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29 やり直ししますか?
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「────っ!ルーカス!服に血……っ!もしかしてルーカスも殴られ……えっ?」
自分の力で起き上がり、ルーカスの両肩を掴むと、周りの景色も自ずと視界の端に入る。
視界の色は、赤、赤、赤、赤……。
まるでペンキで塗りたくった様に部屋中が赤くて、ルーカスから視線を逸らし、周りを見回すと────そこには、両親と周りにいた使用人達全員の変わり果てた姿があった
「う……うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
悲鳴を上げて、思わずルーカスに縋り付く様に抱きつくと、ルーカスは嬉しそうに笑い始める。
まるで引きちぎった様にばらばらになっている両親。
そして沢山の血の海に沈んでいる、明らかに生きてはいない姿の元侍女や執事達を見て、ガタガタと震えてしまった。
何故?
何故……?
どうして皆死んで……?!
今目にしている光景が受け入れられず、呆然としたまま震えていると、優しい優しいルーカスの声が耳に入る。
「もう大丈夫だよ。これで二度と煩くはできないね。
ごめんね、対応が遅れて。つい嬉しくて……。
でも安心して?ちゃんと兄さんを殴ったアレには、とびきりの苦痛も与えてやったから。
でも……まだ許せないな。
もっと苦しめてやれば良かった。つい頭に血が登っちゃって……。」
「ルーカスが……あれを……?」
震える指で絶命している皆を指すと、ルーカスは笑顔で頷いた。
僕はそれに絶望し黙っていると、ルーカスはそのまま僕を優しく抱きしめ「ありがとう。」「ありがとう。」「俺を愛してくれて。」と、うわ言の様に呟く。
ルーカスは多分僕が突然自分を庇ったから、それを愛だと気付いたのだと思った。
あぁ……また失敗した。
そう考えたその瞬間、またあのプレートが目の前に現れる。
《『やり直し』しますか?》
「…………っ。」
僕はゆっくりと手を伸ばし……またそのプレートを押した。
………………。
「今日からこの家に住む、お前の義理の弟の<ルーカス>だ。────と言っても、同じ歳だから、学年としては同学年になるな。」
またあの気持ち悪い感覚に襲われ目を閉じると、先程死んだはずの父の声がして目を開ける。
すると、また先程と同じ言動、行動をする父と母が目に入った。
また戻った……!
「よ……よろしく……!」
「…………。」
今度は1番最初の人生の時と同じ様に挨拶をすれば、小さなルーカスも同じ無言という反応を返してくる。
それにホッとしていると、またしても両親はルーカスをバカにする様な言葉を吐き続けたが、僕はどうすればいいかとぐるぐる思考を巡らせていた。
あからさまにルーカスを庇うと、ルーカスは突然狂ってしまった……。
なら……どうしたらいい?
目の前でルーカスを指差し笑う父と母を見て────僕はフッとある名案を思いつく。
「た、確かにこんな……泥だらけの子供なんて、僕の弟だなんて、み、み、認めないぞ!!」
吃りながらもズバンッ!と言い切った僕に、両親や使用人達は驚いた顔を一瞬していたが、直ぐに愉快に変わった様だ。
父は僕の頭を撫でて褒めてくる。
「その通りだ。コイツは汚らしい娼婦の子なのだから、弟だなんて思わなくていい。」
「グレイ、自分の意見をしっかりと言えましたね。それでいいのです。
こんなモノ、我が家にいるだけで虫唾が走るわ。」
ルーカスを睨みつける両親に便乗し、僕は精一杯偉そうに見える様に腕を組んで胸を張ってやった。
……ど、どうかな?上手く悪い人だって思って貰えたかな?
内心ドキドキしながらルーカスの様子を伺ったが、無反応な上に長い前髪で顔が見えないのでどう思っているかは分からないが……今はそれしか思いつかない。
とりあえず両親を変えるのは無理。
そして僕は無能、ルーカスは天才。
だから僕だけ嫌われれば、ルーカスは少なくとも兄と結婚などという事はしないで、普通の幸せを掴めるのではないか?と考えた。
だって力さえあれば、父と母が追い出された後にいくらでも他の幸せを探せる。
きっと、今まで我慢してきたもの全てが手に入る幸せな人生がルーカスには訪れるだろう。
今までの人生全てを受け入れて、新しい家族を作ってくれる女の人だって……。
「…………。」
少し胸が痛むのは、きっと世界で1番大事な弟と二度と会えない事を想像したからだ
その後使用人達に連れてかれるルーカスの背中を見て『ごめん……。』と呟くと、早速次の日から僕はルーカスを虐め始める事にしたのだ。
◇◇
「ルーカス!君はとても痩せているね!あ~気持ち悪いな~!
ほら、これを恵んであげるよ。僕は優しいからね!」
「…………。」
不遜な態度でルーカスを嘲笑い、密かに用意させていた食べ物を与える。
ご飯は食べさせないと病気になるし……。
前に酷い高熱を出した時があったからね!
その時の恐怖を思い出しブルッと震えながら、ルーカスの様子を伺うが……やはり前髪で顔が隠れているため分からない。
ただ、内心は不快だとは思う。
同情されて食べ物を差し出されるのがムカついたって、昔言ってたし……。
我が家に来る前は、食べ物は奪い合いだと言っていたルーカス。
それが辛かったかと言えばそこまで苦労はなく、どちらかと言えば周りに同情されて食べ物を差し出される方がムカついたって言っていた事があった。
僕なら『ありがとう!』って言って貰っちゃうけどな……。
でも人それぞれやられて嫌な事は違うモノだから、とりあえずルーカスはこれが嫌いってことだ。
ニッコリ笑う僕に構わず、与えたご飯を全て平らげるルーカス。
そして間髪入れずに「こんなに食べるなんて卑しい!」「流石は飢えている子供だ!」「このままブタみたいになるだろうね!」と暴言をぶつけてやる……が、やはりルーカスが何を考えているのかは分からなかった。
自分の力で起き上がり、ルーカスの両肩を掴むと、周りの景色も自ずと視界の端に入る。
視界の色は、赤、赤、赤、赤……。
まるでペンキで塗りたくった様に部屋中が赤くて、ルーカスから視線を逸らし、周りを見回すと────そこには、両親と周りにいた使用人達全員の変わり果てた姿があった
「う……うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
悲鳴を上げて、思わずルーカスに縋り付く様に抱きつくと、ルーカスは嬉しそうに笑い始める。
まるで引きちぎった様にばらばらになっている両親。
そして沢山の血の海に沈んでいる、明らかに生きてはいない姿の元侍女や執事達を見て、ガタガタと震えてしまった。
何故?
何故……?
どうして皆死んで……?!
今目にしている光景が受け入れられず、呆然としたまま震えていると、優しい優しいルーカスの声が耳に入る。
「もう大丈夫だよ。これで二度と煩くはできないね。
ごめんね、対応が遅れて。つい嬉しくて……。
でも安心して?ちゃんと兄さんを殴ったアレには、とびきりの苦痛も与えてやったから。
でも……まだ許せないな。
もっと苦しめてやれば良かった。つい頭に血が登っちゃって……。」
「ルーカスが……あれを……?」
震える指で絶命している皆を指すと、ルーカスは笑顔で頷いた。
僕はそれに絶望し黙っていると、ルーカスはそのまま僕を優しく抱きしめ「ありがとう。」「ありがとう。」「俺を愛してくれて。」と、うわ言の様に呟く。
ルーカスは多分僕が突然自分を庇ったから、それを愛だと気付いたのだと思った。
あぁ……また失敗した。
そう考えたその瞬間、またあのプレートが目の前に現れる。
《『やり直し』しますか?》
「…………っ。」
僕はゆっくりと手を伸ばし……またそのプレートを押した。
………………。
「今日からこの家に住む、お前の義理の弟の<ルーカス>だ。────と言っても、同じ歳だから、学年としては同学年になるな。」
またあの気持ち悪い感覚に襲われ目を閉じると、先程死んだはずの父の声がして目を開ける。
すると、また先程と同じ言動、行動をする父と母が目に入った。
また戻った……!
「よ……よろしく……!」
「…………。」
今度は1番最初の人生の時と同じ様に挨拶をすれば、小さなルーカスも同じ無言という反応を返してくる。
それにホッとしていると、またしても両親はルーカスをバカにする様な言葉を吐き続けたが、僕はどうすればいいかとぐるぐる思考を巡らせていた。
あからさまにルーカスを庇うと、ルーカスは突然狂ってしまった……。
なら……どうしたらいい?
目の前でルーカスを指差し笑う父と母を見て────僕はフッとある名案を思いつく。
「た、確かにこんな……泥だらけの子供なんて、僕の弟だなんて、み、み、認めないぞ!!」
吃りながらもズバンッ!と言い切った僕に、両親や使用人達は驚いた顔を一瞬していたが、直ぐに愉快に変わった様だ。
父は僕の頭を撫でて褒めてくる。
「その通りだ。コイツは汚らしい娼婦の子なのだから、弟だなんて思わなくていい。」
「グレイ、自分の意見をしっかりと言えましたね。それでいいのです。
こんなモノ、我が家にいるだけで虫唾が走るわ。」
ルーカスを睨みつける両親に便乗し、僕は精一杯偉そうに見える様に腕を組んで胸を張ってやった。
……ど、どうかな?上手く悪い人だって思って貰えたかな?
内心ドキドキしながらルーカスの様子を伺ったが、無反応な上に長い前髪で顔が見えないのでどう思っているかは分からないが……今はそれしか思いつかない。
とりあえず両親を変えるのは無理。
そして僕は無能、ルーカスは天才。
だから僕だけ嫌われれば、ルーカスは少なくとも兄と結婚などという事はしないで、普通の幸せを掴めるのではないか?と考えた。
だって力さえあれば、父と母が追い出された後にいくらでも他の幸せを探せる。
きっと、今まで我慢してきたもの全てが手に入る幸せな人生がルーカスには訪れるだろう。
今までの人生全てを受け入れて、新しい家族を作ってくれる女の人だって……。
「…………。」
少し胸が痛むのは、きっと世界で1番大事な弟と二度と会えない事を想像したからだ
その後使用人達に連れてかれるルーカスの背中を見て『ごめん……。』と呟くと、早速次の日から僕はルーカスを虐め始める事にしたのだ。
◇◇
「ルーカス!君はとても痩せているね!あ~気持ち悪いな~!
ほら、これを恵んであげるよ。僕は優しいからね!」
「…………。」
不遜な態度でルーカスを嘲笑い、密かに用意させていた食べ物を与える。
ご飯は食べさせないと病気になるし……。
前に酷い高熱を出した時があったからね!
その時の恐怖を思い出しブルッと震えながら、ルーカスの様子を伺うが……やはり前髪で顔が隠れているため分からない。
ただ、内心は不快だとは思う。
同情されて食べ物を差し出されるのがムカついたって、昔言ってたし……。
我が家に来る前は、食べ物は奪い合いだと言っていたルーカス。
それが辛かったかと言えばそこまで苦労はなく、どちらかと言えば周りに同情されて食べ物を差し出される方がムカついたって言っていた事があった。
僕なら『ありがとう!』って言って貰っちゃうけどな……。
でも人それぞれやられて嫌な事は違うモノだから、とりあえずルーカスはこれが嫌いってことだ。
ニッコリ笑う僕に構わず、与えたご飯を全て平らげるルーカス。
そして間髪入れずに「こんなに食べるなんて卑しい!」「流石は飢えている子供だ!」「このままブタみたいになるだろうね!」と暴言をぶつけてやる……が、やはりルーカスが何を考えているのかは分からなかった。
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