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父の短い返事とともに、馬車がゆっくりと動き出しました。私は去りゆく二台の馬車を、居住まいを正して見送ります。
「お父様、お母様、エリオット。ありがとうございます。皆さまもお気をつけて」
車輪が砂利を踏みしめる音。それが遠ざかるにつれ、朝の静寂が屋敷を包んでいきました。手の中にある紙束は、数枚だというのになぜか重みを伴って感じられます。
馬車が見えなくなるまで見送り、私はゆっくりと屋敷の中へ戻りました。
手の中にある紙束からは、エリオットの配慮が伝わってくるかのよう。
私はそのまま自室へ向かい、飾り気のない机の前に座ります。
弟が睡眠を削ってまで用意してくれたこの文書へと、報いなければなりません。
弟が用意したのは彼が直接書付けたものを簡単に綴じてあります。
(えっと……)
表紙をめくると、そこには何人かの情報が並んでいました。その多くは余計な感情が介在しないかのような、合理的なものたち。
……とは言え。
(あのエリオットが用意するものですから、彼が好意的に見ている人たちなのでしょう)
ここに名前が並ぶということは、エリオットが縁を結んでも構わないというような人間ということですから。
(本人は気が付いていないかもしれませんが……)
人柄を称えるような情緒的な言葉は見当たらないというのに、それが逆に、人柄については書くまでもないと言っているようでした。
「……ここまで考えてくれているなんて」
指先でその文字をなぞると、弟の合理主義といずれ伯爵家を背負い立つものとしての矜持。伯爵家の中にある私への守護の思いも伝わってきます。
と同時に、エリオットにとっての婚姻とは、愛の誓いではなく伯爵家という組織を強化するための合併契約に他ならないことが伝わってきました。
彼がいくら優秀であるとはいえ、まだ社交デビューも済ませていない身。本人の周囲にいる独身貴族というのは、それほど人数も多いわけではなさそうです。
けれども、そこは王城へと学ぶために上がっているエリオットが選定した人物たち。
「お父様、お母様、エリオット。ありがとうございます。皆さまもお気をつけて」
車輪が砂利を踏みしめる音。それが遠ざかるにつれ、朝の静寂が屋敷を包んでいきました。手の中にある紙束は、数枚だというのになぜか重みを伴って感じられます。
馬車が見えなくなるまで見送り、私はゆっくりと屋敷の中へ戻りました。
手の中にある紙束からは、エリオットの配慮が伝わってくるかのよう。
私はそのまま自室へ向かい、飾り気のない机の前に座ります。
弟が睡眠を削ってまで用意してくれたこの文書へと、報いなければなりません。
弟が用意したのは彼が直接書付けたものを簡単に綴じてあります。
(えっと……)
表紙をめくると、そこには何人かの情報が並んでいました。その多くは余計な感情が介在しないかのような、合理的なものたち。
……とは言え。
(あのエリオットが用意するものですから、彼が好意的に見ている人たちなのでしょう)
ここに名前が並ぶということは、エリオットが縁を結んでも構わないというような人間ということですから。
(本人は気が付いていないかもしれませんが……)
人柄を称えるような情緒的な言葉は見当たらないというのに、それが逆に、人柄については書くまでもないと言っているようでした。
「……ここまで考えてくれているなんて」
指先でその文字をなぞると、弟の合理主義といずれ伯爵家を背負い立つものとしての矜持。伯爵家の中にある私への守護の思いも伝わってきます。
と同時に、エリオットにとっての婚姻とは、愛の誓いではなく伯爵家という組織を強化するための合併契約に他ならないことが伝わってきました。
彼がいくら優秀であるとはいえ、まだ社交デビューも済ませていない身。本人の周囲にいる独身貴族というのは、それほど人数も多いわけではなさそうです。
けれども、そこは王城へと学ぶために上がっているエリオットが選定した人物たち。
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