14 / 39
13 貰えたモノ
しおりを挟む
(ルーカス)
「…………カス、しっ…………して。ル……ス…………ーカス……。」
「うぅぅ~……ルー………………ルー…………カ……しっか……~……。」
ペタペタと顔や体に温かいモノが触れる感触と、自分の名前を呼ぶ声。
それが夢現の中でずっと聴こえていて……ふわふわする様な幸せな気分の中、意識を取り戻す。
誰……?
夢に出てきたのは、一度として抱きしめられた事がない『母親』という存在の手で……それに撫でられ、やっと欲しかったモノが手に入ったと思った。
でも……その手がどんどんと小さくなっていき、色白で綺麗だったその手は、豆ができた綺麗とは言い難い手に変わる。
この手……誰かの手に似ているな。
できないのに努力して努力して、ボロボロになってしまった手。
俺はこの手をよく知っている。
「……カス……死なないで……僕を一人に……ないで……ルーカス……。」
声は次第にハッキリしていき、その正体を俺に伝えてきた。
…………あぁ、これは兄の…………。
ハッ!と気がつくと、俺の額には濡れたタオルが乗せられていて、手は先程夢にでてきた豆だらけの手に握られている。
そしてその繋がれた手を辿っていくと、そこには俺の横たわるベッドの横に座って、顔を伏せている人物がいた。
俺の兄、グレイだ。
「…………に……さん……?」
ポツリと呟くと兄は勢いよく顔を上げた────……が、その顔は普段の兄の顔とは全然違ったので大きく目を見開いた。
真っ赤に腫れ上がった両目に、頬にはくっきり残っている涙の跡。
目は新たに流れ落ちそうな水滴のせいでゆらゆらと揺れていて、鼻からは沢山の鼻水も出ている。
髪はボサボサ、隈も酷い。
正直こんなに不細工な顔を初めて見たというくらい酷いモノだった。
「に…………。」
「る……る”ーがずぅ”ぅ”ぅ”~……っ!!目が覚めで、よ、よ”がっだぁぁぁぁぁぁ!!」
『兄さん』と言う前に、兄の目からはボロボロと大量の涙が流れ落ち、布団を汚していく。
それを普段だったら汚くて嫌だと思ったかもしれないが、このときの俺はそんな事を感じる間もなく、衝撃に体を震わせていた。
なんでここに兄がいるのか?とか、どういった経緯でこうなったのか?とか……普段だったら瞬時に考え、兄について非難めいた言葉を吐き捨てるだろうが、それもできなかった。
「…………っ…………。」
言葉に詰まる俺に、兄はすがりつく様に俺に抱きつくと、そのままワンワンと大声で泣き出した。
「る”ーがずが死ななくてよがっだよぉぉぉぉ~!!魘されて全然目を覚まさないだら”ぁぁ!死んじゃったのかと思ったぁぁぁぁぁ!!」
「…………。」
ぐしゅぐしゅと鼻を啜る音が抱きつかれた胸元から聞こえ、水がしみる感触がしたから、多分俺の服は、涙と鼻水で凄い事になっているはずだ。
しかし、そんな事はどうでもいいくらい、俺は自分に襲い来る衝撃でいっぱいいっぱいで……全く気にする余裕はなかった。
俺が死ななくて良かった。
死ぬかもしれないと思った。
それが悲しくて悲しくて兄は泣いているのだ。
「……俺が……死ななくて……良かった……の?」
ひりつく喉でそう尋ねると、兄は迷わずコクリと頷きそのまままたワンワン無き続ける。
兄の涙は服に染み込み、更にその下にある俺の心臓へと流れ込んできた気がして、それに気づくと胸がズキズキと痛みだした。
そして心臓が大きく鼓動し始めると、体中に痺れる様な感覚が走っていく。
これは『喜び』だ。
しかも、今まで感じた事ないくらい大きな大きなモノ。
「────……~……っ………っ!!」
気がつけば俺の目からもボロボロと涙が溢れていて……慌てて目元を拭ったが、全然止まらない!
更に「……ヒッ……ヒッ……っ。」と喉がひっくり変える音まで口からは漏れてしまい、そこで初めて自分が泣いているんだと言うことに気づいた。
「……な……っだよ……なんなんだよ……っ……クソッ……っ!」
次から次へと流れていく涙を拭いながら、口からは悪態の言葉が出るが……心の中から、蛇口を失った水の様に幸せが溢れては、乾いていた体を潤していく。
ずっとずっと欲しかったモノ。
それはあんなにも憎んでいた兄がアッサリとくれた。
「ルーカス、苦しいの……?」
俺が泣いているのに気づいた兄は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を上げて、俺の頭を撫でる。
そこからも溢れんばかりの『愛情』を感じて……更に涙は怒涛の如く目から流れていった。
やっと。
やっと貰えた。
俺のずっとずっと欲しかった『無償の愛』は、この汚い世界で懸命に生きる可哀想な兄が持っていたのだ。
「……っ………ありがとう……………兄さ……あり……が……う。」
何度も何度も馬鹿みたいにお礼を言って、全てに満たされた心地よい感覚の中……俺はそのままもう一度眠りにつく。
今度は母親の姿など浮かびもせず、兄さんの姿だけがはっきりと浮かんだままで。
「…………カス、しっ…………して。ル……ス…………ーカス……。」
「うぅぅ~……ルー………………ルー…………カ……しっか……~……。」
ペタペタと顔や体に温かいモノが触れる感触と、自分の名前を呼ぶ声。
それが夢現の中でずっと聴こえていて……ふわふわする様な幸せな気分の中、意識を取り戻す。
誰……?
夢に出てきたのは、一度として抱きしめられた事がない『母親』という存在の手で……それに撫でられ、やっと欲しかったモノが手に入ったと思った。
でも……その手がどんどんと小さくなっていき、色白で綺麗だったその手は、豆ができた綺麗とは言い難い手に変わる。
この手……誰かの手に似ているな。
できないのに努力して努力して、ボロボロになってしまった手。
俺はこの手をよく知っている。
「……カス……死なないで……僕を一人に……ないで……ルーカス……。」
声は次第にハッキリしていき、その正体を俺に伝えてきた。
…………あぁ、これは兄の…………。
ハッ!と気がつくと、俺の額には濡れたタオルが乗せられていて、手は先程夢にでてきた豆だらけの手に握られている。
そしてその繋がれた手を辿っていくと、そこには俺の横たわるベッドの横に座って、顔を伏せている人物がいた。
俺の兄、グレイだ。
「…………に……さん……?」
ポツリと呟くと兄は勢いよく顔を上げた────……が、その顔は普段の兄の顔とは全然違ったので大きく目を見開いた。
真っ赤に腫れ上がった両目に、頬にはくっきり残っている涙の跡。
目は新たに流れ落ちそうな水滴のせいでゆらゆらと揺れていて、鼻からは沢山の鼻水も出ている。
髪はボサボサ、隈も酷い。
正直こんなに不細工な顔を初めて見たというくらい酷いモノだった。
「に…………。」
「る……る”ーがずぅ”ぅ”ぅ”~……っ!!目が覚めで、よ、よ”がっだぁぁぁぁぁぁ!!」
『兄さん』と言う前に、兄の目からはボロボロと大量の涙が流れ落ち、布団を汚していく。
それを普段だったら汚くて嫌だと思ったかもしれないが、このときの俺はそんな事を感じる間もなく、衝撃に体を震わせていた。
なんでここに兄がいるのか?とか、どういった経緯でこうなったのか?とか……普段だったら瞬時に考え、兄について非難めいた言葉を吐き捨てるだろうが、それもできなかった。
「…………っ…………。」
言葉に詰まる俺に、兄はすがりつく様に俺に抱きつくと、そのままワンワンと大声で泣き出した。
「る”ーがずが死ななくてよがっだよぉぉぉぉ~!!魘されて全然目を覚まさないだら”ぁぁ!死んじゃったのかと思ったぁぁぁぁぁ!!」
「…………。」
ぐしゅぐしゅと鼻を啜る音が抱きつかれた胸元から聞こえ、水がしみる感触がしたから、多分俺の服は、涙と鼻水で凄い事になっているはずだ。
しかし、そんな事はどうでもいいくらい、俺は自分に襲い来る衝撃でいっぱいいっぱいで……全く気にする余裕はなかった。
俺が死ななくて良かった。
死ぬかもしれないと思った。
それが悲しくて悲しくて兄は泣いているのだ。
「……俺が……死ななくて……良かった……の?」
ひりつく喉でそう尋ねると、兄は迷わずコクリと頷きそのまままたワンワン無き続ける。
兄の涙は服に染み込み、更にその下にある俺の心臓へと流れ込んできた気がして、それに気づくと胸がズキズキと痛みだした。
そして心臓が大きく鼓動し始めると、体中に痺れる様な感覚が走っていく。
これは『喜び』だ。
しかも、今まで感じた事ないくらい大きな大きなモノ。
「────……~……っ………っ!!」
気がつけば俺の目からもボロボロと涙が溢れていて……慌てて目元を拭ったが、全然止まらない!
更に「……ヒッ……ヒッ……っ。」と喉がひっくり変える音まで口からは漏れてしまい、そこで初めて自分が泣いているんだと言うことに気づいた。
「……な……っだよ……なんなんだよ……っ……クソッ……っ!」
次から次へと流れていく涙を拭いながら、口からは悪態の言葉が出るが……心の中から、蛇口を失った水の様に幸せが溢れては、乾いていた体を潤していく。
ずっとずっと欲しかったモノ。
それはあんなにも憎んでいた兄がアッサリとくれた。
「ルーカス、苦しいの……?」
俺が泣いているのに気づいた兄は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を上げて、俺の頭を撫でる。
そこからも溢れんばかりの『愛情』を感じて……更に涙は怒涛の如く目から流れていった。
やっと。
やっと貰えた。
俺のずっとずっと欲しかった『無償の愛』は、この汚い世界で懸命に生きる可哀想な兄が持っていたのだ。
「……っ………ありがとう……………兄さ……あり……が……う。」
何度も何度も馬鹿みたいにお礼を言って、全てに満たされた心地よい感覚の中……俺はそのままもう一度眠りにつく。
今度は母親の姿など浮かびもせず、兄さんの姿だけがはっきりと浮かんだままで。
342
あなたにおすすめの小説
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます
クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。
『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。
何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。
BLでヤンデレものです。
第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします!
週一 更新予定
ときどきプラスで更新します!
悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する
ユッキー
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。
そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
初めましてです。お手柔らかにお願いします。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しております
泥酔している間に愛人契約されていたんだが
暮田呉子
BL
泥酔していた夜、目を覚ましたら――【愛人契約書】にサインしていた。
黒髪の青年公爵レナード・フォン・ディアセント。
かつて嫡外子として疎まれ、戦場に送られた彼は、己の命を救った傭兵グレイを「女避けの盾」として雇う。
だが、片腕を失ったその男こそ、レナードの心を動かした唯一の存在だった。
元部下の冷徹な公爵と、酒に溺れる片腕の傭兵。
交わした契約の中で、二人の距離は少しずつ近づいていくが――。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
BLゲームの主人公に憑依した弟×悪役令息兄
笹井凩
BL
「BLゲーの主人公に憑依したら、悪役令息の兄が不器用すぎてメロかった」……になる予定の第一話のようなものです。
復讐不向きな主人公×ツンツンクーデレな兄ちゃん
彼氏に遊ばれまくってきた主人公が彼氏の遊び相手に殺され、転生後、今度こそ性格が終わっている男共を粛清してやろうとするのに、情が湧いてなかなか上手くいかない。
そんな中、ゲームキャラで一番嫌いであったはずのゲスい悪役令息、今生では兄に当たる男ファルトの本性を知って愛情が芽生えてしまい——。
となるアレです。性癖。
何より、対人関係に恵まれなかったせいで歪んだ愛情を求め、与えてしまう二人が非常に好きなんですよね。
本当は義理の兄弟とかにしたほうが倫理観からすると良いのでしょうが、本能には抗えませんでした。
今日までの短編公募に間に合わなかったため供養。
プロットはあるので、ご好評でしたら続きも載せたいなと思っております。
性癖の近しい方に刺されば、非常に嬉しいです。
いいね、ご感想大変励みになります。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる