親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

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昔からのしきたりが少しずつ変わり、身分が極端に離れていなければ、お互いの気持ちで将来を決める自由恋愛が当たり前になりつつあった頃のお話です。

私、リリアーナは、学園の図書室で彼……アルフレッド様と出会いました。

「あ……すみません。同じ本を取ろうとしてしまいました」 

背表紙へと触れる手が重なり、私は反射的に手を引きます。
同じ本へと触れた方は、制服の学園章を見たところ、一つ上の学年であるようでした。

「いや、かまわないよ。あなたが先に触れたのだから、どうぞ持って行ってください」

彼はそういうと、本を引き抜いて私に手渡してくださいました。

「そんな……」

「気にされないように。ところで、その本は僕たちの学年で習う範囲だと思うが……君は勉強家なんだね」

それが始まりでした。 

アルフレッド様は侯爵家のご嫡男で、私は伯爵家の娘です。学園で顔を合わせるたびに、私たちは自然と言葉を交わすようになりました。

「リリアーナ様、今日の講義はどうでした?」 

「とても興味深かったです。でも、少し難しくて……アルフレッド様は、もう完璧に理解されているのでしょう?」

「はは、まさか。僕も必死に覚えていたところだよ。でも基礎を去年に習っていたから……よければ、放課後に少しおさらいをしませんか?中庭にいいテラスがあるんだ」

そんな風に誘われて、二人で過ごす時間が増えていきました。 
アルフレッド様はいつも優しくて、私の話を丁寧に聞いてくれました。

そんなある時、ふとした拍子に彼が聞いてきたのです。

「……リリアーナ様には、その……親同士が決めたお相手などは、いらっしゃるのですか?」

私は少し驚いて、けれど正直に答えました。

「いいえ……幸いなことに、私の両親は、将来は自分で見つけた方と歩みなさいと……そう言ってくれているんです。ですから、婚約者はおりません」

そして、少しだけ迷ってから、私も問いを返しました。

「……アルフレッド様は?」 

「僕もそんな相手はいません。……よかった。それを聞いて、なんだかホッとした」

彼はそう言って、困ったように……けれど嬉しそうに笑いました。 
その笑顔を見て私の心は確かに跳ねたのです。 

(アルフレッド様は……もしかして、私と同じ気持ちなのかもしれない……)

そう思わずにはいられませんでした。

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