【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん

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28 あの日へ

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それが指に触れた瞬間、突然周りの景色が止まり、カチッ……カチッ……という振り子時計の様な音が聞こえ始める。

「時計の音……?」

音の発生源が分からず止まってしまった景色を見回すと、なんと景色が物凄い速さで変わり……いや、戻り始めたのだ!
     
時が!?

「えっ……えっ……えぇぇぇ~……う、うぇっ!??」

グワングワンと体を回される様な重力と浮遊感が交互に襲ってくる様な……とんでもなく乗り心地が悪い乗り物に乗った様な感覚に気分を悪くしえづいた。

気持ち悪い……!

思わずギュッ!と目を瞑ると────……。

………………。


「今日からこの家に住む、お前の義理の弟の<ルーカス>だ。────と言っても、同じ歳だから、学年としては同学年になるな。」

「────っ!??」

もう懐かしく感じる父の声が聞こえ、僕は目を開けた。
するとそこには、まだ小さくてぼろぼろな姿のルーカスが下を向いて立っている。

まさか……本当に時間が戻った……?

思わずポカンと口を開けてルーカスを見つめていると、今度は母が口を開いた。

「ハァ……挨拶もまともにできないなんて、流石は売春婦が生んだ汚らしい子供ね。
一体どんな教育を受けてきたんだか……あぁ、そもそも教育自体受けた事なんてなさそうね。だって体を使うだけなら知識なんていらないですもの。」

酷く攻撃的な言葉は、ルーカスに突き刺さる。

これはルーカスと初めて会った……と全く同じだ!

「気まぐれで手を出した売春婦が、まさか子供を宿していたとはな……。まったく面倒な事になったモノだ。」

更に続けて父がルーカスを見て大きなため息をついた。

これも同じ……間違いない。
僕は本当に過去の世界に戻っているんだ!

それを確信した僕は、あの日できなかった事をするため、直ぐにルーカスを背に庇い、父と母の前に立った。

「止めて下さい……。ルーカスに酷い事を言わないで下さい!」

「────はっ?」

突然ルーカスを庇い始めた僕を見て、父と母は驚いたのか、一瞬ポカンとしたが……直ぐに怒りの表情へと変わる。

「グレイ、お前は何をやっているんだ?さっさとバカな遊びは止めろ。不愉快だ。」

「本当にアナタって子は……。そんな売春婦の子を庇うなんて、正気じゃないわ。」

「────っ。」

父と母の僕を睨む目が怖くて、体はガタガタと自然と震えた。
今まで自分の意見は口に出さずに、父と母に従って生きてきたから、逆らう事自体に大きな恐怖を感じる。
だが、ここで自分が変わらなければ、ルーカスを幸せにする事はできない!
僕は恐怖を必死に飲み込み、父と母をまっすぐ見据え大声で叫んだ。

「1番悪いのは父様じゃないですか!妻子を裏切り不貞を働いておきながら、ルーカスにその怒りをぶつけるなど、恥ずべきことだと思わないんですか!
母様も母様です!恨むべきは父様です!
どうして何もしていないルーカスが、こんなにも酷い言葉をぶつけられるのですか!」

「────なっ……!!」

僕の話を聞いた父は真っ赤になって震える。
そして血走った目からは、本気の殺気を感じ僕に対してとても怒っているのが分かった。

「グレイ!!!」

「────っ!!」

父は怒りに顔を歪めて、大声で僕の名を呼ぶと、あっと声を上げる間もなく僕を殴り飛ばしたのだ。
小さな僕の体は、騎士団長を務めている父の拳によりとてもじゃないけど踏ん張る事ができずに、大きな弧を描いて空を飛ぶ。

────ドサッ!!

そして体は床に叩きつけられ、もう全身が痛くて意識が朦朧としている中、ボンヤリと父を見上げた。

「もういい!!お前みたいな無能なクズ、ほとほと愛想がつきたわ!!
これから俺の前に姿を見せるな!!そこのクズと同じ部屋で過ごせばいい!!
プレーン、今からもう一人子供を作るぞ。
今度こそ、我が子として相応しい優秀な子をな!」

肩で息をしながら怒りを顕にする父に、母は腕を絡ませる。

「えぇ、その通りだわ。これからまた頑張るしかありませんわね。
ハァ……体型が崩れるからいやでしたのに……。」

二人の目にはダラダラと血を流し続ける僕は一切目に入らないらしい。

「…………。」

体の痛みと心の痛み。
その二つによって意識はどんどんと遠のいていく。

ルーカス……。

僕はルーカスの方へ視線を動かす事すらできずに意識を失くしてしまった。

…………。


────さ……兄……ん……。


遠い場所でルーカスが僕を呼ぶ声が聞こえる。
そのせいで意識が急速に浮上していくのを感じた。

ルーカス……?


「────兄さん。」

「ル、ルーカス……?」

ボンヤリと目を開けると、視界一杯にまだ小さいルーカスの不安そうな顔が見え、僕はどうやらルーカスに抱き起こされていることに気づく。

いきなり父に逆らうのは悪手だった。
こうなるのは少し考えれば分かる事だったのに、気持ちが焦って冷静になれなかった様だ。
これではルーカスを怖がらせただけに……。

「ごめ……ん……ルーカス……ごめんね。」

「?どうして兄さんが謝るの……?」

ボンヤリしたままただ謝り続ける僕に、ルーカスは不思議そうな顔をした────が……ルーカスの服に血が点々とついている事に気づき、意識は一気にクリアーになる。

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