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華やかな、けれど少し大きな声。彼女は流れるような動作でアルフレッド様に駆け寄り、親しげに彼の腕をバシバシと叩きます。
そのあまりの距離の近さと振る舞いに、私は思わず固まってしまいました。
……けれどアルフレッド様は、その方の振る舞いを気にする様子もありません。
「痛いよ、カレン。君は相変わらずだね」
「相変わらずなのはアルでしょ!聞いてた予定より全然遅いんだから」
「聞いてたって、予定を話した覚えはないんだけど……それにカレン、君はどうしてここにいるんだい?」
アルフレッド様が困ったように笑いながら、彼女に問いかけます。その口調には、明らかに気心の知れた相手への親愛がこもっていました。
(予定通りに来たつもりだったけれど……アルフレッド様はなんて伝えていたのかしら。もし遅れていたのだとしたら、ご家族から無礼な娘だと思われたりしないかしら……)
そして私と来たら、その女性が口にする言葉の方に気を取られてしまっていたのでした。
……今だったら、他でもないアルフレッド様と共に馬車に乗せて頂いてお屋敷を訪ねたのだから、時間通りだとすんなり分かるのですけれど。
「なによ、冷たいなあー!私がおばさまに会いに来ただけだよ。昨日来たときに新しい刺繍の図案が手に入ったって言ったら、見せに来てって言われたの。それだけだよっ!」
「そうか、母様に呼ばれていたんだ。……だとしたら、まっすぐ母様の部屋に行けばいいじゃないか」
(おばさま……と言うことは、ご家族ではないようだけれど……)
それにしても、話が本当ならば昨日も来ているということになるようで。
「いいでしょ。今はアルの婚約者ちゃんにご挨拶したかったんだから!アルがだらしない顔して学園で惚れ込んだ子が、どんな子か気になるに決まってるじゃん?」
「……そんな顔はしていないよ」
「ああ、そうですかあ?」
苦笑をしたアルフレッド様を見て、カレンと呼ばれた女性はげらげらと快活に笑いました。
そして私の方へと視線を向けます。
(ご友人……?でも、この距離感は……)
アルフレッド様は困惑している私に気づいたのか、少し照れくさそうに紹介してくれました。
「ごめんね、リリアーナ。彼女はカレン。隣の領主の娘なんだけど、僕とは幼い頃からずっと一緒でね。家族みたいなものなんだ」
そのあまりの距離の近さと振る舞いに、私は思わず固まってしまいました。
……けれどアルフレッド様は、その方の振る舞いを気にする様子もありません。
「痛いよ、カレン。君は相変わらずだね」
「相変わらずなのはアルでしょ!聞いてた予定より全然遅いんだから」
「聞いてたって、予定を話した覚えはないんだけど……それにカレン、君はどうしてここにいるんだい?」
アルフレッド様が困ったように笑いながら、彼女に問いかけます。その口調には、明らかに気心の知れた相手への親愛がこもっていました。
(予定通りに来たつもりだったけれど……アルフレッド様はなんて伝えていたのかしら。もし遅れていたのだとしたら、ご家族から無礼な娘だと思われたりしないかしら……)
そして私と来たら、その女性が口にする言葉の方に気を取られてしまっていたのでした。
……今だったら、他でもないアルフレッド様と共に馬車に乗せて頂いてお屋敷を訪ねたのだから、時間通りだとすんなり分かるのですけれど。
「なによ、冷たいなあー!私がおばさまに会いに来ただけだよ。昨日来たときに新しい刺繍の図案が手に入ったって言ったら、見せに来てって言われたの。それだけだよっ!」
「そうか、母様に呼ばれていたんだ。……だとしたら、まっすぐ母様の部屋に行けばいいじゃないか」
(おばさま……と言うことは、ご家族ではないようだけれど……)
それにしても、話が本当ならば昨日も来ているということになるようで。
「いいでしょ。今はアルの婚約者ちゃんにご挨拶したかったんだから!アルがだらしない顔して学園で惚れ込んだ子が、どんな子か気になるに決まってるじゃん?」
「……そんな顔はしていないよ」
「ああ、そうですかあ?」
苦笑をしたアルフレッド様を見て、カレンと呼ばれた女性はげらげらと快活に笑いました。
そして私の方へと視線を向けます。
(ご友人……?でも、この距離感は……)
アルフレッド様は困惑している私に気づいたのか、少し照れくさそうに紹介してくれました。
「ごめんね、リリアーナ。彼女はカレン。隣の領主の娘なんだけど、僕とは幼い頃からずっと一緒でね。家族みたいなものなんだ」
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