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35 何度だって【グレイ編完結】
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恐らく王都に住んでいた、もしくは近くにいた貴族達かもしれない。
王宮なら安全だとでも思っていたのだろうが、敵は想像を越えた圧倒的な力を持って王宮を制圧してしまったらしい。
自領を放ってココへ避難するなど、呆れてものも言えないとはこの事。
更にその中には、父と母らしきモノもあり、気持ちは大きく沈んだ。
「領民達を奴隷として差し出す!だから、我がクレパス家にそちらの国での身分の保証を……。」
「我が血族には見た目の麗しい女性が多いので、正妻……とまでいかずとも、愛人として側に置くのはいかがでしょう?ですので、どうか我がクレパス家の財産だけは……!」
とにかく助けて欲しいのは自分。
そして自分がこれからも幸せに暮らせるためのお金と身分が欲しい。
それしか言わない両親は、クレパス家を汚す恥そのものだと思った。
「こんなモノの愛を無意識に求めていたなんて……一度目の僕は本当に大馬鹿だったな。」
完全に両親への想いが吹っ切れたのは良かった。
やり直しをして良かった事を見つけられて、少しだけ喜びながら、僕は扉を開ける。
すると目の前に広がっていたのは、一つの国の終焉であった。
王は王座から引きずり降ろされた状態で他国の兵に押さえつけられていて、他にも沢山の貴族らしき者達がとても乱暴に押さえつけられていたからだ。
だが、それ以上にそこにいるはずのない人物を王座の上で見つけ、僕は衝撃に息を止めた。
「ル……ルーカス…………?」
王座の上で頬杖をつき、膝を組んでいるのは僕の大事な弟であるルーカスだ。
他国の鎧とマントを身にまとい、まるで真の王の様な堂々たる姿を見せつけてくる。
その目はとても冷めていて、騒ぐ王や貴族達を無感情で見つめていたが……何故か僕を見つけた途端、目に熱が籠もり、まるで太陽の様な笑顔を見せてきた。
「兄さん、久しぶりだね!会いたかったよ。」
「な……なんで君がココに……?」
あり得ない事態に、一歩……二歩と下がっていったが、扉は固く閉じられてしまい、この部屋からでる事はできなくなってしまう。
背中に当たる扉は冷たく、更に血の気が引いた影響か、体は冷えてどんどん同化していくのが分かった。
言葉なく立ったままの僕の目の前に立ったルーカスは、まるでとても繊細なガラスでも触るかの様に優しく僕の頬を触る。
「顔色が悪いけど大丈夫?驚かせちゃったかな?
兄さんは相変わらず本当に綺麗だね。昔から何も変わらない。」
「き……れいなんかじゃないよ……。僕は一般的な容姿をしていると思う……。」
頬に触れた手をゆっくり動かし、撫でてくるルーカス。
その手を避ける様に顔を動かそうとすると、ルーカスは両手を使って僕の顔を掴み、顔を覗き込んできた。
「兄さんはこの世界で唯一の綺麗なモノだ。
ほら、それを証拠に、貴族としての責任を果たそうとココに来たの、兄さんだけだよ。
アレなんて、自分が率いる騎士団を見捨てて我先に国外逃走しようとしていたんだから。」
ルーカスは取り押さえられている父を指差し笑う。
すると、部屋の中には次々と新たな緊急用テレポートの穴が開き、そこから別の貴族らしき者達が他国の兵士の格好をした者達に取り押さえられて出てきた。
「簡単に予想できたから、先回りして他国の境界線で俺の国の兵を見張らせておいたんだ。
そうしたら、この通り。全員街を見捨てて逃げようとしたクズばかりだ。
本当に汚い……。
だから国外逃亡を企てた貴族は全員処刑するよ。だって生きてたらまた世界が汚れるだけだし。」
「そ、そんな……。そもそもなんでルーカスがそんな事を……。」
何故か他国の兵の様な格好をして現れたルーカス。
一体何があったのか?
まさか……自分を受け入れなかった国に復讐しようと……?
ルーカスは、クスッと笑いながら僕の耳元に口を近づけた。
「『幸せになるため』。
だからまずは、隣国の邪魔な王と貴族達を消して俺が王になった。
そしてこの国を消してしまえば……兄さんは俺だけのモノになるもんね?
もう国に縛られる事も血で縛られる事だってない。だから自由に俺だけを愛してくれればいい。
もう兄弟だからっていう言い訳も使えないよ。だって俺が王様だから。
法律は俺が決める。」
「な……なんてことを……。」
信じられない愚行に、僕はショックを受けて崩れ落ちそうになったが、ルーカスはそんな僕を抱きとめ、他国の兵達に目線で合図をする。
すると……。
「ヒッ!!ヒギッ!!」
「あ……助けっ……!!きゃぁぁぁぁ!!」
「ぎゃぁぁぁぁ!!いやだぁぁぁぁ!!!」
その場で次々と他国の兵達は処刑を始め、取り押さえられている王や両親、他の貴族達は首を失い床に倒れていった。
「あ………っう……うぅ……。」
断末魔の悲鳴が部屋中に響く中、僕はゆっくりと手を伸ばしたが……誰一人助ける事ができずにその場は静かになる。
「あぁ、うるさかった。でも、これでやっと静かになったね。
さぁ、兄さん。兄さんが好きなモノは、全部揃えたから、帰ろう。俺達の家へ。」
ニコニコ笑うルーカスを見ながら……僕は、また今世も宙に浮かぶ『やり直し』へと手を伸ばした。
何度も何度も……僕は何度だってやり直す。
ルーカスを『幸せ』にするまで。
それまで絶対にあきらめない。
ぐるぐると戻っていく感覚を体験しながら、今回のルーカスに初めて「さようなら。」と呟くと、戻って消えていくルーカスの唇が僅かに動いた気がした。
王宮なら安全だとでも思っていたのだろうが、敵は想像を越えた圧倒的な力を持って王宮を制圧してしまったらしい。
自領を放ってココへ避難するなど、呆れてものも言えないとはこの事。
更にその中には、父と母らしきモノもあり、気持ちは大きく沈んだ。
「領民達を奴隷として差し出す!だから、我がクレパス家にそちらの国での身分の保証を……。」
「我が血族には見た目の麗しい女性が多いので、正妻……とまでいかずとも、愛人として側に置くのはいかがでしょう?ですので、どうか我がクレパス家の財産だけは……!」
とにかく助けて欲しいのは自分。
そして自分がこれからも幸せに暮らせるためのお金と身分が欲しい。
それしか言わない両親は、クレパス家を汚す恥そのものだと思った。
「こんなモノの愛を無意識に求めていたなんて……一度目の僕は本当に大馬鹿だったな。」
完全に両親への想いが吹っ切れたのは良かった。
やり直しをして良かった事を見つけられて、少しだけ喜びながら、僕は扉を開ける。
すると目の前に広がっていたのは、一つの国の終焉であった。
王は王座から引きずり降ろされた状態で他国の兵に押さえつけられていて、他にも沢山の貴族らしき者達がとても乱暴に押さえつけられていたからだ。
だが、それ以上にそこにいるはずのない人物を王座の上で見つけ、僕は衝撃に息を止めた。
「ル……ルーカス…………?」
王座の上で頬杖をつき、膝を組んでいるのは僕の大事な弟であるルーカスだ。
他国の鎧とマントを身にまとい、まるで真の王の様な堂々たる姿を見せつけてくる。
その目はとても冷めていて、騒ぐ王や貴族達を無感情で見つめていたが……何故か僕を見つけた途端、目に熱が籠もり、まるで太陽の様な笑顔を見せてきた。
「兄さん、久しぶりだね!会いたかったよ。」
「な……なんで君がココに……?」
あり得ない事態に、一歩……二歩と下がっていったが、扉は固く閉じられてしまい、この部屋からでる事はできなくなってしまう。
背中に当たる扉は冷たく、更に血の気が引いた影響か、体は冷えてどんどん同化していくのが分かった。
言葉なく立ったままの僕の目の前に立ったルーカスは、まるでとても繊細なガラスでも触るかの様に優しく僕の頬を触る。
「顔色が悪いけど大丈夫?驚かせちゃったかな?
兄さんは相変わらず本当に綺麗だね。昔から何も変わらない。」
「き……れいなんかじゃないよ……。僕は一般的な容姿をしていると思う……。」
頬に触れた手をゆっくり動かし、撫でてくるルーカス。
その手を避ける様に顔を動かそうとすると、ルーカスは両手を使って僕の顔を掴み、顔を覗き込んできた。
「兄さんはこの世界で唯一の綺麗なモノだ。
ほら、それを証拠に、貴族としての責任を果たそうとココに来たの、兄さんだけだよ。
アレなんて、自分が率いる騎士団を見捨てて我先に国外逃走しようとしていたんだから。」
ルーカスは取り押さえられている父を指差し笑う。
すると、部屋の中には次々と新たな緊急用テレポートの穴が開き、そこから別の貴族らしき者達が他国の兵士の格好をした者達に取り押さえられて出てきた。
「簡単に予想できたから、先回りして他国の境界線で俺の国の兵を見張らせておいたんだ。
そうしたら、この通り。全員街を見捨てて逃げようとしたクズばかりだ。
本当に汚い……。
だから国外逃亡を企てた貴族は全員処刑するよ。だって生きてたらまた世界が汚れるだけだし。」
「そ、そんな……。そもそもなんでルーカスがそんな事を……。」
何故か他国の兵の様な格好をして現れたルーカス。
一体何があったのか?
まさか……自分を受け入れなかった国に復讐しようと……?
ルーカスは、クスッと笑いながら僕の耳元に口を近づけた。
「『幸せになるため』。
だからまずは、隣国の邪魔な王と貴族達を消して俺が王になった。
そしてこの国を消してしまえば……兄さんは俺だけのモノになるもんね?
もう国に縛られる事も血で縛られる事だってない。だから自由に俺だけを愛してくれればいい。
もう兄弟だからっていう言い訳も使えないよ。だって俺が王様だから。
法律は俺が決める。」
「な……なんてことを……。」
信じられない愚行に、僕はショックを受けて崩れ落ちそうになったが、ルーカスはそんな僕を抱きとめ、他国の兵達に目線で合図をする。
すると……。
「ヒッ!!ヒギッ!!」
「あ……助けっ……!!きゃぁぁぁぁ!!」
「ぎゃぁぁぁぁ!!いやだぁぁぁぁ!!!」
その場で次々と他国の兵達は処刑を始め、取り押さえられている王や両親、他の貴族達は首を失い床に倒れていった。
「あ………っう……うぅ……。」
断末魔の悲鳴が部屋中に響く中、僕はゆっくりと手を伸ばしたが……誰一人助ける事ができずにその場は静かになる。
「あぁ、うるさかった。でも、これでやっと静かになったね。
さぁ、兄さん。兄さんが好きなモノは、全部揃えたから、帰ろう。俺達の家へ。」
ニコニコ笑うルーカスを見ながら……僕は、また今世も宙に浮かぶ『やり直し』へと手を伸ばした。
何度も何度も……僕は何度だってやり直す。
ルーカスを『幸せ』にするまで。
それまで絶対にあきらめない。
ぐるぐると戻っていく感覚を体験しながら、今回のルーカスに初めて「さようなら。」と呟くと、戻って消えていくルーカスの唇が僅かに動いた気がした。
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