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5 2つの人生
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「いいんじゃない?努力なんてしなくても。だってアンタはもう既に沢山のモノを持っているんだから。
愛してくれる両親も、尊敬してくれる使用人や……学院にだって友達も沢山いるでしょ?
好きなモノだってなんだって買えるし、手に入る。
飢える事も怒鳴られる事も暴力を振るわれる事だってない。これ以上何を望むの?」
ルーカスは自分の手元を見ているため、どんな顔をしているのかは分からない。
だが、なんだか真剣に言っているのは分かって、僕も真面目に考えた。
「確かに飢える事はないけど、愛情は貰った事ないよ。
それに尊敬も向けて貰った事ないなぁ……。学院でも友達いないし……。
でも、結局そういうのって、手に入ったらラッキーなモノだから、努力を続けるしかないね。」
「はっ……?そんなわけないだろう?
だっていつも沢山褒められているし、友達だっているに決まってる。嘘言うなよ。アンタはいいよな。楽で楽しい人生で。」
ルーカスはもっているペンを強く握り、怒りを現していたが、嘘は言ってないから『ごめん』は言えない。
僕は才能がないから両親から愛されてないし、使用人にも尊敬されてない。
学院では、下の身分の子達には、無能な僕に媚びるだけ無駄だと思われ完全無視。
そして、身分が高い子達からは仲良くするメリットなしと判断され、これまた完全無視されている。
だから、僕は朝から晩まで一人ぼっちだ。
「僕は多分あんまり頭が良くないから、上手く説明できないけど……孤独って、その時に自分がいる環境の中にあるものだと思うんだよ。
羨ましいって感じる物も同じ様に違う。
僕からすれば、ルーカスは頭も運動神経も良くて、それが羨ましいと思ってる。」
「……アンタの方が羨ましいし妬ましい。俺はこの世界が憎くて憎くて仕方がない。
今すぐにでも壊したいと思っているのに、その中でこうして汚らわしいゴミの様な売春婦の息子にもお優しくできるんだから、アンタは幸せって事だろうが。」
ルーカスはペンを持っている手を、机の上に強く叩きつけ、ドンッ!と大きな音がした。
そのせいで、ノートはぐちゃぐちゃ。
それでも気にせず拳を握って痛々しいルーカスの手を、ツンツンと優しく突く。
「恵まれた環境に生まれたのに、誰にも見てもらえない無才人生と、恵まれない環境に生まれて虐げられる天才の人生って、考えてみればコレも公平かもしれないよ。
だってさ、もしも僕が恵まれない環境で無才だったら……可哀想じゃないか。僕が。
だから、せめてルーカスの言う恵まれた環境を頂戴よ。」
わざとらしい泣き真似をする僕を見て、ルーカスは目を見開いてポカンとした後、すぐに立ち上がり「お前ほんと、バカ。」とだけ言い残して部屋を出て行ってしまった。
「う~ん……バカか。頑張ってはいるんだけどね。」
僕はルーカスがぐちゃぐちゃにしたノートのシワを伸ばし、そこに書かれている文字を見つめる。
ルーカスは、多分頭脳、戦闘、いずれも最上級レベルの実力がある。
これは今現在、僕だけが気づいている事実だと思われる。
「一度教えた事は一回で覚えちゃうし、更に一つ覚えるとそれから全ての知識を繋げて理解できちゃう。
それに剣術だって魔法だって、教えると一瞬で負けちゃったなぁ……。」
頭に浮かぶのは、教えたら一瞬で抜かれてしまった日の事。
そんなルーカスの才能を見せつけられると、本当に自分は何も才能がないんだなと思い知らさせる。
何年も努力してできない事でも、ルーカスは一瞬でできて、更に進化までさせてしまうから。
「確かに教えるのって嬉しかったけど、一瞬だったな。どちらかといえば、ショックの方が多かったかも。でも────……。」
同時に湧き上がるのは、別の喜びだ。
ルーカスと『一緒』に過ごす日々の嬉しさ、楽しさ。
孤独じゃない日々は、こんなにも幸せな気持ちにしてくれるのだなと、僕は初めてルーカスに教えてもらえたのだ。
「ルーカスが言う良い環境は、僕にとって幸せじゃなかった。
それをルーカスに教えてもらっちゃったな。
あれ?ってことは、これは公平にならないぞ?僕はルーカスから貰ってばっかりになってしまう!」
シワを伸ばしたのにぐちゃぐちゃのままなノートを見つめ、さっき見たはずなのに、全く覚えていないポンコツな頭を叩く。
人の1000倍努力しないと人並みにすらできないポンコツ頭と体。
どんどん勉強の内容が難しくなっていき、自分の限界は近いと分かっていた。
それは剣術でも魔法だってそう。
最近はどんなに努力しても、人並みすら難しくなっている。
「無才か~……。まぁ、自分にできる事をしていたら、もしかして何か別の才能がポッ!と見つかるかもしれないし……。
追い出されたとしても、生きていく事くらいはできるだろう!……多分。」
ノートを抱えると、グッ!と拳を握り、僕もルーカスに続いて部屋を出ていった。
愛してくれる両親も、尊敬してくれる使用人や……学院にだって友達も沢山いるでしょ?
好きなモノだってなんだって買えるし、手に入る。
飢える事も怒鳴られる事も暴力を振るわれる事だってない。これ以上何を望むの?」
ルーカスは自分の手元を見ているため、どんな顔をしているのかは分からない。
だが、なんだか真剣に言っているのは分かって、僕も真面目に考えた。
「確かに飢える事はないけど、愛情は貰った事ないよ。
それに尊敬も向けて貰った事ないなぁ……。学院でも友達いないし……。
でも、結局そういうのって、手に入ったらラッキーなモノだから、努力を続けるしかないね。」
「はっ……?そんなわけないだろう?
だっていつも沢山褒められているし、友達だっているに決まってる。嘘言うなよ。アンタはいいよな。楽で楽しい人生で。」
ルーカスはもっているペンを強く握り、怒りを現していたが、嘘は言ってないから『ごめん』は言えない。
僕は才能がないから両親から愛されてないし、使用人にも尊敬されてない。
学院では、下の身分の子達には、無能な僕に媚びるだけ無駄だと思われ完全無視。
そして、身分が高い子達からは仲良くするメリットなしと判断され、これまた完全無視されている。
だから、僕は朝から晩まで一人ぼっちだ。
「僕は多分あんまり頭が良くないから、上手く説明できないけど……孤独って、その時に自分がいる環境の中にあるものだと思うんだよ。
羨ましいって感じる物も同じ様に違う。
僕からすれば、ルーカスは頭も運動神経も良くて、それが羨ましいと思ってる。」
「……アンタの方が羨ましいし妬ましい。俺はこの世界が憎くて憎くて仕方がない。
今すぐにでも壊したいと思っているのに、その中でこうして汚らわしいゴミの様な売春婦の息子にもお優しくできるんだから、アンタは幸せって事だろうが。」
ルーカスはペンを持っている手を、机の上に強く叩きつけ、ドンッ!と大きな音がした。
そのせいで、ノートはぐちゃぐちゃ。
それでも気にせず拳を握って痛々しいルーカスの手を、ツンツンと優しく突く。
「恵まれた環境に生まれたのに、誰にも見てもらえない無才人生と、恵まれない環境に生まれて虐げられる天才の人生って、考えてみればコレも公平かもしれないよ。
だってさ、もしも僕が恵まれない環境で無才だったら……可哀想じゃないか。僕が。
だから、せめてルーカスの言う恵まれた環境を頂戴よ。」
わざとらしい泣き真似をする僕を見て、ルーカスは目を見開いてポカンとした後、すぐに立ち上がり「お前ほんと、バカ。」とだけ言い残して部屋を出て行ってしまった。
「う~ん……バカか。頑張ってはいるんだけどね。」
僕はルーカスがぐちゃぐちゃにしたノートのシワを伸ばし、そこに書かれている文字を見つめる。
ルーカスは、多分頭脳、戦闘、いずれも最上級レベルの実力がある。
これは今現在、僕だけが気づいている事実だと思われる。
「一度教えた事は一回で覚えちゃうし、更に一つ覚えるとそれから全ての知識を繋げて理解できちゃう。
それに剣術だって魔法だって、教えると一瞬で負けちゃったなぁ……。」
頭に浮かぶのは、教えたら一瞬で抜かれてしまった日の事。
そんなルーカスの才能を見せつけられると、本当に自分は何も才能がないんだなと思い知らさせる。
何年も努力してできない事でも、ルーカスは一瞬でできて、更に進化までさせてしまうから。
「確かに教えるのって嬉しかったけど、一瞬だったな。どちらかといえば、ショックの方が多かったかも。でも────……。」
同時に湧き上がるのは、別の喜びだ。
ルーカスと『一緒』に過ごす日々の嬉しさ、楽しさ。
孤独じゃない日々は、こんなにも幸せな気持ちにしてくれるのだなと、僕は初めてルーカスに教えてもらえたのだ。
「ルーカスが言う良い環境は、僕にとって幸せじゃなかった。
それをルーカスに教えてもらっちゃったな。
あれ?ってことは、これは公平にならないぞ?僕はルーカスから貰ってばっかりになってしまう!」
シワを伸ばしたのにぐちゃぐちゃのままなノートを見つめ、さっき見たはずなのに、全く覚えていないポンコツな頭を叩く。
人の1000倍努力しないと人並みにすらできないポンコツ頭と体。
どんどん勉強の内容が難しくなっていき、自分の限界は近いと分かっていた。
それは剣術でも魔法だってそう。
最近はどんなに努力しても、人並みすら難しくなっている。
「無才か~……。まぁ、自分にできる事をしていたら、もしかして何か別の才能がポッ!と見つかるかもしれないし……。
追い出されたとしても、生きていく事くらいはできるだろう!……多分。」
ノートを抱えると、グッ!と拳を握り、僕もルーカスに続いて部屋を出ていった。
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