながらそうなってしまえば、他人から与えられる優しさは、ただ都合よく利用できるモノでしかなくなってしまう。
だから行動はどんどんとエスカレートしていくのだ。
" もっと得がしたい。 "
" 便利な道具をもっともっと使って使って……使い切ったら、また新しい道具を探せばいい。 "
" 世の中には沢山沢山使えるモノがあるんだから! "
そう高らかに叫んで笑う男の姿が頭の中を過ると……泣いている男の口元が大きく歪んで見えた。
私はため息をつきながら、両親が動揺している間に直ぐに守備隊へ連絡。
そしてやってきた守備隊に、今までの所業を証拠つきで全て提出してやると、その男は泣き顔から一転……怒りの形相で私に怒鳴り始めた。
「 お前は人としての優しさもないのかっ!!!
こんなに反省して謝っている人間に対して慈悲も与えないなんて……この悪魔っ!! 」
自分のしてきた事を全て棚上げして怒鳴る男に向かい、私は鼻で笑ってやったが、両親と兄たちはオロオロとするばかり。
そのため、私は男にハッキリと告げてやった。
「 お前は許しによって救える人間ではなかったと言う事だ。
罪にふさわしい罰を受けろ。
それでも這い上がれないなら……そこがお前のふさわしい居場所だ。 」
結局男は納得などするはずもなく、そのままギャーギャーと私を罵る言葉を残して守備隊へ連れてかれたのだが、詳しく調べると余罪がゴロゴロと出てきたらしい。
その中には重犯罪に当たるモノもあったらしく、男は犯罪奴隷へ。
そのまま二度と日の目を浴びない人生を送る事になったそうだ。
その知らせを聞き、当然の結果だと笑う私とは対照的に、両親と兄たちは酷く落ち込んでしまった。
それは男のこれからの人生に対して悲しい気持ちもあった様だが、一番ショックだったのは、私にその決定をさせてしまった事の様だ。
罪悪など感じる必要などないのに…。
毎日気まずそうに気にかけてくる両親と兄たちに、私はため息をつきながら言った。
「 優しさによって救われる者もいれば、逆にさらなる奈落に落ちていく者もいる。
そんな救われる事を拒む者達を叩き落とす事に、私は罪悪など感じない。
寧ろスッキリしている。 」
キッパリと自分の気持ちを伝えると、両親と兄たちは全員顔を見合わせた後、何故かペタペタと私の背中や肩、頭を触ってくる。
子供扱いが嫌でその手をやんわりと振り払うと、父が突然ボソッと言った。
「 カルパスは戦う事ができる子なんだな。 」
言っている事が分からずキョトンとする私を見て、父は大声で笑った。
「 私はきっと戦えない人なんだと思う。
許すことは自分のためでもあるんだ。
怒りや憎しみを持ちながら戦うよりも、自分が我慢してしまった方が楽なんだよ。 」
「 私もよ~。
自分が我慢して争いが起こらないなら、それでいいかって思っちゃう。
ストレスでしょ?って周りに言われても、争いになる方がストレスなのよね……。 」
父の話に母も便乗し、揃ってウンウンと頷くと、兄二人も同じく頷く。
私はニコニコと笑い合う家族達の顔を見て、複雑な気持ちを持ったが、最後は呆れめに近い気持ちになった。
「 ……あの男は、もっと早く父さんと母さん達みたいな人間に出会えればよかったのに。 」
手遅れであった泥棒の男を思い出し、そう呟く。
こういった優しさにより救われる人たちだっている。
許しが救いになる事も考えれば、両親達の様な人々はこの世界に必要なモノだと思う。
しかし────……。
私の脳裏には、優しさを利用することしかできなかった泥棒の男が過った。
きっと行く所まで行ってしまえば、優しさは自分を救うものではなく、より深い闇へと引きずり込むモノへと変わる。
それを見誤れば…………私は救えるはずの人間を永遠の奈落の底へと落としてしまう事になるのだ。
唐突にそれに気づくと、思わず体が震えた。
人を ” 裁く ” 事の難しさ。
それを思い知らされて、私はこの日から足を踏み出す事ができなくなってしまった。
そしてそんな自分に転機が訪れたのは、高学院に入学した時だ。
その時に群を抜いて身分が高かった同級生は、侯爵家ジェンスター家の子息である< ドノバン >。
そいつは全ての事をどうでもいいといわんばかりに、流すだけの軽い男に見えた。
目の前で身分を盾にとった虐めを見ても ” お~頑張れ~。 ” の一言で知らんぷり。
日々を怠惰に過ごしているだけの男。
それがドノバンという男の第一印象で、勿論大嫌いなタイプであったが……。
今の私も同じか……。
それに気づいてしまうと、思わず笑いが漏れた。
141
あなたにおすすめの小説
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる