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27 ……しますか?
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◇◇◇
「…………。」
僕は鏡に映る白いタキシードを着た自分を見つめ、白という清々しいイメージとは真逆の、薄暗い気持ちになる。
今日、僕とルーカスは結婚する。
男同士で、兄弟で……。
「……うぇっ。」
とんでもない禁忌感、背徳感に吐き気がする。
あり得ない。
あり得ないのに……。
僕は鏡に写る情けない僕の姿から視線を逸らし、周りで笑顔を貼り付けている執事や侍女たちを見た。
皆、心の奥底ではこんな事は間違っていると思っているだろうに、誰もそれを口にしない。
それどころか、これは正しい事だと本気で思っている人達までいる。
それに対して心の底から恐怖した。
「どうぞ、花嫁のベールと髪飾りです。」
侍女達がそれはそれは見事な金刺繍が施された半透明の白いベールと、パッと目を惹く白く美しい花の髪飾りを持ってきた。
「なんて素晴らしいベールと花飾りでしょう。」
「グレイ様は世界一幸せな花嫁様ですね。」
「羨ましいですわ。こんなにも愛してくれる旦那様がいらっしゃって。」
口々に褒められ、花飾りを髪の毛につけてくれる侍女たちの顔には、本当に羨ましいと思っている様に赤みが差した顔色をしていたが、それと反比例する形で僕の顔色はどんどんと悪くなっていく。
逃げ出したい。
逃げ出したい。
今直ぐこの場から逃げ出したい!
最後にベールをふんわりと掛けられた後、リアンが僕と同じ顔色のまま礼をした。
「グレイ様、お時間でございます……。」
そう告げるリアンの言葉は、とても弱々しく、色々と思う所があるだろうが何も自分の意見を言うつもりはない様だ。
でもそれに対して、僕は何も言う権利はない。
だって僕だってずっとどうすればいいか分からず流されて生きてきたから。
その結果、ここに流れ着いてしまった。いや、ルーカスを連れてきてしまったのだ。
動かずに下を向く僕を見て、控えている侍女たちは両手を持って無理やり立ち上がらせる。
ルーカスの言う事に逆らう者は赦さない。
それは罪人である。
そんな責める様な目を向けられている様で、怖くて上を向けないでいると、とうとうそのまま引きずられる様にルーカスの待つ誓いの間へと連れて行かれた。
そうして、あっという間に誓いの間の扉の前に立たされ、それが開かれた瞬間に目に飛び込んできたモノ。
それは、目を見開き僕を見るルーカスと、妄信的にこれが正しいと思っている目、気に入らないと言わんばかりの目、嫉妬の目……沢山の意味を持った人の目であった。
「あ……う……うぅ……。」
恐ろしくて言葉ない僕の元へルーカスは駆け寄ってくると、興奮した様子で僕の手を握りしめる。
「兄さん、凄く綺麗だ。
俺はこの日が楽しみで楽しみで仕方なかったよ。
今日が終われば、俺達はずっと一緒……死ぬ時も一緒だ。」
「ルーカス……違う……違うんだよ……これは……。」
ずっと言い続けている言葉を今も口にしたが、やはりいつもの様にアッサリ流され、肩を抱き寄せられた。
「さぁ、それを全世界に見せつけてやろうね。
この醜くて汚い世界の中で、兄さんだけが綺麗なモノ。愛しているよ、兄さん。」
「愛して……る?」
ルーカスは結婚すると宣言してから、毎日毎日『愛してる』と言っては、キスしようとしたり、欲望が見え隠れする触り方をしてきたが、必死にスルーしてきた。
これはおかしい事だから、どうか目を覚まして欲しい、そう願っていたが……どうやらそれは叶わないらしい。
最初から駄目だった。だからもう手遅れ。
一度歪んで形成されてしまった心は、ルーカスの『愛』に対する価値観を大きく歪めてしまったのだと思う。
生まれた環境、実の母親と父親、義理の母親、冷遇される環境、ただ空気の様に生きてきた兄……その全てがルーカスの心をぐちゃぐちゃに壊してしまったという事だ。
「う……うぅ~……っ。」
「兄さん泣く程嬉しいんだね。良かった。俺も嬉しい、幸せだよ。」
涙の理由は、自分の無力さと後悔、ルーカスを傷つけてきた全てに対してだ。
何か一つでも防げたらルーカスは、こんな事で幸せにならずにすんだのに!
そう心の中で叫んだ瞬間────……。
────ブウォン!!!
突然頭の中に聞いた事が無いような機械音?がして、ハッ!と目を開くと……何かプレートの様なモノが宙に浮いているのが見えた。
「…………???」
不思議に思い隣のルーカスや拍手をしている周りの人達を見たが、どうやらコレに気づいていないのか、無反応だ。
これは……何?
よく目を凝らして見つめると、そこにボヤ~と文字が浮かんできたので、僕はそれを視線で追った。
《『やり直し』しますか?》
やり直し……?一体何の事だろう?
わけが分からず首を傾げたが、そこで思い出したのは自分の才能の事だ。
才能ギフト……【やり直し】
もしかしてコレって……自分の人生をやり直せるって事じゃないのか?
「そんな……バカな……でも……。」
ドッキン……ドッキン……と大きな鼓動の音しか聞こえなくなって、自分の手が緊張のせいか震えていた。
あり得ない……あり得ない……。
そんなハチャメチャな能力が、こんな僕にあるわけがない。
そう思いながらも、もしかして……という希望が次から次へと湧いて出てくる。
「さぁ、兄さん。永遠の愛を誓おう。これから俺達は永遠に一緒に……。」
ルーカスの希望に満ち溢れた目と奥底に見える欲望を向けられ、抱き寄せられるその前に、ゆっくりと僕はそのプレートへ手を伸ばしていく。
ルーカスを今度こそ幸せにしたい。
それには、ルーカスが心を歪める前の……人生の【やり直し】が必要なんだ!
「────っ。」
強い決意を込めて手を伸ばし……そのプレートを強く指で押した。
(才能ギフト【やり直し】の先天スキル)
<幸せへのタイムループ>
自分ではなく他者の幸せを願う事、欲望に抗い続ける事、一定以上の”孤独”状態で人生を生きてきた事、他者に対し攻撃的思考を持たない事で発動できる様になる特殊スキル
人生のやり直したい過去に戻り、未来を変えるチャンスを得る
このスキルは何度も発動可能であり、スキル解除には術者の願い『対象他者を幸せにする』を叶えるまで使う事ができる
「…………。」
僕は鏡に映る白いタキシードを着た自分を見つめ、白という清々しいイメージとは真逆の、薄暗い気持ちになる。
今日、僕とルーカスは結婚する。
男同士で、兄弟で……。
「……うぇっ。」
とんでもない禁忌感、背徳感に吐き気がする。
あり得ない。
あり得ないのに……。
僕は鏡に写る情けない僕の姿から視線を逸らし、周りで笑顔を貼り付けている執事や侍女たちを見た。
皆、心の奥底ではこんな事は間違っていると思っているだろうに、誰もそれを口にしない。
それどころか、これは正しい事だと本気で思っている人達までいる。
それに対して心の底から恐怖した。
「どうぞ、花嫁のベールと髪飾りです。」
侍女達がそれはそれは見事な金刺繍が施された半透明の白いベールと、パッと目を惹く白く美しい花の髪飾りを持ってきた。
「なんて素晴らしいベールと花飾りでしょう。」
「グレイ様は世界一幸せな花嫁様ですね。」
「羨ましいですわ。こんなにも愛してくれる旦那様がいらっしゃって。」
口々に褒められ、花飾りを髪の毛につけてくれる侍女たちの顔には、本当に羨ましいと思っている様に赤みが差した顔色をしていたが、それと反比例する形で僕の顔色はどんどんと悪くなっていく。
逃げ出したい。
逃げ出したい。
今直ぐこの場から逃げ出したい!
最後にベールをふんわりと掛けられた後、リアンが僕と同じ顔色のまま礼をした。
「グレイ様、お時間でございます……。」
そう告げるリアンの言葉は、とても弱々しく、色々と思う所があるだろうが何も自分の意見を言うつもりはない様だ。
でもそれに対して、僕は何も言う権利はない。
だって僕だってずっとどうすればいいか分からず流されて生きてきたから。
その結果、ここに流れ着いてしまった。いや、ルーカスを連れてきてしまったのだ。
動かずに下を向く僕を見て、控えている侍女たちは両手を持って無理やり立ち上がらせる。
ルーカスの言う事に逆らう者は赦さない。
それは罪人である。
そんな責める様な目を向けられている様で、怖くて上を向けないでいると、とうとうそのまま引きずられる様にルーカスの待つ誓いの間へと連れて行かれた。
そうして、あっという間に誓いの間の扉の前に立たされ、それが開かれた瞬間に目に飛び込んできたモノ。
それは、目を見開き僕を見るルーカスと、妄信的にこれが正しいと思っている目、気に入らないと言わんばかりの目、嫉妬の目……沢山の意味を持った人の目であった。
「あ……う……うぅ……。」
恐ろしくて言葉ない僕の元へルーカスは駆け寄ってくると、興奮した様子で僕の手を握りしめる。
「兄さん、凄く綺麗だ。
俺はこの日が楽しみで楽しみで仕方なかったよ。
今日が終われば、俺達はずっと一緒……死ぬ時も一緒だ。」
「ルーカス……違う……違うんだよ……これは……。」
ずっと言い続けている言葉を今も口にしたが、やはりいつもの様にアッサリ流され、肩を抱き寄せられた。
「さぁ、それを全世界に見せつけてやろうね。
この醜くて汚い世界の中で、兄さんだけが綺麗なモノ。愛しているよ、兄さん。」
「愛して……る?」
ルーカスは結婚すると宣言してから、毎日毎日『愛してる』と言っては、キスしようとしたり、欲望が見え隠れする触り方をしてきたが、必死にスルーしてきた。
これはおかしい事だから、どうか目を覚まして欲しい、そう願っていたが……どうやらそれは叶わないらしい。
最初から駄目だった。だからもう手遅れ。
一度歪んで形成されてしまった心は、ルーカスの『愛』に対する価値観を大きく歪めてしまったのだと思う。
生まれた環境、実の母親と父親、義理の母親、冷遇される環境、ただ空気の様に生きてきた兄……その全てがルーカスの心をぐちゃぐちゃに壊してしまったという事だ。
「う……うぅ~……っ。」
「兄さん泣く程嬉しいんだね。良かった。俺も嬉しい、幸せだよ。」
涙の理由は、自分の無力さと後悔、ルーカスを傷つけてきた全てに対してだ。
何か一つでも防げたらルーカスは、こんな事で幸せにならずにすんだのに!
そう心の中で叫んだ瞬間────……。
────ブウォン!!!
突然頭の中に聞いた事が無いような機械音?がして、ハッ!と目を開くと……何かプレートの様なモノが宙に浮いているのが見えた。
「…………???」
不思議に思い隣のルーカスや拍手をしている周りの人達を見たが、どうやらコレに気づいていないのか、無反応だ。
これは……何?
よく目を凝らして見つめると、そこにボヤ~と文字が浮かんできたので、僕はそれを視線で追った。
《『やり直し』しますか?》
やり直し……?一体何の事だろう?
わけが分からず首を傾げたが、そこで思い出したのは自分の才能の事だ。
才能ギフト……【やり直し】
もしかしてコレって……自分の人生をやり直せるって事じゃないのか?
「そんな……バカな……でも……。」
ドッキン……ドッキン……と大きな鼓動の音しか聞こえなくなって、自分の手が緊張のせいか震えていた。
あり得ない……あり得ない……。
そんなハチャメチャな能力が、こんな僕にあるわけがない。
そう思いながらも、もしかして……という希望が次から次へと湧いて出てくる。
「さぁ、兄さん。永遠の愛を誓おう。これから俺達は永遠に一緒に……。」
ルーカスの希望に満ち溢れた目と奥底に見える欲望を向けられ、抱き寄せられるその前に、ゆっくりと僕はそのプレートへ手を伸ばしていく。
ルーカスを今度こそ幸せにしたい。
それには、ルーカスが心を歪める前の……人生の【やり直し】が必要なんだ!
「────っ。」
強い決意を込めて手を伸ばし……そのプレートを強く指で押した。
(才能ギフト【やり直し】の先天スキル)
<幸せへのタイムループ>
自分ではなく他者の幸せを願う事、欲望に抗い続ける事、一定以上の”孤独”状態で人生を生きてきた事、他者に対し攻撃的思考を持たない事で発動できる様になる特殊スキル
人生のやり直したい過去に戻り、未来を変えるチャンスを得る
このスキルは何度も発動可能であり、スキル解除には術者の願い『対象他者を幸せにする』を叶えるまで使う事ができる
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