親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

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あの日、侯爵家へお邪魔した時のこと。

アルフレッド様の生家であるカスティエル侯爵家の邸宅。
そこは馬車が敷地に入ってから玄関に辿り着くまでが、一つの旅のような広さでした。

歴史を感じさせる重厚な石造りの外観。整然と整えられた庭園。 
これからアルフレッド様のご家族へ挨拶をさせていただくのだと思うと、背筋が自然と伸びるのを感じます。

「さあ、着きましたよ、リリアーナ。少し緊張しているかな?」

馬車の扉が開くと、アルフレッド様が優しく手を貸してくださいました。長旅で少し疲れてはいましたが……彼の穏やかな笑顔を見ると、ふっと心が軽くなります。

「ええ、少しだけ。でも、アルフレッド様のご家族にお会いできるのが楽しみですわ」 

自然と浮かんできた微笑みでそう返事をすると、アルフレッド様も目を細くしてくださいます。

「父も母も、君が来るのをずっと楽しみにしていたんだ。まずはサロンで一休みしよう、お茶の用意をさせてあるから」

照明が輝くエントランスを通り、磨き上げられた廊下を進みます。案内されたサロンの扉を、使用人の方が恭しく開けました。

「どうぞ、リリアーナ」

アルフレッド様に促されて一歩足を踏み入れた瞬間。何を目にするよりも先に……私は、そこに誰かがいることへ気が付きました。

ソファに深く腰掛け、膝を組んでこちらに手を振っている一人の女性。
取り立てて目を引くような美貌というわけではありませんが……くるくるとよく動く瞳と、大きく開かれた口元が印象的な顔立ちの方でした。

(あら……アルフレッド様のお姉様かしら?)

その場に溶け込みきった、あまりにも自然な振る舞い。ご令嬢らしい雰囲気こそありませんが、それもここがご実家でしたら頷けるお話。
家主のような顔をしてくつろいでいるその姿に、私はてっきりご家族なのだと思ってしまったのです。

私は慌てて、淑女としての礼をしようと膝を折りました。

「ご挨拶が遅れまして、申し訳ございません。アルフレッド様の……」

言いかけた私を遮るように、その女性がソファから立ち上がりました。

「あー!アル、やっと帰ってきた。遅いよー、待ちくたびれちゃったじゃない!」

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