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しおりを挟むその場にいた全員の動きが止まりました。涼珩が、ふらりと前に歩み出ます。
「……え?何を言っているんだ?彼女は身重だぞ。散歩にでも出ただけだろう?」
「ち、違います!若旦那様……お部屋が、もぬけの殻なのです」
使用人は涙目になりながら、続けて言いました。
「皆様が裁判所へ出かけられてすぐのことでした。連花様は『気分が優れないから奥の部屋で休む』と仰って、誰も近づけないようにされました。そして、先ほどお茶をお持ちした時には、もう……」
「部屋にいなかったと言うのか?どこかへ隠れているだけではないのか?」
「それが……箪笥の中の衣類も、鏡台の髪飾りも、すべてなくなっておりました。それに……」
使用人は言い淀み、主人である凌家当主を見上げました。
「それに何だ。はっきり言え!」
「……旦那様の書斎の金庫が開けられておりました。中に入っていた当面の運転資金と、奥様の貴金属を隠してあった場所も……すべて、荒らされておりまして……」
「ひっ……」
夫人が、短い悲鳴を上げて胸を押さえました。
「う、嘘だろう?あたしの……あたしの宝石が?あの子が……持ち逃げしたって言うのかい?」
「裏口には馬車の跡がありました。おそらく、手引きしていた者がいたのかと……」
決定的な証言でした。 それは、連花が単に家出したのではなく、計画的に逃亡したことを意味しています。
「あ……ああ……」
夫人は膝から崩れ落ちました。豪華な衣服が石畳の埃にまみれますが、彼女は気にする様子もありません。言葉にならないうめき声を漏らしています。
「賠償金を払わなきゃならないのに……金を持って逃げられた……?」
当主もまた顔色を土気色に変えて、怒鳴る気力すら残っていないようです。
「終わりだ……何もかも、終わりだ……」
その中で一人、涼珩だけが、現実を受け入れられずにいました。彼は首を激しく横に振ります。
「う、嘘だ。連花がそんなことするはずない。彼女は僕を愛しているんだ!きっと誰かに誘拐されたんだ、そうに決まってる……」
「若旦那様、ですが書き置きが……」
使用人が懐から一枚の紙を取り出しました。涼珩はそれをひったくります。 そこには、見覚えのある文字でこう書かれていました。
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