親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

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酒に任せた文面がはたしてどのようなことを書き連ねたか、具体的な文面は気怠さの向こうにあって判然とはしない。だとしても間違ったことは書いていないという思いだけが彼の中にあった。

リリアーナはヴィンセントよりも年下だし、親の爵位だって格下である。
彼が導いてやらなければならない存在なのだ。
つまりは自分の正しさを突きつければ、リリアーナは必ず折れるだろう。彼はそう信じて疑わなかった。

「……よし、この辺りでいいだろう」

整えられた髪を撫でつけ、上着の皺を払う。アルフレッドは謝罪に現れる婚約者を迎えるにふさわしい格好を作り上げると、自室の戸を開けて廊下へ出た。
なるべく颯爽と出たいところではあったが、アルコールの残った身は重たく、少しばかりよろめいたことに対して彼は知らないふりをした。



時は既に昼下がり。アルフレッドは侯爵邸の広々とした応接室にいた。
窓の外に広がる庭園を眺めながら、彼は何度も懐中時計の蓋を開く。約束の刻限はとうに過ぎている。

リリアーナのいる伯爵邸まで手紙を送るよう指示をしたのは昨晩のことだ。
そこから考えても、手紙を受け取って読み込んだリリアーナが出発を決めれば今頃着いていてもおかしくはないはずだった。

(……さては、僕のところに来るからと念入りに身支度をしているな。リリアーナのやつめ)

彼は焦燥を表に出さず、優雅に足を組み替えた。身なりを整えるのに手間取っているのだろうと、そう自分に言い聞かせている。
何故ならアルフレッドとて、彼女を迎えるために今日はことのほか装いに気合を入れているのだから。

「……遅い」

けれども思わず独り言ちてしまった声は、静まり返った室内に虚しく響いた。

傍らのソファでは既にカレンがくつろいでいた。日が高く上り切ってからようやく起きてきた彼女は、今もはだけた室内着のまま行儀悪く足を投げ出している。

「うーん……」

彼女は使用人に我が物顔で用意させた手近な菓子を次々と口に放り込み、退屈そうに欠伸を噛み殺した。

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