【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん

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16 幸せになれるから待っててね

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先生の顔はツンッ!としていて、いつも通りルーカスを完全無視して授業を始め────……ようとしたが、ルーカスに視線が向いた瞬間、手に持っていた教科書を全て落としてしまう。

「……えっ……?……は?」

そしてルーカスの顔を凝視しているので、どうやらルーカスの変貌に驚いている様だ。
なんだかそれに対して誇らしげな気分になった。

ルーカスは、実はとってもカッコいい顔をしていたんだ!
それに頭もいいし剣も魔法も凄いんだぞ!

えっへん!と心の中で弟自慢!
それくらい許してほしい。
ね~?と、勝手に同意を得ようとルーカスの方を見上げると……そこは完全な無表情、無感情なルーカスの顔があった。

あれ?!いつものルーカスに戻っちゃった!

ボーナスタイム的なモノは終わりか……と残念に思っていると、ルーカスは視線を先生から僕に戻す。
するとまた見惚れるような笑顔を見せてくれて、その変貌にちょっと驚いた。

「ルーカス……?あ、あのさ……。」

「兄さんが望むならこんな授業でも大人しく受けるよ。
────ねぇ、そんな所で突っ立ってないで早く授業を始めてくれない?兄さんが待ってる。」

「────っ!??」

またガラリと無表情に変わったルーカスは、呆然としている先生に高圧的に言い放つと、先生は息を飲む。
なんていうか、ルーカスの纏う空気が凄く変わっていて……言い表すのが難しいのだけど、『言う事をきかないと!』という気分になった。

「も、申し訳ありません。授業を開始致します……。」

先生も同じ様に気持になったのか、普段なら完全無視しているルーカスに謝り、直ぐに授業を始めてくれたが……僕はルーカスの変化が気になってイマイチ集中できなかった。

◇◇
それからルーカスは、今までの大人しい雰囲気から一転し、どこに行っても使用人達の目を惹く存在へとなった。
それと同時に、少しづつ周りも変化していく。

ルーカスが屋敷内を歩けば誰もが振り返り、視界から消えるまで視線は釘付け。
そして歩く先に誰かいれば、必ず道を開ける……それに驚くのは僕だけで、ルーカスも周りも当然であるかの様に振る舞っていた。

「なんだか不思議だね。」

思わずポツリと呟くと、ルーカスはうっすら笑みを浮かべたまま鼻を鳴らす。

「そんな事ないよ。人間は本来こういうモノだから。
能力の低い人間程、必死に下を探して自分を上に置こうと奮闘する。
そうじゃないと幸せにはなれないんだ。可哀想にね。」

ルーカスは同じ歳とは思えない程、沢山の事を知っている様で、それは日々の知識が増えていく度、凄まじいスピードで成長していくように見えた。
それが少し寂しく感じて思わず隣を歩くルーカスに手を伸ばすと、ルーカスはパッと笑顔を見せて僕の手を握って引き寄せる。

「だけど兄さんは特別。兄さんだけがこの世界の中で唯一綺麗なモノだ。」

「??は、はぁ……。」

ルーカスは頻繁にこんな事を言うようになっていて、それも僕はとても不思議な事だと思った。

僕は特別なモノは持ってないし、ましてや綺麗とは程遠いと思うんだけど……?

思わず廊下に掛けてある鏡のオブジェに映る自分の顔をまじまじと見つめたが、凄く馴染みのある平凡顔の少年が映っているだけだった。

う~ん……。

ニコニコしながら僕の頭に自分の頬をつけてくるルーカスだったが、前から歩いてくる人物に気づくと、ルーカスはまた無表情へと戻る。

「……アナタ……本当にルーカスなの……?」

前から歩いて来たのはプレーン母様で、母はまるで幽霊でも見たかの様に引きつった顔でルーカスを見つめた。
ルーカスはそれに対し特に何も反応せず、黙ったまま。
そんなルーカスに対して母は怒りからか、カッ!とした様だ。

「──ふんっ、流石は男を手玉に取ることがお得意な女の子供だこと。下品な顔をしていたのね。」

母は扇子を広げ口元を隠したが、クスクスという笑い声はハッキリと聞こえた。

面と向かって悪口を言われて、ルーカスは気にするだろうか……。

オロオロしながらルーカスを見ると、すごく落ち着いていて……ただペコッと頭を軽く下げただけ。
それを見た母は、ツカツカとコチラに向かってきて、扇子でルーカスの頬を叩いた。

「母様!!何を!!」

びっくりして叫んだが、僕の存在は母様の視界に入ってはいないようで、母様の目は真っ直ぐにルーカスだけを睨みつけている。

「汚れた子供がっ!せいぜいこのまま私の機嫌を損ねないよう、大人しく過ごしなさいね。」

「…………。」

叩かれても平然とした様子のルーカスを見て、母は眉をピクリと潜めたが、何か用事でもあったのか足早に行ってしまった。

「ル、ルーカス大丈夫?!ごめん……何もできなくて。」

「?どうして兄さんが謝るの?こんな事大した事ないのに。」

叩かれた頬を気遣うように撫でたが、結構強く叩かれたというのに傷どころか、赤くすらなってない。

「……?」

それが不思議でマジマジと眺めたが、ルーカスは自分の頬に触れている僕の手を包み込むように握った。
 
「怒りや憎しみ、復讐心は確かに力をくれるけど、それに未来はなかった。先にはなにもない。
だからかな?
今まで自分の奥底に眠る力に気づかなかった。
きっとこの力は、未来が見えないと気づかない力だったんだろうね。」

「??そうなんだ。ルーカスがそう言うならそうなんだろうね。」

中々抽象的な話で難しかったが、そういった目に見えないモノの話は、基本自分が納得できているなら良いことだと思っている。  
だからコクッと頷くと、ルーカスは僕の手を離して、今度は僕の頬を包み込むように触った。

「これから沢山幸せになれるよ、俺達。少しだけ待っててね。もう大丈夫だから。」

「??う、うん。」

やっぱりよく分からなかったが、前向きだから凄くいいなと思い、もう一度頷くと────ルーカスは幸せそうに笑った。
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