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18 カッコいいよ
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(スカイ視点)
「…………。」
無言で涙を拭きながら、俺はボンヤリと考える。
これから先、どうやったらムギとずっと一緒にいられるんだろう……?
「良いもの見せてやるから、ちょっと行くぞ。」
「……?」
グスグスと鼻を啜っていると、ムギは近くにある沼へと向かい、沢山の<イボイボ・ケロッグ>達を見せてきた。
ソイツらの体にはたくさんのイボがあり、そこからは絶えず臭い膿がドロドロと流れているせいでそこら中に、腐敗臭の様な匂いが漂っている。
「くっ……臭い!!」
俺が堪らずそう言うと、鼻を摘んでムギを睨んだ。
しかし、ムギは気にせずキョロキョロと周囲を見回し、何かを見つけたのか「あっ!」と声を出してある方向を指差す。
「ほら、あいつ見てみろよ。あの一匹だけ様子が違うヤツ。」
「はっ?……なに?」
ムギが指差す方向にいたのは、全然イボがないツルツルのイボイボ・ケロッグで、随分と珍しい外見をしているが、ムギが何を言いたいかは分からず首を傾げた。
「?あのツルツルのカエルモンスターがどうした?」
「あいつさ、生まれつきあんなツルツルした外見で生まれてきたらしくて、オタマジャクシの時からあんなんだったんだよ。」
「……ふん、どうでもいい話だな。生まれつき綺麗に生まれたから何だ?そんな戯言を聞かせるためにこんな臭い所に連れてきおって!」
『お前もあんなツルツルで生まれれば良かったのにな。可哀想に。』
ムギの言いたい事はこれかと思い、胸がズキンッ!と傷ついた。
ムギは優しいから、こうやって言葉ではなく間接的に俺の事が嫌だと言いたかったに違いない。
それに気づいて視線を下へ下へ下げていったが、ムギは俺の背中をぽんぽんと叩いた。
「アイツ、めちゃくちゃモテなくて、誰も仲間に入れてくれなかったんだ。
イボイボ・ケロッグは、あのイボが沢山あって大きい程カッコよくて、油が沢山出る程イケメンな世界だから。
俺が見ている限り、アイツは小さい頃から一人ぼっちでいたよ。」
「────!」
俺は下に下げていた視線をあげ、ツルツルケロッグを凝視する。
周りと違う外見のせいで、誰も近寄ってはくれない。
俺と同じ……?
妙な仲間一気を感じたが、直ぐにそのツルツルなヤツに寄り添うメスケロッグを見て、顔を大きく歪めた。
「……嘘をつくな。だって、アイツの隣には番のメスもいるし、今は他の仲間たちも普通に近くにいるじゃないか。」
俺は、メスの番に寄り添い、他の仲間たちに囲まれているツルツルケロッグを睨みながら、指を差した。
するとムギは懐から一個のトマトを取り出すと、突然大きく振りかぶってソレを沼地へと投げる。
すると────……。
ピョピョ~ン!!!
あのツルツルケロッグが我先に飛び出し、とんでもない大ジャンプをしたため素直に驚いた。
「…………っ!!」
その凄いジャンプをしたツルツルケロッグは、見事チャッチしたトマトを直ぐに自分の番へプレゼントする。
そして仲間たちからは沢山の羨望の眼差しを浴び、更に番はより一層そのツルツルケロッグの事を好きになった様で、ペロペロとその顔を舐めていた。
周りと違っても、あんなに好きになってもらえるの……?
俺が番に舐めてもらって嬉しそうにしているツルツルケロッグを見つめていると、ムギは俺の肩をポンポンと叩いた。
「俺は、周りからどんなに無視されようが馬鹿にされようが、自分のできる事を頑張って、ああやって認められるヤツってカッコいいと思う。
アイツは毎日頑張ってジャンプの練習をして、あんなに凄いジャンプができる様になったんだ。
それを周りは認めてくれたんだよ。
元々あるカッコいいを吹っ飛ばす、新しいカッコいいを創り出したんだ。
それでモテモテ人生まっしぐら!くぅ~……!カッコいいじゃないか!」
カッコいい?
ムギはカッコいい人が好き……。
俺はドキドキしながら、ポツリと呟いた。
「……自分ができる事?」
「うん。それは周りが羨む様なモノじゃなくても良い。
頑張る姿がカッコいいんだから。」
「…………。」
俺は自分の手のひらを見下ろし、開けたり閉めたりを繰り返す。
俺がかっこよくなったら……ムギはあの番のメスみたいに俺の側にいてくれる?
そんな考えが浮かぶと、先程見たツルツルケロッグと番の姿が俺とムギに変わり、カァ!と体が沸騰する様に熱くなっていった。
「……ムギは頑張る俺をカッコいいと思うか?こんな醜い姿の俺が頑張って……誰も見てくれなくても……。」
例え世界中の人に気持ち悪い、カッコ悪いと思われても……ムギがカッコいいと思ってくれるなら……俺は……。
目元が熱くなっていくのを感じながらそう尋ねると────ムギは大きく頷く。
「コロは頑張ってるだろう?
一人で知らない村に来て、必死に弱みを見せないコロはカッコいいと思う!
だから、色々頑張ってみろって!
ジャンプできるだけであんなモテモテになるヤツだっているんだしさ。」
ムギは俺をカッコいいと思っている!
俺の事を……あのツルツルケロッグの頑張りと同じくらい認めてくれてるんだ!
その事が嬉しくて嬉しくてボロボロと泣いてしまうと、ムギは俺を背負って家に送り届けてくれた。
それから日が暮れて、夜が来て……俺は異常なくらい熱くなったまま戻らなくなってしまった自分の身体を抱きしめ、ムギの事を考える。
ムギは初めて俺を俺として接してくれた人。
こんな誰もが気持ち悪いという醜い俺と話してくれて、触ってくれて……認めてくれた。
そして俺をカッコいいとまで言ってくれたのだ。
「ムギ……ムギ……ムギ……。」
名前をひたすら口にすると、熱い身体はグツグツとナグマの様にどんどんと熱くなっていった。
まるで身体の中から何かが飛び出そうとしている様な……?
「…………。」
無言で涙を拭きながら、俺はボンヤリと考える。
これから先、どうやったらムギとずっと一緒にいられるんだろう……?
「良いもの見せてやるから、ちょっと行くぞ。」
「……?」
グスグスと鼻を啜っていると、ムギは近くにある沼へと向かい、沢山の<イボイボ・ケロッグ>達を見せてきた。
ソイツらの体にはたくさんのイボがあり、そこからは絶えず臭い膿がドロドロと流れているせいでそこら中に、腐敗臭の様な匂いが漂っている。
「くっ……臭い!!」
俺が堪らずそう言うと、鼻を摘んでムギを睨んだ。
しかし、ムギは気にせずキョロキョロと周囲を見回し、何かを見つけたのか「あっ!」と声を出してある方向を指差す。
「ほら、あいつ見てみろよ。あの一匹だけ様子が違うヤツ。」
「はっ?……なに?」
ムギが指差す方向にいたのは、全然イボがないツルツルのイボイボ・ケロッグで、随分と珍しい外見をしているが、ムギが何を言いたいかは分からず首を傾げた。
「?あのツルツルのカエルモンスターがどうした?」
「あいつさ、生まれつきあんなツルツルした外見で生まれてきたらしくて、オタマジャクシの時からあんなんだったんだよ。」
「……ふん、どうでもいい話だな。生まれつき綺麗に生まれたから何だ?そんな戯言を聞かせるためにこんな臭い所に連れてきおって!」
『お前もあんなツルツルで生まれれば良かったのにな。可哀想に。』
ムギの言いたい事はこれかと思い、胸がズキンッ!と傷ついた。
ムギは優しいから、こうやって言葉ではなく間接的に俺の事が嫌だと言いたかったに違いない。
それに気づいて視線を下へ下へ下げていったが、ムギは俺の背中をぽんぽんと叩いた。
「アイツ、めちゃくちゃモテなくて、誰も仲間に入れてくれなかったんだ。
イボイボ・ケロッグは、あのイボが沢山あって大きい程カッコよくて、油が沢山出る程イケメンな世界だから。
俺が見ている限り、アイツは小さい頃から一人ぼっちでいたよ。」
「────!」
俺は下に下げていた視線をあげ、ツルツルケロッグを凝視する。
周りと違う外見のせいで、誰も近寄ってはくれない。
俺と同じ……?
妙な仲間一気を感じたが、直ぐにそのツルツルなヤツに寄り添うメスケロッグを見て、顔を大きく歪めた。
「……嘘をつくな。だって、アイツの隣には番のメスもいるし、今は他の仲間たちも普通に近くにいるじゃないか。」
俺は、メスの番に寄り添い、他の仲間たちに囲まれているツルツルケロッグを睨みながら、指を差した。
するとムギは懐から一個のトマトを取り出すと、突然大きく振りかぶってソレを沼地へと投げる。
すると────……。
ピョピョ~ン!!!
あのツルツルケロッグが我先に飛び出し、とんでもない大ジャンプをしたため素直に驚いた。
「…………っ!!」
その凄いジャンプをしたツルツルケロッグは、見事チャッチしたトマトを直ぐに自分の番へプレゼントする。
そして仲間たちからは沢山の羨望の眼差しを浴び、更に番はより一層そのツルツルケロッグの事を好きになった様で、ペロペロとその顔を舐めていた。
周りと違っても、あんなに好きになってもらえるの……?
俺が番に舐めてもらって嬉しそうにしているツルツルケロッグを見つめていると、ムギは俺の肩をポンポンと叩いた。
「俺は、周りからどんなに無視されようが馬鹿にされようが、自分のできる事を頑張って、ああやって認められるヤツってカッコいいと思う。
アイツは毎日頑張ってジャンプの練習をして、あんなに凄いジャンプができる様になったんだ。
それを周りは認めてくれたんだよ。
元々あるカッコいいを吹っ飛ばす、新しいカッコいいを創り出したんだ。
それでモテモテ人生まっしぐら!くぅ~……!カッコいいじゃないか!」
カッコいい?
ムギはカッコいい人が好き……。
俺はドキドキしながら、ポツリと呟いた。
「……自分ができる事?」
「うん。それは周りが羨む様なモノじゃなくても良い。
頑張る姿がカッコいいんだから。」
「…………。」
俺は自分の手のひらを見下ろし、開けたり閉めたりを繰り返す。
俺がかっこよくなったら……ムギはあの番のメスみたいに俺の側にいてくれる?
そんな考えが浮かぶと、先程見たツルツルケロッグと番の姿が俺とムギに変わり、カァ!と体が沸騰する様に熱くなっていった。
「……ムギは頑張る俺をカッコいいと思うか?こんな醜い姿の俺が頑張って……誰も見てくれなくても……。」
例え世界中の人に気持ち悪い、カッコ悪いと思われても……ムギがカッコいいと思ってくれるなら……俺は……。
目元が熱くなっていくのを感じながらそう尋ねると────ムギは大きく頷く。
「コロは頑張ってるだろう?
一人で知らない村に来て、必死に弱みを見せないコロはカッコいいと思う!
だから、色々頑張ってみろって!
ジャンプできるだけであんなモテモテになるヤツだっているんだしさ。」
ムギは俺をカッコいいと思っている!
俺の事を……あのツルツルケロッグの頑張りと同じくらい認めてくれてるんだ!
その事が嬉しくて嬉しくてボロボロと泣いてしまうと、ムギは俺を背負って家に送り届けてくれた。
それから日が暮れて、夜が来て……俺は異常なくらい熱くなったまま戻らなくなってしまった自分の身体を抱きしめ、ムギの事を考える。
ムギは初めて俺を俺として接してくれた人。
こんな誰もが気持ち悪いという醜い俺と話してくれて、触ってくれて……認めてくれた。
そして俺をカッコいいとまで言ってくれたのだ。
「ムギ……ムギ……ムギ……。」
名前をひたすら口にすると、熱い身体はグツグツとナグマの様にどんどんと熱くなっていった。
まるで身体の中から何かが飛び出そうとしている様な……?
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