【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん

文字の大きさ
4 / 26
社会人編

4 まだまだ続くよ幼なじみ生活

しおりを挟む
「おい、根本~。いつも凄いじゃねぇか~!それ、同棲している彼女が作った弁当だろ?」

ニヤニヤと誂うような顔をした会社の同期である< 唐木 アズマ>が俺の首に腕を回し、現在食べている弁当を指差す。

全て味の違う完全な三角形型のおにぎりが3つ。
衣はサクサク、中はジューシーな唐揚げに、甘々でふわふわの卵焼き。
そしてその周りには多種多様の色合いのおかずがこれでもかと詰められている俺の弁当は、料亭などで食べるなんとか御膳のレベルだ。

これが毎日の俺の弁当のクオリティー。

そんな弁当を会社でもそもそと食べていると、大体一緒に御飯を食べるアズマはこうして大げさに羨ましがる。

「……いや、彼女じゃねぇんだけど。」

「はぁぁぁぁ~!?んっなわけあるかよ!こんな豪華な手作りお弁当!しかも毎日だろう?!めちゃんこ愛されてるじゃねぇか!」

ブーブーと盛大に文句を言いながら、アズマは俺から腕を離し隣のデスクに座った。

「いや、愛って……。」

呆れながらため息をついたが、確かにちょっとこれは……と困ってしまい、情けなく眉は下がっていく。

このお弁当は、社会人になった今もルームシェアしている翔が作ったモノだ。
初めてルームシェアした時から、こういったお弁当はおろか、全ての家事は翔が相変わらずしてくれている。

『こんな生活は駄目だ。ルームシェアも止めよう!』

そう決意して、いざ翔に言おうとすると……。


「なんで?」

「どうしてそんな事言うの?────あ~……もしかして源の会社にいる後輩の子かな?
ちょっと距離が近いよね、あの子。もしかして気になっちゃった?」

「それとも、いつも電車で一緒になる大学生の女の子が原因かな?この間落とした定期券拾ってあげたんだもんね?少女漫画なんかでありきたりな展開だ。」


ペラペラペラ~と語られる内容に間違いはない。
ただ、どうして翔が知っているのかは分からない。

「……いや、なんで知って────……。」

「────はぁ……。とりあえず、どうしても源が電車がいいって我が儘言うから許してあげたけど、明日から車ね。」

翔は心底うんざりした様子で、俺の通勤用バックを漁り定期券を取り出すと、そのままゴミ箱へ勢いよく投げ捨てた。
慌ててそれを拾いあげようとする俺の手を掴み、怒りの形相で俺を見下ろす。


「駄目。────ね?分かった?」


その言い回し方がまるで子供相手みたいで、嫌な気持ちになったが……本気で怒っている事が分かったので「……分かった。」と、とりあえず返事を返しておいた。
すると、翔はニコッと嬉しそうに笑い、次の日から俺は翔の運転する車に乗せられての通勤に……。
流石に会社の前は止めて欲しいと頼み、少し離れた場所に止めてもらって会社に来ている。

俺は現在の生活を振り返り、フルフルと首を横に振った。

……やっぱりこの生活は普通じゃない。これは本当に本当にまずいぞ?

お弁当も一度作ってくれるのを止めて────と言いかけたら、なんでなんで攻撃からの、何故か夜ご飯は箸を持つのを禁止されてしまいとてもとても困っている。
なんのこっちゃ??と俺も他人から聞いたらそう思うだろうが、つまり全てのご飯を翔に食べさせて貰っているという事だ。
ちょうど雛鳥に餌を与える様に。

「源、あ~ん。」

「…………。」

無言で口を開ける俺を見て、とても幸せそうにする翔。
俺は淡々と口を動かして、この地獄の様な時間が過ぎ去るのを待っているしかないのだが、翔は俺の口をクニクニと触ったり顎を触ったり、首を触ったりと落ち着きない様子を見せてきた。

「あ~……いいな、こういうの。
抵抗がなくて大人しいのって、自分のモノって感じがしていいなって思うよ。このまま閉じ込めたいな。
手足とか動かなくなっちゃえばいいのに……。
ご飯を食べるのも、お風呂もトイレも俺がいないとできないね。いいな~。────ねぇ、源はそういうのどう?嬉しい?」

ニヤニヤしながらわけのわからない事を尋ねてくる翔。
『嬉しい』がどこにも存在しない事を言われ、流石にその時は正直に答えた。

「俺は、できれば寝たきり期間は少なく死にたいよ……。
まぁ、ポックリが理想的かな。
それと介護職はいつも人手不足ってニュースでやってたから、就職には困らないんじゃないか?」

詳しくは知らないが、介護に興味があるならやってみればいいと思う。
本心でそういったのだが、翔は腹を抱えての大爆笑だ。
そのままヒーヒー笑いながら、結局現在もまるで要介護者の様に俺に接してくる。


「マジでやめて欲しいんだよな……。」

「??なんか言ったか?それよかよ~聞いたか?今週末、また新しい派遣の子たちが来るらしいじゃん!
ものすごい美人ばっかなんだってよ。
こりゃ~テンション上がりまくっちゃいますな~!」

「へぇ~。そりゃ、いいな。部署内が華やかになる。」

定期的にやってくる派遣の子たちは、正社員……特に男性職員にとっては楽しみの一つ。
更に派遣されてくる子が女性!若い!美人!となれば、全員のテンションが上がり、あからさまに仕事をがんばり始めるのでとても分かりやすいなと思う。
勿論俺だって、異性の女性の目があると思えば、多少はやる気がでるってもんだ。

アズマの話を聞いて良い楽しみができたな~と思いながら、今日も翔が作ったお弁当を完食しお弁当箱を洗うと、そのまま仕事に戻った。

帰りは勿論翔の車でのお出迎えなので、少し離れた場所で待っていると、そんなに待たずに翔が車で颯爽と現れる。

「おまたせ源。────さ、帰ろう?」

「あぁ。いつもありがとう。」

車の助手席に乗り込みシートベルトをつけ……ようとしたら、翔がすぐにやってくれたので、そのまま固まった。

「これでよし。帰ろっか!」

「う、うん……。」

とうとうシートベルトまで締めてもらうって……。

ザッ!と青ざめてしまったが、そんな俺の事などお構いなしに翔は車を発進して、あっという間に家へ到着した。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)

ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子 天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。 可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている 天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。 水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。 イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする 好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた 自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

【「麗しの眠り姫」シリーズ】苦労性王子は今日も従兄に振り回される

黒木  鳴
BL
「麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る」でセレナードたちに振り回されるお世話係ことエリオット王子視点のお話。エリオットが親しい一部の友人たちに“王子(笑)”とあだなされることになった文化祭の「sleeping beauty」をめぐるお話や生徒会のわちゃわちゃなど。【「麗しの眠り姫」シリーズ】第三段!!義兄さまの出番が少ないのでBL要素は少なめです。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

片思いの練習台にされていると思っていたら、自分が本命でした

みゅー
BL
オニキスは幼馴染みに思いを寄せていたが、相手には好きな人がいると知り、更に告白の練習台をお願いされ……と言うお話。 今後ハリーsideを書く予定 気がついたら自分は悪役令嬢だったのにヒロインざまぁしちゃいましたのスピンオフです。 サイデュームの宝石シリーズ番外編なので、今後そのキャラクターが少し関与してきます。 ハリーsideの最後の賭けの部分が変だったので少し改稿しました。

振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話

雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。  諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。  実は翔には諒平に隠している事実があり——。 諒平(20)攻め。大学生。 翔(20) 受け。大学生。 慶介(21)翔と同じサークルの友人。

隣の番は、俺だけを見ている

雪兎
BL
Ωである高校生の湊(みなと)は、幼いころから体が弱く、友人も少ない。そんな湊の隣に住んでいるのは、幼馴染で幼少期から湊に執着してきたαの律(りつ)。律は湊の護衛のように常にそばにいて、彼に近づく人間を片っ端から遠ざけてしまう。 ある日、湊は学校で軽い発情期の前触れに襲われ、助けてくれたのもやはり律だった。逃れられない幼馴染との関係に戸惑う湊だが、律は静かに囁く。「もう、俺からは逃げられない」――。 執着愛が静かに絡みつく、オメガバース・あまあま系BL。 【キャラクター設定】 ■主人公(受け) 名前:湊(みなと) 属性:Ω(オメガ) 年齢:17歳 性格:引っ込み思案でおとなしいが、内面は芯が強い。幼少期から体が弱く、他人に頼ることが多かったため、律に守られるのが当たり前になっている。 特徴:小柄で華奢。淡い茶髪で色白。表情はおだやかだが、感情が表に出やすい。 ■相手(攻め) 名前:律(りつ) 属性:α(アルファ) 年齢:18歳 性格:独占欲が非常に強く、湊に対してのみ甘く、他人には冷たい。基本的に無表情だが、湊のこととなると感情的になる。 特徴:長身で整った顔立ち。黒髪でクールな雰囲気。幼少期に湊を助けたことをきっかけに執着心が芽生え、彼を「俺の番」と心に決めている。

処理中です...