親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

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「事実でしょう。家柄を汚すような真似は、僕自身にも関わるのだから。……まあ、何かあったら相談くらいは乗りますけど」

「ふふっ……ありがとう。頼りにしているわ」

そっけない言い方でしたが、それが弟なりの祝いの言葉なのだと分かっていました。  

アルフレッド様との、幸せな結婚。お互いを思い合い、支え合って生きていく温かな家庭。
もしも困難なことがあったとしても、あの方となら二人手を取り合って乗り越えていける。
 
……私は、それ以外の未来なんて想像すらしていませんでした。

……あの日、彼の家へと向かう馬車に乗っていた私は、まだ知らなかったのです。 

彼の隣には、私が入り込めない特別な居場所を持つ女性がいることを。 
そしてアルフレッド様の優しさが、時に残酷な凶器になることを。



「さあ、着きましたよ、リリアーナ」

そう言って案内をされた屋敷の中で、彼の家族と誰一人として会わないまま。誰よりも先に紹介されたのは、アルフレッド様の昔からの友人だという女性でした。

「あー!アル、やっと帰ってきた!遅いよー!」

華やかな声。親しげに彼の腕を叩く姿。 
それが、私の幸せにひびが入り始めた瞬間だったのだと。……今ならそう、はっきりと分かります。

「あなたがリリアーナちゃん?案外普通の子なんだね」

その女性はとびっきりに美しいというわけではないのですが、表情がくるくるとよく変わる賑やかな方でした。

「私はカレン。アルとは腐れ縁っていうか、兄弟みたいなもんだから。よろしく!」

カレンと名乗ったその女性は、私に向かって屈託のない……そして、少しだけトゲのある笑顔を向けたのです。

当時の私はまだ、この違和感を気のせいだと思おうとしていました。 

だって、あんなに大切な誓いをしたのだから。アルフレッド様が、私を大事にしてくれているのだから。
将来を誓い合ったその時は、こんなことは予想していなかったけれど……

……つまり。この時の私は、まだ何も分かっていなかったのです。
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