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14 家族愛
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コーヒー豆の様に目を大きく腫らしながら、眠ってしまったルーカスの汗を拭く。
ルーカスはよほど苦しかったのか、突然目覚めたと思ったら大号泣して、また気絶する様に眠ってしまった。
「また冷たい水を持ってこないと……。」
何度も何度も近くにある井戸へ水を汲みに行っては、冷たい水でおでこを冷やし、熱が下がるのを待つ。
井戸から水を汲み上げる際、寒くてアカギレを起こしてしまった手が痛くて仕方なかったが、それでも我慢して必死に紐を引っ張った。
ルーカスが死んじゃうのは嫌だ。
ルーカスが苦しいのは嫌だ。
ルーカスルーカスルーカス……。
頭の中はルーカスの事で一杯で、とにかく必死に看病をし続けると、三日目の朝にやっと熱が下がったのだ!
「よ、よかったぁぁぁ~……!」
そこでまたワッ!と泣いてしまったが、ルーカスを起こさない様に慌てて口を閉じた。
これでもう大丈夫そうだ。
だからそろそろ僕は自分の部屋に帰らないと……。
目が覚めて近くに僕がいたら嫌だろうしね!
僕はすぅすぅと大人しく眠っているルーカスの頭を撫でると、部屋の中に散らばっている持ってきた私物を片付ける。
そして部屋の中を綺麗に掃除すると、そのまま部屋をそ~っと出ていった。
時間はまだ日の出前。
とりあえず見つからない様にソッと自分の部屋に帰り、部屋の中の鏡を覗きこむと……そこには目が大きく腫れた、髪の毛がボサボサの汚らしい少年が映っている。
「わっ!ど、どうしよう……。凄く汚いぞ!僕!」
まるで鳥の巣の様になっている自分の髪を撫で付けていると、コンコン……と自分の部屋のドアが叩かれた音がした。
「は、は~い!」
慌てて返事をすると、「失礼します。」と言って入ってきたのは、リアンだった。
「リアン!」
「おはようございます、グレイ様。ルーカス様は如何でしたか?」
リアムの手には水の入った桶と、腕には綺麗なタオルが掛けてある。
どうやら僕のために持ってきてくれた様だ。
「ルーカスはもう大丈夫。熱が下がったから。リアムのお陰だよ、ありがとう。」
「……いえ、私は何も。」
リアムはなんだか悲しそうな顔で微笑みテーブルに桶を置くと、タオルを水で浸して僕の顔を拭いてくれる。
どんどん汚くなっていくタオルに申し訳なさを感じていると、リアムはつらつらと僕が看病していた3日間の様子を説明してくれた。
「とりあえず体調を崩したとの事で、家庭教師には休んで頂きました。
ライゼル様とプレーン様にもお伝えし許可を頂きましたが、そのまま少し観光を楽しんでから帰ると……。」
「そっか。」
父様と母様は元々外出が大好きで、いつも仕事帰りはどこかに寄ってゆっくりしてくる事が多い。
だから特に気にする事なく返事を返すと、沈黙が下りる。
リアムの反応からも、きっとコレは、あまりよくない形の家族なのだと思う。
だけど、僕はコレしかその形を知らないから、正直何が悪いのかも分からないのだ。
でも────……。
「ルーカスが良くなって僕は凄く嬉しんだ。これって『家族愛』かな?」
ワクワクしながら尋ねると、リアムはとても驚いた顔をした後、微笑んだ。
「そうですね。相手が良い状態になって嬉しいのは……きっと『愛』と言えるでしょう。
ルーカス様相手なら『家族愛』で間違いないかと……。」
「や、やっぱり!」
僕はまた初めて貰った痺れる様な幸せな気持ちを抱いて、感動に叫ぶ。
絶対に貰えないと思っていた『家族愛』!
それを僕はなんと手に入れてしまったらしい!
「でも、なんだか嬉しいばかりじゃないんだね、愛って。
家族が死んじゃうと思うと凄く悲しくて悲しくて……苦しかった。」
「……そうでしょうね。中には狂って愛する人を殺す事を望む愛もありますから。」
リアンの話を聞いて「ヒェッ!」と悲鳴をあげてしまったのは、仕方ない。
世の中にはなんて恐ろしい愛があるんだろう!
その両極端な多様性にふるえていると、リアンは胸元からクシを取り出し、僕の髪を優しく梳いてくれる。
「グレイ様は、今まで沢山頑張りましたから、きっとこれからも沢山のモノを手に入れる事ができますよ。
私はグレイ様の様な強さがある方が、最後は望むモノ全てを手に入れる事ができると思います。
どうかこれからもその強さを失わずに頑張って下さいね。」
「強い?僕、剣も魔法も駄目駄目なんだけどな……。
でも、とりあえずは頑張り続けるよ。目指せ!人並み!」
僕が『えいえいお~!』と拳を上に上げて気合を入れると、リアムは嬉しそうに笑っていた。
その後は、流石に疲れたのでその日は1日お休みにしてもらい、次の日から学院と家庭教師の勉強を再開してもらう事に。
だから1日フリーになった僕は、ルーカスの食事事情を聞くため厨房へと足を運んだ。
3日間看病した時、一度食事がポンッ!と外に置かれたので、直ぐに見に行くと、随分と少ない上に泥までついていたので気になったのだ。
そのため、去っていこうとする調理見習いらしき男の人達に声を掛けると、まさか僕がここにいたとは知らなかった様で、ギョッ!と目を見開いて平謝りしだした。
『まさかグレイ様がこのような場所にいるとは知らず……。』
『大変もうしわけありませんでした!』
ビクビクしている二人に詳しく話を聞くと、料理長がこれでいいと言っていたそう。
酷い意地悪に頭を抱えてしまったが、その次の食事からはそんな意地悪はされずに普通の食事を運んでくれる様になった。
ただ、また僕がいなくなったら元に戻るかも……と心配になったので、調理場に乗り込んだのだが、なんと事前にリアムがコッソリ動いてくれた様で、ちゃんとした食事を出してくれる事になっていたのだ。
流石はリアム!仕事ができるいい人!
ルンルンで部屋に帰った後は、3日分の勉強内容と復習、予習……と大忙しで、あっという間に1日は終わってしまった。
ルーカスはよほど苦しかったのか、突然目覚めたと思ったら大号泣して、また気絶する様に眠ってしまった。
「また冷たい水を持ってこないと……。」
何度も何度も近くにある井戸へ水を汲みに行っては、冷たい水でおでこを冷やし、熱が下がるのを待つ。
井戸から水を汲み上げる際、寒くてアカギレを起こしてしまった手が痛くて仕方なかったが、それでも我慢して必死に紐を引っ張った。
ルーカスが死んじゃうのは嫌だ。
ルーカスが苦しいのは嫌だ。
ルーカスルーカスルーカス……。
頭の中はルーカスの事で一杯で、とにかく必死に看病をし続けると、三日目の朝にやっと熱が下がったのだ!
「よ、よかったぁぁぁ~……!」
そこでまたワッ!と泣いてしまったが、ルーカスを起こさない様に慌てて口を閉じた。
これでもう大丈夫そうだ。
だからそろそろ僕は自分の部屋に帰らないと……。
目が覚めて近くに僕がいたら嫌だろうしね!
僕はすぅすぅと大人しく眠っているルーカスの頭を撫でると、部屋の中に散らばっている持ってきた私物を片付ける。
そして部屋の中を綺麗に掃除すると、そのまま部屋をそ~っと出ていった。
時間はまだ日の出前。
とりあえず見つからない様にソッと自分の部屋に帰り、部屋の中の鏡を覗きこむと……そこには目が大きく腫れた、髪の毛がボサボサの汚らしい少年が映っている。
「わっ!ど、どうしよう……。凄く汚いぞ!僕!」
まるで鳥の巣の様になっている自分の髪を撫で付けていると、コンコン……と自分の部屋のドアが叩かれた音がした。
「は、は~い!」
慌てて返事をすると、「失礼します。」と言って入ってきたのは、リアンだった。
「リアン!」
「おはようございます、グレイ様。ルーカス様は如何でしたか?」
リアムの手には水の入った桶と、腕には綺麗なタオルが掛けてある。
どうやら僕のために持ってきてくれた様だ。
「ルーカスはもう大丈夫。熱が下がったから。リアムのお陰だよ、ありがとう。」
「……いえ、私は何も。」
リアムはなんだか悲しそうな顔で微笑みテーブルに桶を置くと、タオルを水で浸して僕の顔を拭いてくれる。
どんどん汚くなっていくタオルに申し訳なさを感じていると、リアムはつらつらと僕が看病していた3日間の様子を説明してくれた。
「とりあえず体調を崩したとの事で、家庭教師には休んで頂きました。
ライゼル様とプレーン様にもお伝えし許可を頂きましたが、そのまま少し観光を楽しんでから帰ると……。」
「そっか。」
父様と母様は元々外出が大好きで、いつも仕事帰りはどこかに寄ってゆっくりしてくる事が多い。
だから特に気にする事なく返事を返すと、沈黙が下りる。
リアムの反応からも、きっとコレは、あまりよくない形の家族なのだと思う。
だけど、僕はコレしかその形を知らないから、正直何が悪いのかも分からないのだ。
でも────……。
「ルーカスが良くなって僕は凄く嬉しんだ。これって『家族愛』かな?」
ワクワクしながら尋ねると、リアムはとても驚いた顔をした後、微笑んだ。
「そうですね。相手が良い状態になって嬉しいのは……きっと『愛』と言えるでしょう。
ルーカス様相手なら『家族愛』で間違いないかと……。」
「や、やっぱり!」
僕はまた初めて貰った痺れる様な幸せな気持ちを抱いて、感動に叫ぶ。
絶対に貰えないと思っていた『家族愛』!
それを僕はなんと手に入れてしまったらしい!
「でも、なんだか嬉しいばかりじゃないんだね、愛って。
家族が死んじゃうと思うと凄く悲しくて悲しくて……苦しかった。」
「……そうでしょうね。中には狂って愛する人を殺す事を望む愛もありますから。」
リアンの話を聞いて「ヒェッ!」と悲鳴をあげてしまったのは、仕方ない。
世の中にはなんて恐ろしい愛があるんだろう!
その両極端な多様性にふるえていると、リアンは胸元からクシを取り出し、僕の髪を優しく梳いてくれる。
「グレイ様は、今まで沢山頑張りましたから、きっとこれからも沢山のモノを手に入れる事ができますよ。
私はグレイ様の様な強さがある方が、最後は望むモノ全てを手に入れる事ができると思います。
どうかこれからもその強さを失わずに頑張って下さいね。」
「強い?僕、剣も魔法も駄目駄目なんだけどな……。
でも、とりあえずは頑張り続けるよ。目指せ!人並み!」
僕が『えいえいお~!』と拳を上に上げて気合を入れると、リアムは嬉しそうに笑っていた。
その後は、流石に疲れたのでその日は1日お休みにしてもらい、次の日から学院と家庭教師の勉強を再開してもらう事に。
だから1日フリーになった僕は、ルーカスの食事事情を聞くため厨房へと足を運んだ。
3日間看病した時、一度食事がポンッ!と外に置かれたので、直ぐに見に行くと、随分と少ない上に泥までついていたので気になったのだ。
そのため、去っていこうとする調理見習いらしき男の人達に声を掛けると、まさか僕がここにいたとは知らなかった様で、ギョッ!と目を見開いて平謝りしだした。
『まさかグレイ様がこのような場所にいるとは知らず……。』
『大変もうしわけありませんでした!』
ビクビクしている二人に詳しく話を聞くと、料理長がこれでいいと言っていたそう。
酷い意地悪に頭を抱えてしまったが、その次の食事からはそんな意地悪はされずに普通の食事を運んでくれる様になった。
ただ、また僕がいなくなったら元に戻るかも……と心配になったので、調理場に乗り込んだのだが、なんと事前にリアムがコッソリ動いてくれた様で、ちゃんとした食事を出してくれる事になっていたのだ。
流石はリアム!仕事ができるいい人!
ルンルンで部屋に帰った後は、3日分の勉強内容と復習、予習……と大忙しで、あっという間に1日は終わってしまった。
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