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第四十八章
1453 正義を貫く事と結果
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( カルパス )
自分の感情と価値観だけで人を裁く事が怖い。
きっと私は、目の前で犯罪行為を見てしまえば、救えるはずの者まで叩き潰してしまうだろう。
だからこそ、目立たずひっそりと。
あまりに酷い虐めを目撃した時だけ、上手く立ち回り対処してきたが、身分が絶対のこの国で逆らい続けるには全く足りなかった。
これ以上手を出せば、私は勿論、あの ” 善 ” の塊である家族達まで犠牲になってしまう。
それが嫌でずっとずっと自分を押さえて生きてきたが────……結局私は自分の持っている気質を押さえきる事ができなかった。
ある日学院内で遭遇してしまった、あまりにも理不尽で暴力的な場面。
身分を盾に下の身分の者を多数で詰り、殴る姿を前にそれを注意することなくボンヤリ見ている侯爵家のドノバンの姿に、堪忍袋の尾が切れるのを感じた。
体は勝手に動き出し、まずはニヤニヤと笑いながら下の身分の者を殴っている加害者を、そして次に自分は関係ないとふんぞり返っていたドノバンを殴り飛ばす。
「 恥を知れ!この愚か者め!! 」
悲鳴を上げているドノバンにそう言い放てば、ドノバンは怒りの形相で睨みつけてきた。
「 ふざけるなっ!!
お前っ!侯爵家の俺を怒らせてただですむと思うのか? 」
「 喧嘩に負けたから親に敵をとってももらうのか?
この卑怯者め。 」
怒鳴ってくるドノバンを鼻で笑いながら挑発してやると、ドノバンは顔を真っ赤にしながら私を指差す。
「 ” 決闘 ” だぁぁぁ────っ!!!! 」
その後、結局正式な形での決闘をドノバンとする事に。
望むところだと受けてたったが、私はそれが無駄な事である事も知っていた。
侯爵家の子息と子爵の子息。
この時点で、この決闘の結果は必ず不変的なモノになるだろう。
それを覚悟しながらの決闘であったが、結果は予想どおり私の負け。
どんなに実力が上だとしても身分の力は圧倒的で……絶対に叶う事はないということをよく証明する結果となった。
ドノバンが倒れた瞬間、私は沢山の護衛騎士達や私兵達に囲まれ、そのまま殴る蹴るの激しい暴行を加えられる。
「 侯爵家の子息になんてことを!! 」
「 ただの子爵風情の分際で!! 」
そんな怒号と共に見えたのは、周りの生徒達の多種多様な目の数々だ。
ざまあみろ!という、自分の正義が正当化されている事に満足している目。
単純に誰かが不幸な目にあっているのを喜び、愉快を感じている目。
これが当然なんだと自分に言い聞かせ絶望する目。
そんな沢山の目に晒されながら、私はその場に無様に倒れ込んだ。
多分このまま私は死罪になるだろう。
それは別に構わないが、心残りはとばっちりを受けるであろう家族と我が家に従事する数少ない使用人達の事だ。
” どうか罰はこの私一人に……! ”
目を閉じてイシュル神に願う私が次に目を開けた時、その目に写ったのは────情けない顔で私を見下ろすドノバンの顔であった。
「 俺の負けだ。
ルールだから何でも願い聞いてやるよ。
お前の欲しいものって何?金か?地位か?女────は違うか……。
なぁ、何か教えてくれよ。 」
そう問うドノバンからは、先程の様なボンヤリした様子はなく、随分と真剣な眼差しをしていたと思う。
私の望み……。
望みは────……。
ゆっくりと起き上がり、私は迷子の様な目を向けてくるドノバンに向かいビシッ!と指を指した。
「 ならばこれから卒業までの間、貴様はこのカルパスの下僕だ!!
まずはおすわりから覚えろ!!この駄犬がっ!! 」
そう言い放った瞬間、私は非常にスッキリして、” あぁ、これが私のあるべき姿だ。 ” と、唐突に理解する。
自身の正義に従い戦い続ける事。
それを我慢して生きていく事は、私にはとてもとても苦しい事であった。
どんなに苦しくても、無駄でも、間違っていても……私は私の心のまま戦い続け、前に進みたい。
それを理解する事は、自分の個性の確立と同時に────……。
尊敬する家族と完全に道が別れた瞬間でもあった。
結局その後、いくらドノバンがいいと言っても、一応貴族としての罪を償う事に。
私は学生という立場である事、そしてジェンスター家当主の口添えもあってお咎めはなし。
しかしその親である両親はそうはいかず、全財産の没収と貴族としての身分剥奪、かつ次期当主候補であった兄達もそのとばっちりを受けて身分を取り上げられる事になった。
つまり、この時点で私には子爵としての身分だけが残される。
これは一般貴族としては最大の罰であり、何もかも失い貴族の中では最下層の身分へ。
貯蓄がゼロの状態で貧しさに耐えながら働かなければならないわけだが……平民に混じって働かなければならず、その時点で限界を迎える者達が多い。
日頃平民を馬鹿にして生きてきた貴族にとって、それは最大の恥。
そうして大抵の者達は、最終的に自死を選ぶというわけだ。
自分の感情と価値観だけで人を裁く事が怖い。
きっと私は、目の前で犯罪行為を見てしまえば、救えるはずの者まで叩き潰してしまうだろう。
だからこそ、目立たずひっそりと。
あまりに酷い虐めを目撃した時だけ、上手く立ち回り対処してきたが、身分が絶対のこの国で逆らい続けるには全く足りなかった。
これ以上手を出せば、私は勿論、あの ” 善 ” の塊である家族達まで犠牲になってしまう。
それが嫌でずっとずっと自分を押さえて生きてきたが────……結局私は自分の持っている気質を押さえきる事ができなかった。
ある日学院内で遭遇してしまった、あまりにも理不尽で暴力的な場面。
身分を盾に下の身分の者を多数で詰り、殴る姿を前にそれを注意することなくボンヤリ見ている侯爵家のドノバンの姿に、堪忍袋の尾が切れるのを感じた。
体は勝手に動き出し、まずはニヤニヤと笑いながら下の身分の者を殴っている加害者を、そして次に自分は関係ないとふんぞり返っていたドノバンを殴り飛ばす。
「 恥を知れ!この愚か者め!! 」
悲鳴を上げているドノバンにそう言い放てば、ドノバンは怒りの形相で睨みつけてきた。
「 ふざけるなっ!!
お前っ!侯爵家の俺を怒らせてただですむと思うのか? 」
「 喧嘩に負けたから親に敵をとってももらうのか?
この卑怯者め。 」
怒鳴ってくるドノバンを鼻で笑いながら挑発してやると、ドノバンは顔を真っ赤にしながら私を指差す。
「 ” 決闘 ” だぁぁぁ────っ!!!! 」
その後、結局正式な形での決闘をドノバンとする事に。
望むところだと受けてたったが、私はそれが無駄な事である事も知っていた。
侯爵家の子息と子爵の子息。
この時点で、この決闘の結果は必ず不変的なモノになるだろう。
それを覚悟しながらの決闘であったが、結果は予想どおり私の負け。
どんなに実力が上だとしても身分の力は圧倒的で……絶対に叶う事はないということをよく証明する結果となった。
ドノバンが倒れた瞬間、私は沢山の護衛騎士達や私兵達に囲まれ、そのまま殴る蹴るの激しい暴行を加えられる。
「 侯爵家の子息になんてことを!! 」
「 ただの子爵風情の分際で!! 」
そんな怒号と共に見えたのは、周りの生徒達の多種多様な目の数々だ。
ざまあみろ!という、自分の正義が正当化されている事に満足している目。
単純に誰かが不幸な目にあっているのを喜び、愉快を感じている目。
これが当然なんだと自分に言い聞かせ絶望する目。
そんな沢山の目に晒されながら、私はその場に無様に倒れ込んだ。
多分このまま私は死罪になるだろう。
それは別に構わないが、心残りはとばっちりを受けるであろう家族と我が家に従事する数少ない使用人達の事だ。
” どうか罰はこの私一人に……! ”
目を閉じてイシュル神に願う私が次に目を開けた時、その目に写ったのは────情けない顔で私を見下ろすドノバンの顔であった。
「 俺の負けだ。
ルールだから何でも願い聞いてやるよ。
お前の欲しいものって何?金か?地位か?女────は違うか……。
なぁ、何か教えてくれよ。 」
そう問うドノバンからは、先程の様なボンヤリした様子はなく、随分と真剣な眼差しをしていたと思う。
私の望み……。
望みは────……。
ゆっくりと起き上がり、私は迷子の様な目を向けてくるドノバンに向かいビシッ!と指を指した。
「 ならばこれから卒業までの間、貴様はこのカルパスの下僕だ!!
まずはおすわりから覚えろ!!この駄犬がっ!! 」
そう言い放った瞬間、私は非常にスッキリして、” あぁ、これが私のあるべき姿だ。 ” と、唐突に理解する。
自身の正義に従い戦い続ける事。
それを我慢して生きていく事は、私にはとてもとても苦しい事であった。
どんなに苦しくても、無駄でも、間違っていても……私は私の心のまま戦い続け、前に進みたい。
それを理解する事は、自分の個性の確立と同時に────……。
尊敬する家族と完全に道が別れた瞬間でもあった。
結局その後、いくらドノバンがいいと言っても、一応貴族としての罪を償う事に。
私は学生という立場である事、そしてジェンスター家当主の口添えもあってお咎めはなし。
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つまり、この時点で私には子爵としての身分だけが残される。
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