親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

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アルフレッドが目を覚ましたとき、視界に入ったのは低く垂れこめた灰色の空だった。

窓を叩く雨粒の音はまだ疎らだが、湿った空気が部屋の隅々にまで淀んでいる。まるで、重苦しい自らの心中を写し出したかのようだと彼は思った。

リリアーナのいる伯爵家はここからそれほどには遠くはない。そして天気は侯爵家の有する領地から、彼女のいる伯爵家の領地の方へと流れていくことが多かった。

(だとするならば、きっと彼女のいる伯爵家でも雨が降っているに違いない……)

それがアルフレッドには、リリアーナの流している涙のように思われて仕方がなかった。
今日、彼はリリアーナのもとへ向かわなければならない。

昨夜、両親から突きつけられた言葉は峻烈だった。
必ず謝罪して先日の非礼を塗り替え、婚約の継続をお願いするようにと……口にこそしなかったものの、このままでは嫡男としての地位すら危ういのだと、逃げ場を塞がれた。

アルフレッドは力なく身を起こし、用意された着替えに袖を通した。鏡の中の自分には生気がない。
自室のクローゼットから選び抜かれた上質な上着も、今の彼にはただの重石に感じられた。

(なぜ、あんなことになったのだ)

頭をよぎるのは、先日にリリアーナか残していった冷ややかな眼差しだ。たかが少し、互いの意見が行き違って言い争いをしただけだ。それで彼女は婚約を取りやめるのだといい、手紙までも無視を決め込んでいる。

「はあ……」

身支度を整える指先が、わずかに震える。香水を一吹きし、身だしなみを整えても、胸の奥にあるうんざりとした心地は消えなかった。

謝罪など、何故しなければならないのかがアルフレッドには今ひとつ分かっていない。それなのに今の彼はそうせざるを得なかった。

彼は重い足取りで部屋を出た。玄関先に待たせている馬車へと乗り込む。車輪が石畳を叩く規則的な音が、彼の耳には自分を追い詰める足音のように響いていた。

「……リリアーナ、君なら分かってくれるはずなんだ……」

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