【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第五十一章

1547 勘違い

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( リーフ )

「世界は沢山の価値観の集合体なんだから、他を排除しようとすれば争いしか残らない。
争いをすればするほど、自分の世界は否定されちゃうのにな。」


もうすぐ断罪されて平民になっちゃう俺にできる事は少ないと思うけど、やれるだけやってみよう。

新たな決意を胸に、俺は自分の中を壊そうとするその『声』達を心の中からポーン!と追い出し、そのまま前を向いて歩き続けた。


そうしてかなりの距離を歩いて到着したのは、ご立派なイシュル像が立体的についている巨大な扉だ。

この部屋こそ、レオンハルトが初めて名前を貰った場所……【謁見の間】である。


「おおお~……!」


思わず感動し、身を震わせる俺。

ファンなら失神してもおかしくない聖地を前に、今まさに俺も気を抜くと失神しそうだ!


ムフ~!!

興奮して息を吐く俺を見て、扉の両端に待機している騎士さん達が、ビクッとしていたが、それは仕方ない。


だって絶対入れないと思っていた部屋だ。

そりゃ~興奮もする!


「あ、あの!俺、自分で開けるんで!!」


とりあえず扉を開けようとしてくれた騎士さん達に待ったを掛けて、ス~……ハァ~……と深呼吸をして気持ちを落ち着けた。

そして、扉に静かに手を触れ、開ける準備を万端にする。


よ~し!聖地巡礼!聖地巡礼!!


ウッキウキで扉を開けようとした、その時────……俺の頭の中にアルバード英雄記のストーリーがブワッ!と浮かんできた。


名前がずっとなかったレオンハルトが、やっとこの世に自分を存在させてくれる名前を貰った場所。

でも……その時のレオンハルトにとって、それは何の意味もなさない事だった。

心はとっくに壊れていたからだ。


「…………。」


俺は馬鹿みたいに浮かれポンチだった自分を反省し、プシュ~……と嬉しい気持ちは完全に萎んだのを感じた。

頭の中で小躍りしていた自分へオジさんの鉄拳を食らわせた後、扉に触れていた手を一旦引っ込める。

そして直ぐ後ろにいるレオンを振り返ると、すごくご機嫌なレオンの視線とぶつかった。


一片の汚れもないピカピカの制服と、呪われた左の半分を隠す様に装着している魔術の仮面。

カルパスが用意していてくれた金色の刺繍が施された紺色のマントを羽織り、サラサラの黒髪に半分しか見えないがそれはそれは美しい顔。

スーパーグッドスタイルと合わさって、まさしく『美』の集合体の様なレオンは、どこぞやの小説に出てくる王子様の様だ。

本来の未来で、レオンハルトが初めてココに足を踏み入れる時の様にボロボロじゃないレオンは、こんなにも輝いていて……これが本当のレオンの姿。

その事が、何よりも俺は嬉しいと思う。

ニッコリ笑い掛けると、レオンも笑い掛けてくれて、そんな俺達は────……。


……主人とペットのネズミ。


冷静に自分たちを客観視して、心はズン!と落ち込んだが、直ぐに首を横に振ってその考えを吹き飛ばした。

そして、ソワソワしだしたレオンに向かい、小声で話しかける。


「レオン……もしさ、ちゃんとした名前が貰えるとしたら、嬉しいと思う?」


レオンの本当の名前は、『レオンハルト』。

俺が適当に呼びやすいからと名付けた名前ではなく、ちゃんとした名前を数年後、レオンはココで貰える予定だ。

それを嬉しいと思えるのかな……?

ドキドキしながら尋ねると、レオンは────……ブワッ!!!と周りに花が咲くぐらいに嬉しそうな顔をした。


「そ、それは……もしかして……メルンブルクですか?」

「────えっ??メルンブルク????」


なんで俺の名字???

サッパリ意味が分からず頭にハテナが飛んだが、直ぐにその理由に気づく。


『ちゃんとして名前がもらえたら……。』


『??僕の名前はレオンだよ……?
────あ!そっか!僕、名字ないもんね!
リーフ様みたいに名字があったらって事か!』


────と理解したらしい。


そりゃそうだ!


「……う、うんうん。ま、まぁ、概ねそんな感じで聞いてみたんだ。」


まさか『レオンの本当の名前はレオンハルトで、数年後ここで命名されるんだ!』などとは言えず、いい感じでボヤかす。

勝手に自分の頭の中でストーリーが出来上がり、そしてそれが周りも周知の事実だと思っちゃう。

これも歳を取ると勝手に発動する、最強のデバフ系パッシブスキル!

恥ずかしすぎて、顔が熱くなっていくのを感じていると、レオンが突然ガシッ!と俺の両手を掴んできて、おでこがくっつくぐらいの距離まで顔を近づけてきた。


「う……嬉しいに決まってます。
この世界に認められる存在になれるって……そういう事ですもんね。
俺は世界で一番幸せな男になれるでしょう。
名字を貰える日が楽しみです。」


「そ、そっか……。」
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