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「僕が……あいつを、導いて……あの手紙は、僕への忠誠を誓わせるための……必要な教育なんです。明日になれば、あいつは泣いて謝りに来る。だから……」
アルフレッドは震える唇で、自らの正当性を必死に訴えかけた。けれどもリリアーナが気分を害して帰宅したことも、それを追撃するようにアルフレッドが手紙を出したことも父親の知るところではない。
それらすべての報告を受ける前に、まず息子への罰を先行したためだった。
侯爵は怪訝そうに眉をひそめる。
「手紙?……謝りに来る?お前はさっきから何の話を……」
侯爵は目の前で濡れ鼠になっている息子を、改めて見下ろした。アルフレッドは夜会に臨むような正装をしている。それは帰還した両親を出迎えるためではなく、リリアーナを平伏させて出迎えるためだったのだが。
その上質な生地が今は無惨に水を吸い、床に重く垂れ下がっていた。
侯爵の沈黙を察し、傍らに控えていた執事が静かに歩み寄る。
「旦那様、お耳に入れたきことが……」
執事は主人の耳元で、ことの次第を手短に報告した。
侯爵夫妻が公務へ出かけた後のことだった。
アルフレッドの振る舞いがリリアーナとその弟へと無礼をし、その結果二人は早急に帰宅の道を辿ったこと。
そのすぐ晩に彼が独断でリリアーナへ向け、一方的に近い内容を記した横柄な手紙を書いたこと。
それを早朝に伯爵家へ届けさせたこと。そして、彼女が謝罪に訪れるのを今か今かと酒を煽りながら待ち構えていたこと……
報告が進むにつれ、侯爵の表情から温度が消えていった。
夫人などは絶句をして、扇を取り落とさんばかりになっている。
「……そのような手紙を、ベルンシュタイン家に届けさせたというの?」
「愚かだとは思っていたが……!」
侯爵の低い声が、冷たいドレッシングルームに響き渡った。それは怒りを通り越し、理解しがたい愚行を目の当たりにした者の乾いた響きを帯びていた。
「お前は、自分が何をしたのか分かっているのか……」
アルフレッドは震える唇で、自らの正当性を必死に訴えかけた。けれどもリリアーナが気分を害して帰宅したことも、それを追撃するようにアルフレッドが手紙を出したことも父親の知るところではない。
それらすべての報告を受ける前に、まず息子への罰を先行したためだった。
侯爵は怪訝そうに眉をひそめる。
「手紙?……謝りに来る?お前はさっきから何の話を……」
侯爵は目の前で濡れ鼠になっている息子を、改めて見下ろした。アルフレッドは夜会に臨むような正装をしている。それは帰還した両親を出迎えるためではなく、リリアーナを平伏させて出迎えるためだったのだが。
その上質な生地が今は無惨に水を吸い、床に重く垂れ下がっていた。
侯爵の沈黙を察し、傍らに控えていた執事が静かに歩み寄る。
「旦那様、お耳に入れたきことが……」
執事は主人の耳元で、ことの次第を手短に報告した。
侯爵夫妻が公務へ出かけた後のことだった。
アルフレッドの振る舞いがリリアーナとその弟へと無礼をし、その結果二人は早急に帰宅の道を辿ったこと。
そのすぐ晩に彼が独断でリリアーナへ向け、一方的に近い内容を記した横柄な手紙を書いたこと。
それを早朝に伯爵家へ届けさせたこと。そして、彼女が謝罪に訪れるのを今か今かと酒を煽りながら待ち構えていたこと……
報告が進むにつれ、侯爵の表情から温度が消えていった。
夫人などは絶句をして、扇を取り落とさんばかりになっている。
「……そのような手紙を、ベルンシュタイン家に届けさせたというの?」
「愚かだとは思っていたが……!」
侯爵の低い声が、冷たいドレッシングルームに響き渡った。それは怒りを通り越し、理解しがたい愚行を目の当たりにした者の乾いた響きを帯びていた。
「お前は、自分が何をしたのか分かっているのか……」
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