【本編完結】特技媚びる!の 底辺無能おっさんは1000年後の未来で自分の元奴隷に会うが……えっ?どういう事??

バナナ男さん

文字の大きさ
37 / 70
真実の表側

36 変わらない風景

おいおい、ふざけんなよ、クソ野郎共!!
こいつら周りの奴らを煽って、利用するつもりだったのか!

周囲へ、怒り、憎しみの念がものすごい速さで伝染していく事に、焦りと怒りが湧く。

これは悪人がよく使う手。
善人の弱っている心の隙をつき、こうして自分のために使える駒に作り変える。
煽るだけ煽って自分達は高みの見物をし、美味しいところは全部頂くってわけだ。

「皆が特攻するのを後ろの安全な所で見守るつもりだな……。
くそっ!どうすれば……!!」

クズな冒険者二人組は、熱くなっていく周囲を見回し満足そうな顔を見せている。
周りの人たちの顔が歪んでいくのを焦りながら、見回したその時……。

「────あ、あれ???」

冒険者の一人が素っ頓狂な声を上げた。

「────??何だ??」

突然の間が抜けたような声に違和感を感じ、その冒険者の男たちの方へ視線を戻すと────思わず息が止まった。

冒険者の男はキョトンとした顔をして、自分のドロドロと溶けている手を見つめているからだ。

「…………はっ?」

俺も負けず劣らず、素っ頓狂な声を上げたが、次に男の口から上がったのは、痛みを訴える大絶叫だった。

「い……いぎゃぁぁぁぁぁぁぁ────────っ!!!!い、いてぇっ!!いてぇよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
何でっ?!!何で俺の手がぁぁぁぁぁっ!!!!」

ドロドロと溶けている手からは、スライムみたいな赤い液体が流れており、やがて地面に落ちてしまったその手は、原型を失い地面に溶け込んでいく。

────ゾッ!

恐ろしくて震える俺や他の街の人たちの前で、やがて残りの手も足も、グズグズに熟れたトマトの様にドロドロと溶けては地面に消えていった。
そして立っている事もできなくなった男は、そのまま地面に崩れ落ちると……悲鳴を上げながらボロボロと涙を流す。

「俺が……俺が消えて……いく……。こ……こわい………。
────?……俺の存在が…………消え………。


……えっ…………?」

……………ジワッ……。

それだけ言い残して、男は跡形もなく消えてしまった。
まるで最初から誰もそこにいなかったかの様に……。

「ぎ……ぎゃあああああああああああっ!!!!!」

隣でその壮絶な『死』を目にしてしまった、もう一人の男は、悲鳴を上げて尻もちをつく。
そのままガタガタと震えながら、無表情で自分を見下ろす神王に向かって土下座をした。

「もっ、申し訳ありませんでしたっ!!!!どうか……どうかお許しをぉぉぉぉぉぉぉ!!!
ま、まさかっ……神王様のお力が本物だとは……!!どうか、どうか……命だけは……命だけは……っ!!」

ヒィヒィと泣きながら命乞いをする男を見ても……神王の表情は全く変わらない。
何を考えているのか分からないが動きがないため、もしかして許すのか?と思ったが……すぐに土下座をしている男の様子がどうもおかしい事に気付いた。

「……あ、……うぅぅ……??き、キモチワル……?? 」

土下座をしていた男が、突然腹を押さえて苦しみだす。
それにザワザワと周りは控えめに騒ぎ出したが、突然その男の口から大量のバッタが飛び出してきた時には、大きな悲鳴に変わった。

「バッ、バッタ??!!えっ!!何でそんなモノがっ???」

その数がまた尋常ではなく、まるで黒い竜巻くらいの量のバッタが男の口から出てくると、そのままそいつの身体に纏わりつき姿を隠してしまう。
まるで真っ黒な影の様になってしまった男は悲鳴を上げながら暴れていたが、次第に動きは弱まりとうとう倒れ込むと、そのままみるみる小さくなっていった。

「ま、まさか、体を食われているのか……?」

思わず吐き気を催し口元を慌てて押さえる。
街の人たちも俺と同様に口元を手で覆ったり、泣き叫んだり尻餅をついたりとパニックを起こす人たちで溢れたが────とうとう黒い塊は消えてしまい、バッタ達はあっという間に街の外へと飛び去ってしまった。

「……え……あ……。」

いっ……一瞬で二人の人間が死…………?

衝撃的な出来事に、悲鳴も上げられず恐怖で立ち尽くしていると────突然ステージの上にいる騎士たちからは歓声が上がり、最前線に並んでいた聖天人達と神官達からの惜しみない拍手が起きる。

パチパチ……。


パチパチパチパチパチ────!!!!

その場に鳴り響く拍手と神王を称える言葉達を聞きながら、俺は先ほどとは違う恐怖を抱いた。

なんなんだ……?この世界は……。
人が……二人も死んだんだぞ?

思わず一歩後ろに足を引いたが、それとは逆に俺と同じく動揺していたはずの周りの人たちの足は前へと出される。

『仕方ない。』
『これは神様が決めた事……。だから正しいんだ。』

全員の目には諦めが色濃く写っていて、これが彼らの日常なのかと理解すると────俺も後ろに引いた足をもう一度前に出した。

結局一緒か……1000年前と。

何事もなかったかの様に並び始めた人々を見て、大きく深呼吸をして感情にしっかり蓋をする。

力があるヤツが絶対的に正しくて、それがない奴らはそれに従うしかないクソみたいな世界。
文明だけじゃなくて、それも変わってないんだ……1000年経っても。

全てを悟った俺も落ち着きを取り戻し、皆と同様に前に進み出て大人しく順番を待った。


聖天人達の献上が終わると、次に続いたのは富裕層の平民達で、その次が平均的な平民達、そして最後は俺の様に日雇いの……いわゆる平均以下の平民たちの番。
一人一人、神王様に直に献上金を渡すのは富裕層の平民達までで、その次の平均的な平民達からはズラリと20人くらいが一纏めにステージ上に上がり、献上金を差し出す。
それを見下した様な目をした騎士たちが、端から回収していく形式になっている様だ。

まぁ、そりゃ~これだけの人数から一人一人受け取るとなると、一日じゃ終わらないもんな~。

だいぶ前の方には来たが、まだまだ続く列を見てゲンナリしてしまった。
しかし、流石に20人程が一斉に前に進めばかなり早く列が進んでいき、更に平均以下の平民達の列まで進むと、数は20から30人まで増えたためもっと早くなる。
終わった後はステージを降りて元の場所へと戻っていくのだが、これで一ヶ月は安泰であるからか皆の足取りは軽い。
感想 33

あなたにおすすめの小説

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL要素までとても遠いです。前半日常会多め。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する

スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。 そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。