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◇◇
ルーカスと初めて出会ってもう半年が経った。
僕達の関係が大きく変わる────事はやっぱりなくて、座学の時に教材を貰えないルーカスに、後でノートに書いて渡したり、剣術で習った型を教えたり、魔法の発動に必要な魔法の文字について教え続けていた。
相変わらずルーカスは素晴らしい能力で、もう僕が教える事はない。
だから本当にノートを持っていくだけ、型を教えるだけで、対して役にたっていない感が凄くあるが……それでもルーカスが『いらない』と言うまでは、この関係を続けたいと僕は思っていた。
「え~っと……これは……こうで……あ~で……。あれ?」
「……これはこっちの文字を使う。そうしたら爆発魔法を使える様になるだろう?」
本日習った内容をルーカスに教えていたのだが、逆に教えられるという……結構悲しい状況になってしまった。
「本当だ!ありがとう、ルーカス。」
「…………。」
お礼を言いながら続きを教えていると、ルーカスは先生に教えられたやり方より遥かに分かりやすい魔法の方程式を導き出し、それを僕に教えてくれる。
「凄いや。ルーカスは相変わらず天才だねぇ。」
「……アンタがバカ過ぎるだけでしょ?」
ルーカスはため息をつきながら、渋々僕にその方程式の出し型を説明してくれた。
魔法は魔法を使うために必要な【魔力】というモノと、それを使ってそれぞれ発動したい魔法を文字に表した魔法文字が必要になる。
そしてその魔法をどう変化させて使うかなどなど、細かい命令を書き出したモノを魔法の方程式というのだが、これが本当に長いし難しい。
単純な暗記ですら吐くほど大変だというのに、それに様々な魔法変化も加わるので、魔法を使うには頭脳とセンスが必須なのだ。
「ルーカスは魔法、何種類使えるの?」
「……全部使える。オリジナルもいくつか作ったし。」
フッとバカにする様に鼻で笑ったルーカスだったが、僕はオリジナルという言葉が気になってきになって、前のめりになってルーカスに尋ねた。
「オリジナル魔法!?す、凄いじゃないか!
それって世紀の大発見になるんじゃないの?えっ、どんな魔法なの?」
「…………。」
勢いが凄すぎたからか、ルーカスは渋い木の実でも食べた様な顔をして、ボソボソと小さい声で呟く。
「……別に大した事ないけど。空を飛んだり、雲でゴーレム作ったり……。」
「えっ!!何それ!凄い!!」
<ゴーレム>
通常は土魔法を使って作り出す人造人間型の魔法人形の事
めちゃくちゃ大した事ある内容に、フンフンッ!と鼻息荒く喜んだが、ルーカスからの反応はそっけないモノだった。
「だから凄くなんてないってば。アンタができなさ過ぎなの。もうちょっと努力したら?
そもそもどうしてそんな恵まれてる環境にいるのに、そんなにできないわけ?
本当に無駄だね、全部。」
ルーカスは乱暴に立ち上がると、僕が渡したノートを持って、最後にもう一度大きなため息をつく。
「アンタの役目なんてノートを持ってくるくらいしかないんだから、黙って持ってくるだけでいいよ。話しかけたりしなくていいから。────喋りたくないし。」
不愉快全開な様子でルーカスは部屋を出ていってしまい、ポツンとその場に残される僕。
いつもの事とはいえ、嫌な思いをさせてしまい申し訳なかったなと思ったが、それよりも足取りが少しだけふらふらしているのが気になって心配になった。
「ルーカス、今日は歩く姿に元気がないなぁ……どうしたんだろう?」
最近季節は冬へと近づき、肌寒くなってきた頃。
もしかして具合でも悪いんじゃ……?
そんな心配をしてしまったが、なんとこれは的中してしまう。
◇◇
「あれ……?」
学院から帰宅後の座学の授業、その用意をして家庭教師がいる部屋へと向かったのだが、いつも部屋の外で待っているはずのルーカスがいなかった。
「……?中で待ってるのかな?」
ありえないとは思ったが、そう考えて部屋の中に入ったが、ルーカスはいない。
「あ、あの~……ルーカスを見ませんでしたか?」
「グレイ様、本日は昨日の続きからにしましょうか。課題に出した分は全て覚えてきましたか?」
家庭教師の先生は、いつも通りルーカスの事は完全無視して授業を進めようとする。
とりあえず気にはなったが、後で教えるためにも頑張ろうと決めて座学の授業を受けることに。
もしかして遅刻しているだけかもしれないし……。
そう考えて待っていたが、結局その後の実技の授業もルーカスは姿を現さなかった。
「?どうしたんだろう、ルーカス……。」
気になりつつも全ての授業を終え、更に遠征で出かけている父と自分の実家に帰っている母抜きの一人の夕食を終えると、とうとう我慢できずに執事のリアンに尋ねる。
「リアン、今日、ルーカスを見かけた?」
「……いえ。見かけておりませんね。」
リアンは執事という立場上、当主が認めないルーカスに近づく事はしないが、だからといって他の使用人達の様に、攻撃的な態度はしない人だ。
リアンも見ていないという答えを聞き、僕はう~ん……と腕を組んで昨日のルーカスの様子について考える。
いつもは怒ってドスドス荒い足取りで去っていくルーカス。
昨日は足取りもおぼつかなかったし、もしかして……。
「具合が悪いのかも……。昨日少し様子がおかしかったんだよ。」
「左様でございますか……。最近寒くなってまいりましたので、その可能性が高いかもしれませんね。」
ルーカスが倒れている姿を思い浮かべ、ヒヤッ!と背筋が凍りついた気がして体を震わせる。
「大変だ!リアン、ルーカスの部屋はどこか知ってる?僕、少し様子を見てくるよ。」
「…………。」
リアンは少し複雑そうな顔をして、僕をじっと見下ろすと、言いづらそうな様子で言った。
「グレイ様は……ルーカス様に対し、何か思う所はないのですか?」
「えっ?思う所???」
とても抽象的な質問に、僕が考え込むと、リアンはつらつらと話を続ける。
ルーカスと初めて出会ってもう半年が経った。
僕達の関係が大きく変わる────事はやっぱりなくて、座学の時に教材を貰えないルーカスに、後でノートに書いて渡したり、剣術で習った型を教えたり、魔法の発動に必要な魔法の文字について教え続けていた。
相変わらずルーカスは素晴らしい能力で、もう僕が教える事はない。
だから本当にノートを持っていくだけ、型を教えるだけで、対して役にたっていない感が凄くあるが……それでもルーカスが『いらない』と言うまでは、この関係を続けたいと僕は思っていた。
「え~っと……これは……こうで……あ~で……。あれ?」
「……これはこっちの文字を使う。そうしたら爆発魔法を使える様になるだろう?」
本日習った内容をルーカスに教えていたのだが、逆に教えられるという……結構悲しい状況になってしまった。
「本当だ!ありがとう、ルーカス。」
「…………。」
お礼を言いながら続きを教えていると、ルーカスは先生に教えられたやり方より遥かに分かりやすい魔法の方程式を導き出し、それを僕に教えてくれる。
「凄いや。ルーカスは相変わらず天才だねぇ。」
「……アンタがバカ過ぎるだけでしょ?」
ルーカスはため息をつきながら、渋々僕にその方程式の出し型を説明してくれた。
魔法は魔法を使うために必要な【魔力】というモノと、それを使ってそれぞれ発動したい魔法を文字に表した魔法文字が必要になる。
そしてその魔法をどう変化させて使うかなどなど、細かい命令を書き出したモノを魔法の方程式というのだが、これが本当に長いし難しい。
単純な暗記ですら吐くほど大変だというのに、それに様々な魔法変化も加わるので、魔法を使うには頭脳とセンスが必須なのだ。
「ルーカスは魔法、何種類使えるの?」
「……全部使える。オリジナルもいくつか作ったし。」
フッとバカにする様に鼻で笑ったルーカスだったが、僕はオリジナルという言葉が気になってきになって、前のめりになってルーカスに尋ねた。
「オリジナル魔法!?す、凄いじゃないか!
それって世紀の大発見になるんじゃないの?えっ、どんな魔法なの?」
「…………。」
勢いが凄すぎたからか、ルーカスは渋い木の実でも食べた様な顔をして、ボソボソと小さい声で呟く。
「……別に大した事ないけど。空を飛んだり、雲でゴーレム作ったり……。」
「えっ!!何それ!凄い!!」
<ゴーレム>
通常は土魔法を使って作り出す人造人間型の魔法人形の事
めちゃくちゃ大した事ある内容に、フンフンッ!と鼻息荒く喜んだが、ルーカスからの反応はそっけないモノだった。
「だから凄くなんてないってば。アンタができなさ過ぎなの。もうちょっと努力したら?
そもそもどうしてそんな恵まれてる環境にいるのに、そんなにできないわけ?
本当に無駄だね、全部。」
ルーカスは乱暴に立ち上がると、僕が渡したノートを持って、最後にもう一度大きなため息をつく。
「アンタの役目なんてノートを持ってくるくらいしかないんだから、黙って持ってくるだけでいいよ。話しかけたりしなくていいから。────喋りたくないし。」
不愉快全開な様子でルーカスは部屋を出ていってしまい、ポツンとその場に残される僕。
いつもの事とはいえ、嫌な思いをさせてしまい申し訳なかったなと思ったが、それよりも足取りが少しだけふらふらしているのが気になって心配になった。
「ルーカス、今日は歩く姿に元気がないなぁ……どうしたんだろう?」
最近季節は冬へと近づき、肌寒くなってきた頃。
もしかして具合でも悪いんじゃ……?
そんな心配をしてしまったが、なんとこれは的中してしまう。
◇◇
「あれ……?」
学院から帰宅後の座学の授業、その用意をして家庭教師がいる部屋へと向かったのだが、いつも部屋の外で待っているはずのルーカスがいなかった。
「……?中で待ってるのかな?」
ありえないとは思ったが、そう考えて部屋の中に入ったが、ルーカスはいない。
「あ、あの~……ルーカスを見ませんでしたか?」
「グレイ様、本日は昨日の続きからにしましょうか。課題に出した分は全て覚えてきましたか?」
家庭教師の先生は、いつも通りルーカスの事は完全無視して授業を進めようとする。
とりあえず気にはなったが、後で教えるためにも頑張ろうと決めて座学の授業を受けることに。
もしかして遅刻しているだけかもしれないし……。
そう考えて待っていたが、結局その後の実技の授業もルーカスは姿を現さなかった。
「?どうしたんだろう、ルーカス……。」
気になりつつも全ての授業を終え、更に遠征で出かけている父と自分の実家に帰っている母抜きの一人の夕食を終えると、とうとう我慢できずに執事のリアンに尋ねる。
「リアン、今日、ルーカスを見かけた?」
「……いえ。見かけておりませんね。」
リアンは執事という立場上、当主が認めないルーカスに近づく事はしないが、だからといって他の使用人達の様に、攻撃的な態度はしない人だ。
リアンも見ていないという答えを聞き、僕はう~ん……と腕を組んで昨日のルーカスの様子について考える。
いつもは怒ってドスドス荒い足取りで去っていくルーカス。
昨日は足取りもおぼつかなかったし、もしかして……。
「具合が悪いのかも……。昨日少し様子がおかしかったんだよ。」
「左様でございますか……。最近寒くなってまいりましたので、その可能性が高いかもしれませんね。」
ルーカスが倒れている姿を思い浮かべ、ヒヤッ!と背筋が凍りついた気がして体を震わせる。
「大変だ!リアン、ルーカスの部屋はどこか知ってる?僕、少し様子を見てくるよ。」
「…………。」
リアンは少し複雑そうな顔をして、僕をじっと見下ろすと、言いづらそうな様子で言った。
「グレイ様は……ルーカス様に対し、何か思う所はないのですか?」
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とても抽象的な質問に、僕が考え込むと、リアンはつらつらと話を続ける。
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