親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

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それから季節が一つ巡った頃。
アルフレッド様が私の名から敬称をなくした辺りです。

夕暮れの校舎の影で、彼は私の手を取って言いました。

「リリアーナ。君と出会ってから、僕の世界はとても明るくなったんだ」 

「アルフレッド様……」 

「まだ学生の身で、早いと思われるかもしれないけれど……卒業しても、その先もずっと君の隣にいたいんだ。リリアーナ、僕の婚約者になってくれませんか?」

真っ直ぐな瞳。少し震える声。それは、家同士の契約ではなく、彼自身の心からの言葉でした。

「……はい。喜んでお受けいたします。私の方こそ、あなたと一緒にいたいと思っていました」

(嬉しい……)

幸せすぎて、胸が苦しいくらいでした。アルフレッド様は、私の手をぎゅっと握りしめてくれました。

「ありがとう、リリアーナ!嬉しいな……」

嬉しいと、そう感じた瞬間に、相手からも嬉しいと返していただける。
慕う人と心が通じ合うことがこんなにも暖かくなるのだと、私は知りませんでした。

「今度の長期休暇には、ぜひ僕の家に来てほしい。家族に、僕の大切な人を紹介したいんだ」 

「はい、楽しみにしております。大切なご家族にお会いするのですから……粗相のないよう、精一杯務めさせていただきます」



家に帰ってから、私はすぐに家族に報告しました。お父様とお母様は、手を取り合って喜んでくれました。

「アルフレッド様か。侯爵家の方なら申し分ないし……何よりリリアーナが選んだ相手なら、父は全力で応援しよう」 

「よかったわね、リリアーナ。そんなに素敵な方と心が通じ合うなんて……本当におめでとう」

そして一つ年下の弟も帰宅して、家族そろっての食事中。
彼は少し複雑そうな顔をしながらも口を開きました。

「……姉様、婚約が決まったそうですね。おめでとうございます」 

「ありがとう。今度、彼のご実家にお邪魔することになったのよ」 

「侯爵家ですか。家格としては十分すぎますが……その、アルフレッドという男。中身はどうなんです」 

「とっても優しいのよ。学園でも評判の誠実な方なの」

私がそう答えると、弟はふんと鼻を鳴らしてナプキンで口を拭いました。

「誠実、ね。まあ、僕の将来のためにも、姉様の嫁ぎ先がしっかりしているのは助かります。変な相手に引っかかって実家こちらに迷惑だけはかけないでくださいよ」 

「もう、そんな言い方しなくてもいいじゃない」 

弟は優秀で、将来を期待されています。幼いころから年の近い王族の側近候補として、王城へ上がることを許されていました。

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