【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん

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15 ルーカスの変化

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◇◇
「ルーカス、今日はちゃんと勉強参加できるかな?」

次の日の朝、父様と母様が帰宅したが僕になんの言葉も掛けないまま自室へと消えていったので、一人で朝ごはんを食べて学院へと向かう。
するとそこにはいつもと変わらぬ授業風景と周りの態度があって、何も変わらない世界を過ごし、帰りの馬車で帰宅した。

これから座学の授業があり、いつもだったらルーカスがそこに来る。
それを考えると、なんとも嬉しくてウキウキしてしまい、自然と足はスキップに。
鼻歌まで歌いながら座学の部屋へと向かった。

ルーカスに教える分の復習と予習は終わっているぞ!楽しみだな~。

手にはルーカス用に書いたノートがあり、それを大事に抱えたまま、部屋についたその瞬間────……。

「────えっ!?」

そこに見知らぬ人物が立っていて、僕は驚いてノートを落としてしまった。

陶器の様な白い肌に、スッと通った高い鼻。
花弁の様な小さ目の唇に、大きくてパッチリとした目には長いまつ毛がこれでもかと生えていて、そんな一つでも自慢できるパーツが、それぞれ完璧な位置に配置されている。
そんなとんでもない美少年が何故か屋敷内にいる事と、そのまるで人間じゃない様な美しさに驚かされたのだ。
こんなにも綺麗な人間を見たことがなかった僕は、そのままボヤッ~とその美しさに魅入られた。

お人形さんみたいだ……いや、それより綺麗かもしれない。

髪はキラキラ輝く金色の髪で、瞳は晴れ上がった空の色。
それもとても綺麗で、思わず僕は「うわぁ……。」と声が漏れてしまった。

なんて綺麗な男の子なんだろう。
一体どちらさま??

正体不明の絶世の美少年は、僕が近づいてきたのに気づくと、目をキラキラと星のように輝かせ、幸せで幸せで仕方ない!といわんばかりの笑顔を見せた。

「兄さん、やっと会えた。」

「────へっ??に、兄さん……??」

何を言っているのかとポカンとしていると、美少年は自分の前髪をいじりながら、頬を赤らめる。

「前髪切ったんだ。そうしたら、視界が凄くクリアになったよ。
こんなにも世界はキラキラ輝いているんだね。今まで知らなかった。」

ルーカスはまた本当に嬉しそうに微笑み、足を止めていた僕に近づいてきた。
そして目の前で止まると、とんでもない美の結晶がこれでもかと目に映る。

「ま、まさか……君はルーカスなの?」

「そうだよ。昨日髪を切っちゃったから、少し変わっちゃったかな?あと、髪も肌もしっかり洗ったら元の色になったみたい。洗った水は真っ黒だったよ。」

ルーカスの髪は灰色に近くて肌もやや色黒だったのだが、それはどうやらキチンと洗っていなかったからだった様だ。

てっきりそれが地の色だと思っていたので、まさかこんな色白で鮮やかな金色の髪をしてるとは思わなかった!

驚いて言葉もない僕の前で、何故かルーカスはうっとりとした顔で見つめてきて……いつもと態度が全然違う事に驚き、即座に僕はルーカスのおでこを触る。

「……なんだかルーカス少しぼんやりしているけど、まだ熱が……?
それに世界が輝いて見えるのは、全部前髪で視界が邪魔されていたからだよ。
よく見える様になって良かったね。」

ルーカスの長い前髪は、ルーカスの本来持っていた美を隠し、更に視界の殆どを隠していたらしい。

それがなくなったから、ルーカスはご機嫌!
熱がない事を確信した今、それは間違いない。

ルーカスが嬉しいなら僕も嬉しい。

ニコニコしながらおでこから手を離すと、ルーカスはまるで繊細なガラスを触る様に、僕の両手を握った。

「……兄さん、今まで沢山酷い事を言ってごめん。これからは絶対にそんな事を言わないからどうか赦して欲しい。」

「えっ?ひ、酷い事……?」

ルーカスが謝ってくるなんて!……でも酷い事って??

衝撃と疑問に驚いている僕の前で、ルーカスは僕の手を握ったまま跪き、まるで神様相手に祈る様に僕の手に自分のおでこをつける。

「俺のこれからの『生』は全て兄さんのモノだ。
兄さんが望む事は俺が全て叶えてみせるから。だから俺をこれからずっと側に置いて。お願い。」

「????」

ちょっと……いや、だいぶ様子がおかしいルーカスが僕はとても心配になった。
そのため慌てて自分もその場でしゃがみ込み、繋がれているルーカスの手をギュッと握る。

「ルーカス、ホントにどうしたの?もしかしてまだ夢の中……。」

「夢……?そうだね、夢の様だ。兄さんのお陰だね、ありがとう。」

ルーカスは見惚れるような笑みを浮かべると、そのまま僕の手を撫で回した。

ルーカスは寝ぼけている!

「そ、そっか。まだ病み上がりだから、無理しないでね。
とりあえず僕、ルーカスがお休みしている間のノートを作ってきたから、先生が来るまで少しお勉強しよう。そしたら目が覚めると思うから。」

「?そう。分かった。」

ルーカスはご機嫌のまま立ち上がり、僕の手を引っ張って立たせてくれた。
そして部屋の中に入ると、まるでエスコートするジェントルマンの様に僕が座る椅子を引く。

「…………?あ、ありがとう??」

それにお礼を告げてとりあえず座ると、ルーカスは隣に立ったまま僕のノートを開くと、そのまま一つ一つ間違っている所を直しながら丁寧に説明を始めた。

「????」

いつもと全然違う態度に驚いたが、ルーカスの話はとても分かりやすく、直ぐに僕はそれに必死についていく。

「ここの魔法陣はこっちの文字と相性がいいから、次からはこっちにした方がいい。
それにこっちの魔法陣はもう少し威力を上げたいならこっちだよ。」

「な、なるほど……。」

目からウロコな考え方に、ルーカスへの尊敬度は急上昇だ。
教えるはずが教えているという恥ずかしい状況も忘れて「ありがとう。」と言うと、ルーカスはまた嬉しそうに笑った。

「兄さんが嬉しいなら何でも教えるよ。でも……もうこんな勉強しなくてもいいと思うけど……。」

「えっ!駄目だよ。僕は人の100倍はやらないとできないんだから。」

過大評価されている事に青ざめて即座に否定すると、ルーカスは「そういう意味じゃないんだけどな。」と言ってクスクス笑う。

ルーカスの笑顔が沢山見れて嬉しい。
でもやっぱり様子がおかしくて心配だ……。

複雑な想いを抱いて悩んでいると、ドアをノックする音が聞こえて先生が入ってきた。
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