【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん

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17 鑑定日

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《七年後》

「今日はとうとう才能ギフトの鑑定日だ。分かってるな?」

「はい……。」

十五歳を迎えた僕は、才能ギフトの鑑定のために連れて行かれた教会にて、父様に念を押される。
今日で全ての運命が変わると言っても過言ではないほど、才能ギフトの鑑定はとても大事な儀式で、伯爵家の子息として相応しい才能を持つことを父と母だけではなく周りにも示さないといけない。

ゴクッ……。

緊張で喉がひりつき、唾を何度も飲み込んだ。

今年十五歳を迎えた子供の中で、本日は貴族の子息と令嬢だけが鑑定をする日。
つまり、周りには沢山の同級生達とそのご両親がいるというわけだ。
同級生達も本日は真剣そのもので、それぞれの両親に見守られながら口数は一切ない。
ただ……。

僕は皆がチラチラと視線を向ける先、そこにいる人物へと視線を向けた。

まるで芸術の様な美しく整った顔立ちは、それだけで人の目を惹き、更に平均を大きく上回っている身長、バランスよくしっかりついている筋肉に、信じられないほど高い位置にある腰……と、誰もが羨やむモノを全て持っているその人物は、僕の弟ルーカスだ。
ルーカスは、あきらかに周りとは違う異彩なオーラを放っていて、常に皆の視線を集めている。
  
ルーカスは、あれから更に美しく成長し、誰もが目を釘付けにするくらいとにかく目立つ存在へとなっていった。

ホントにカッコいいな~僕の弟は!

注目を集める我が弟が誇らしくて、いつも僕を空気のように扱ってくるクラスメイト達に向かって、こっそり胸を張る。
ルーカスは、一応規則であるため受けさせないわけにもいかず、鑑定儀式を僕の次に受けさせる予定のようで、現在は父と母の後ろの方、使用人の立ち位置で待機中だ。

ルーカス、僕は頑張るからね!

僕を優しく見つめるルーカスに、キリッ!とした表情を見せた後、自分に隠れた才能があります様にと願った。

少しでも自分の努力が実って欲しい。
それになにより……僕に凄い才能があったら、ルーカスを自由にしてあげられる。

今までルーカスが目の前で虐げられているのに、何もしてあげられなかった役立たずな自分。
それが、凄く悲しかった。

……本当に僕は駄目な兄だ。

自分への絶望感に気持ちは沈み込み、視線は下へ下へと向かっていく。

あんなに劇的な変化を遂げたルーカスと比べて、7年後の今の僕は、悲しいほどにぜ~んぜん変わってない。

平均をひた走る顔、身長、体格。
そして全体で見れば平均の座学と実技の実力は、優秀なのが当然な貴族から見ればドベクラス。
そのため学院では酷いイジメを────受ける事はなく、ひたすら眼中なしの、透明人間の様な学院生活を過ごした。
家でも一時期はルーカスを攻撃するため、やたらと父と母も他の使用人達も褒めてくれていたが、それも徐々になくなり……ここでも透明人間化している。

僕は、透明なんかじゃない自分の手のひらを見下ろし、ギュッと拳を握った。

父は何をやっても平均以上にはできない僕に対し全く興味をなくしたらしく、いつの間にか恐ろしい程無関心になり、少し前からご飯の時の報告会もなくなった。
母も同じく無関心になっていったが、反対に二人はルーカスの存在がとにかく気になる様になっていき、会えば攻撃的な言葉を吐く様になる。
しかし、ルーカスは一切反応を返さない。

なんだか不思議だな。
ルーカスの前だと、あんなにも存在感に溢れた父様と母様が透明人間になったみたいだ。

想像の中に両親とルーカスが出てくると、フッと気づけばルーカスしかいなくなる。
それだけルーカスの存在感は圧倒的だった。
その最大の原因は、きっとルーカスの高い実力にある。

僕は、父が初めてルーカスに衝突した日の事を思い出した。

◇◇
多分、使用人たちがどんどんと頭角を出していくルーカスの噂話をしていて、それが父の耳に入ったのだと思う。
10歳を越えた頃のある日、剣の実技の授業をしている時に突然やって来て、ルーカスを睨みつけた。

『ほぅ?流石は一度は抱こうと思った女が産んだ子か。外見だけは美しかったのだな。
それなら、どこぞやの貴族女性が気まぐれに貰ってくれるやもしれん。──あぁ、しかし、学も実力もなければ無理か。
せいぜい好きな時に使える玩具って所だな。』

『…………。』

『父様、それは──……。』

あんまりではないか?と言いたかったが、威圧するような鋭い目で睨まれ、息が詰まる。

『グレイ、お前は黙ってろ。お前はとにかく伯爵家として相応しい実力をつけるよう、死ぬ気で努力するんだ。分かったか?』

『……うっ……あぅ……。』

実力高き騎士団のトップである父。
そんな格上の男からのプレッシャーに僕は耐えられず、体が金縛りにあったかの様に動かなくなった。
視線の端では、家庭教師の先生まで真っ青な顔で立ち尽くしているくらいだ。
しかし────……。

『兄さん、大丈夫?』

そんな中でもルーカスは平然としていて……それが父の癇に障り、父は僕が落とした木刀を指さした。

『俺の殺気を受けて動けるとはやるじゃないか。
どれ、この俺直々に剣を教えてやるから木刀を手に取れ。
────あ、そうかそうか。剣もまともに握った事がない木偶の坊だったのを忘れていたな。
まずは素振りからだったかな?』

意地悪く失笑する父を見て、ルーカスは大きなため息をつくと、足元に落ちている木刀を拾い上げる。

『いえ、ご心配なく。授業内容は全て頭の中に入っておりますので。では、どうぞ?』

『────っ!生意気なっ!』

ルーカスの余裕たっぷりな様子に激怒した父が、なんと真剣を抜いたので、一気に青ざめた僕が『ルーカス!!』と叫んだ瞬間……。

『────はっ…………?』

『えっ……??』
                                    
瞬きする間もなく目の前に映る景色は変わっていて、僕と家庭教師の先生、そしてはポカンとした顔をした。

さっきまで父が真剣を抜いて、多分物凄い速さで剣を振った……気がするが、一瞬で今の状態に変わったのだ。
父は仰向けに倒れていて、その直ぐ横には木刀を持っているルーカスが静かに立っている。

『な……な……っ?』

ワナワナ震えている父を、ルーカスは見下ろし口元を少しだけ上げた。
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