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30 やっと……?
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そうして7年後────……。
「今日はとうとう才能ギフトの鑑定日だ。分かってるな?」
「はい!」
ついに十五歳を迎えた僕とルーカスは、以前と同じ様に才能ギフトの鑑定のために教会へ連れてこられた。
今日、ルーカスは【聖令神】という、かつてこの世界を作ったとされる神様と同じ才能を告げられる。
つまり、これからルーカスを虐めてきた父や母、僕は追い出され、ルーカスの人生が逆転勝利する瞬間がこれから来るという事だ。
ニヤリッと笑いながらルーカスを見れば、ルーカスは前とは違い前髪は長いままで……やはり反応はなかった。
「じゃあ、いってまいります!」
そんなルーカスから視線を外し、意気揚々と神官様の前に立つ。
「では、始めてくれ!」
そう自信満々で受けた鑑定だが、勿論その結果は……前と同じ。
<グレイ>
才能ギフト……【やり直し】
能力値……潜在ステータス値(F)、現在の総合ステータス値(D+)
最低ランクのステータス。でも総合ステータスにプラスが付いてる分、前回より頑張ったと思うが……当然父様と母様は激昂した。
「グレイ、お前は今日をもってクレパス家から出ていけ。子ができぬ体にした後に、一切の関係を絶つ。
政略結婚の道具にすらなれないお前は、もう息子でもなんでもない。ゴミめ。」
「申し訳ありません。きっと私の母に似たのでしょうね。
あの顔も性格もソックリ!視界に入る度に心底嫌気がさしますわ。」
二人から憎しみの籠もった目を向けられながらも、予想通りに進んでいる事に内心胸を撫で下ろす。
これも前と全く同じ。
でも、前の様なショックは襲ってこなかった。
まぁ、二回目だしね。
ハァ……と密かにため息をついた後、廃籍を命じられた僕は、それを受け入れ項垂れたフリをする。
「ほらっ!!お前もさっさと鑑定しろ!このグズ!!」
すると、そんな僕の前で父は激昂したまま、ルーカスに向かって鑑定を受けるように命じた。
「…………。」
ルーカスは、そんな父を怖がる様子もなく、大人しく神官の前に行ったので、僕は痛む胸を押さえながら結果を見守る。
ルーカス……さようなら。
そうして心の中でお別れを済ませると、前と同じくルーカスは【聖令神】の才能ギフトを告げられ、周りはどよめいた。
「か、神よ……っ。この奇跡に感謝を……。」
「なんてことだ……。どうかお許し下さい。」
「神様の降臨だ……。この奇跡に立ち会えた事を誇りに思います。」
全員が涙を流しながらルーカスに跪いて祈る中、父と母は真っ青な顔でガタガタ震えながら同じく膝を床につける。
きっと頭の中は許してもらう事で一杯で……でも、もう手遅れだ。
人間は犯罪を犯すより罪を償う事の方が難しい。
ここまで来てしまえば、赦しはない。
勿論それは僕も────。
「…………。」
僕も黙ったまま跪き、ルーカスの断罪をただ待つ。
その間にも「そんな……そんな……バカな……。」「嘘……嘘……。」と父と母は往生際悪く呟き続け、ルーカスはそんな父と母がいる方へとゆっくり歩いていく。
そして跪く父と母に立つと────……。
────ガンッ!!!
「ギャッ!!!」
顔を上げた父の顔に、強烈なストレートを打ち込んだ。
「きゃ……きゃあぁぁぁ!!」
そして悲鳴を上げる母の顔にも同じ様に拳を打ち込むと、父は頭に来たのか、ルーカスに向かって大声で叫ぶ。
「お、お、俺はこの国にいなくてはならない騎士団のトップの人間なんだぞ!お前……じゃなくて、貴方様の才能ギフトを知らなかったんだから、扱いが悪かったのは仕方ないじゃありませんか!!」
鼻血をダラダラと流しながら、言い訳を口にする父を見て、ルーカスは鼻で笑った。
「じゃあ、俺もアンタの事知らないから捨てるね。だって知ってる程顔を合わせた事も話をする事もなかったんだから、知らないのは当然でしょ?
これからは平民として生きて色々知る事だ。
底辺の暮らしを一度してみれば、沢山の事を知ることができるだろう。良かったね?」
「そんな事できるわけ……。」
父は歯をガチガチと震わせながらそう返したが、ルーカスの唯一見えている口元が緩く上がった。
「できるよ。力があればなんでもしていい世界だからアンタはそこにいれたんでしょ?
さようなら。どっかの誰かさん達。これから長く生きれるといいね。……無理だろうけど。」
「そ……そんな……。」
父と母は愕然と項垂れ、完全に沈黙してしまったが、それに異を唱えるものはいない。
「────さて。」
ルーカスはあっさりと両親から視線を逸らし、今度は僕の元へ。
これで僕も殴られた後は平民落ちを告げられ、これからは平民としての人生を────……。
「これでやっと家族揃っての生活ができるね、兄さん。」
「────はっ?」
全く予想できなかった言葉がルーカスの口から飛び出し、僕は呆けてしまう。
しかしルーカスはそんな僕を置き去りに、ペラペラと喋りだした。
「とりあえず兄さんがこのままクレパス家を継ごうか。俺はそのサポートで。
兄さんにはこれから、綺麗なモノだけに囲まれて生きて欲しいな。
だから汚いモノは全部俺が排除してあげる。
兄さんが幸せに暮らせる理想の世界を創ろう。」
「ル、ルーカス……何を言っているの?だって僕は……君を虐めてきたのに……?」
震える喉で必死に言葉を吐き出すと、ルーカスはカラカラと楽しそうに笑う。
「虐め……アレが虐め!あんなモノは虐めとは言わないんだよ。流石は兄さんだ!
なんて綺麗なんだろう。
やっぱり兄さんには綺麗な場所が似合う。
俺の事を、これからもずっとずっと想ってね。だって今までずっと、俺を想って生きてきてくれたんだもんね?ずっとずっと兄さんの俺への愛情を感じていたよ。
ありがとう。愛してくれて。」
「ぼ、僕は…………。」
愕然としている僕の前で、ルーカスはポケットに入っていたらしいナイフを使って、ジョキジョキと前髪を切った。
そしてその美しい顔で幸せそうに笑うと僕に向かって手を差し出す。
「愛しているよ、兄さん。永遠に。」
「…………っ。」
ルーカスの差し出す手。
それをただ見つめている僕の目の前に────またあのプレートが姿を現した。
《『やり直し』しますか?》
僕は……ルーカスの手に重なるように見えているそのプレートに手を伸ばす。
◇◇
これで三回目のやり直し。
また父が、ルーカスと初めて出会った場で同じセリフを言う。
庇っても駄目。
意地悪しても駄目。
じゃあ、一体どうすればいいのだろう?
「────……そっか。逃げればいいんだ。」
自室に帰った後、僕は突然そう思いつき、直ぐに実行しようと片っ端から部屋の物をトランクに詰め込み始めた。
とりあえず森に潜伏して、ゆくゆくは隣の国にでもいけば逃げ切れるはず!
甘い考えだとは想ったが、それしか思い浮かばない程追い詰められていたのかもしれない。
パンパンに詰まったトランクを持つと、僕は直ぐにルーカスがいると思われる小屋へと急いだ。
「ルーカス!一緒に逃げよう!」
突然窓からヌッ!と現れた僕を見ても、ルーカスは大して驚く事なく、僕が持っているトランクへ視線を向ける。
「……俺と?」
前髪で表情は分からずとも、多分驚き戸惑っていると思ったので、僕は不安そうにしているルーカスの両手を握った。
「うん、逃げよう。安心して暮らせる所を見つけるんだ。」
「────分かった。」
ルーカスはそのまま僕の手を握り返すと、僕達はそのまま手を繋いで外へ。
そして途中からはバテて動けなくなった僕をルーカスは背負い、遠く離れた街へと走ってくれた。
どうやらルーカスの体力や力は、この時既に開花済みだったらしい。
僕は、そんなルーカスに剣や体術を教えるとか言っていたんだ……。
「今日はとうとう才能ギフトの鑑定日だ。分かってるな?」
「はい!」
ついに十五歳を迎えた僕とルーカスは、以前と同じ様に才能ギフトの鑑定のために教会へ連れてこられた。
今日、ルーカスは【聖令神】という、かつてこの世界を作ったとされる神様と同じ才能を告げられる。
つまり、これからルーカスを虐めてきた父や母、僕は追い出され、ルーカスの人生が逆転勝利する瞬間がこれから来るという事だ。
ニヤリッと笑いながらルーカスを見れば、ルーカスは前とは違い前髪は長いままで……やはり反応はなかった。
「じゃあ、いってまいります!」
そんなルーカスから視線を外し、意気揚々と神官様の前に立つ。
「では、始めてくれ!」
そう自信満々で受けた鑑定だが、勿論その結果は……前と同じ。
<グレイ>
才能ギフト……【やり直し】
能力値……潜在ステータス値(F)、現在の総合ステータス値(D+)
最低ランクのステータス。でも総合ステータスにプラスが付いてる分、前回より頑張ったと思うが……当然父様と母様は激昂した。
「グレイ、お前は今日をもってクレパス家から出ていけ。子ができぬ体にした後に、一切の関係を絶つ。
政略結婚の道具にすらなれないお前は、もう息子でもなんでもない。ゴミめ。」
「申し訳ありません。きっと私の母に似たのでしょうね。
あの顔も性格もソックリ!視界に入る度に心底嫌気がさしますわ。」
二人から憎しみの籠もった目を向けられながらも、予想通りに進んでいる事に内心胸を撫で下ろす。
これも前と全く同じ。
でも、前の様なショックは襲ってこなかった。
まぁ、二回目だしね。
ハァ……と密かにため息をついた後、廃籍を命じられた僕は、それを受け入れ項垂れたフリをする。
「ほらっ!!お前もさっさと鑑定しろ!このグズ!!」
すると、そんな僕の前で父は激昂したまま、ルーカスに向かって鑑定を受けるように命じた。
「…………。」
ルーカスは、そんな父を怖がる様子もなく、大人しく神官の前に行ったので、僕は痛む胸を押さえながら結果を見守る。
ルーカス……さようなら。
そうして心の中でお別れを済ませると、前と同じくルーカスは【聖令神】の才能ギフトを告げられ、周りはどよめいた。
「か、神よ……っ。この奇跡に感謝を……。」
「なんてことだ……。どうかお許し下さい。」
「神様の降臨だ……。この奇跡に立ち会えた事を誇りに思います。」
全員が涙を流しながらルーカスに跪いて祈る中、父と母は真っ青な顔でガタガタ震えながら同じく膝を床につける。
きっと頭の中は許してもらう事で一杯で……でも、もう手遅れだ。
人間は犯罪を犯すより罪を償う事の方が難しい。
ここまで来てしまえば、赦しはない。
勿論それは僕も────。
「…………。」
僕も黙ったまま跪き、ルーカスの断罪をただ待つ。
その間にも「そんな……そんな……バカな……。」「嘘……嘘……。」と父と母は往生際悪く呟き続け、ルーカスはそんな父と母がいる方へとゆっくり歩いていく。
そして跪く父と母に立つと────……。
────ガンッ!!!
「ギャッ!!!」
顔を上げた父の顔に、強烈なストレートを打ち込んだ。
「きゃ……きゃあぁぁぁ!!」
そして悲鳴を上げる母の顔にも同じ様に拳を打ち込むと、父は頭に来たのか、ルーカスに向かって大声で叫ぶ。
「お、お、俺はこの国にいなくてはならない騎士団のトップの人間なんだぞ!お前……じゃなくて、貴方様の才能ギフトを知らなかったんだから、扱いが悪かったのは仕方ないじゃありませんか!!」
鼻血をダラダラと流しながら、言い訳を口にする父を見て、ルーカスは鼻で笑った。
「じゃあ、俺もアンタの事知らないから捨てるね。だって知ってる程顔を合わせた事も話をする事もなかったんだから、知らないのは当然でしょ?
これからは平民として生きて色々知る事だ。
底辺の暮らしを一度してみれば、沢山の事を知ることができるだろう。良かったね?」
「そんな事できるわけ……。」
父は歯をガチガチと震わせながらそう返したが、ルーカスの唯一見えている口元が緩く上がった。
「できるよ。力があればなんでもしていい世界だからアンタはそこにいれたんでしょ?
さようなら。どっかの誰かさん達。これから長く生きれるといいね。……無理だろうけど。」
「そ……そんな……。」
父と母は愕然と項垂れ、完全に沈黙してしまったが、それに異を唱えるものはいない。
「────さて。」
ルーカスはあっさりと両親から視線を逸らし、今度は僕の元へ。
これで僕も殴られた後は平民落ちを告げられ、これからは平民としての人生を────……。
「これでやっと家族揃っての生活ができるね、兄さん。」
「────はっ?」
全く予想できなかった言葉がルーカスの口から飛び出し、僕は呆けてしまう。
しかしルーカスはそんな僕を置き去りに、ペラペラと喋りだした。
「とりあえず兄さんがこのままクレパス家を継ごうか。俺はそのサポートで。
兄さんにはこれから、綺麗なモノだけに囲まれて生きて欲しいな。
だから汚いモノは全部俺が排除してあげる。
兄さんが幸せに暮らせる理想の世界を創ろう。」
「ル、ルーカス……何を言っているの?だって僕は……君を虐めてきたのに……?」
震える喉で必死に言葉を吐き出すと、ルーカスはカラカラと楽しそうに笑う。
「虐め……アレが虐め!あんなモノは虐めとは言わないんだよ。流石は兄さんだ!
なんて綺麗なんだろう。
やっぱり兄さんには綺麗な場所が似合う。
俺の事を、これからもずっとずっと想ってね。だって今までずっと、俺を想って生きてきてくれたんだもんね?ずっとずっと兄さんの俺への愛情を感じていたよ。
ありがとう。愛してくれて。」
「ぼ、僕は…………。」
愕然としている僕の前で、ルーカスはポケットに入っていたらしいナイフを使って、ジョキジョキと前髪を切った。
そしてその美しい顔で幸せそうに笑うと僕に向かって手を差し出す。
「愛しているよ、兄さん。永遠に。」
「…………っ。」
ルーカスの差し出す手。
それをただ見つめている僕の目の前に────またあのプレートが姿を現した。
《『やり直し』しますか?》
僕は……ルーカスの手に重なるように見えているそのプレートに手を伸ばす。
◇◇
これで三回目のやり直し。
また父が、ルーカスと初めて出会った場で同じセリフを言う。
庇っても駄目。
意地悪しても駄目。
じゃあ、一体どうすればいいのだろう?
「────……そっか。逃げればいいんだ。」
自室に帰った後、僕は突然そう思いつき、直ぐに実行しようと片っ端から部屋の物をトランクに詰め込み始めた。
とりあえず森に潜伏して、ゆくゆくは隣の国にでもいけば逃げ切れるはず!
甘い考えだとは想ったが、それしか思い浮かばない程追い詰められていたのかもしれない。
パンパンに詰まったトランクを持つと、僕は直ぐにルーカスがいると思われる小屋へと急いだ。
「ルーカス!一緒に逃げよう!」
突然窓からヌッ!と現れた僕を見ても、ルーカスは大して驚く事なく、僕が持っているトランクへ視線を向ける。
「……俺と?」
前髪で表情は分からずとも、多分驚き戸惑っていると思ったので、僕は不安そうにしているルーカスの両手を握った。
「うん、逃げよう。安心して暮らせる所を見つけるんだ。」
「────分かった。」
ルーカスはそのまま僕の手を握り返すと、僕達はそのまま手を繋いで外へ。
そして途中からはバテて動けなくなった僕をルーカスは背負い、遠く離れた街へと走ってくれた。
どうやらルーカスの体力や力は、この時既に開花済みだったらしい。
僕は、そんなルーカスに剣や体術を教えるとか言っていたんだ……。
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