婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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「……何ですって?」

「だってヴィクトリア様ってば、ジェラルド様にも相手にされてないじゃないですか。自分が愛されてないからって……私たちが仲良くしてるのが羨ましいんでしょう?」

彼女の瞳には、はっきりとした悪意と優越感があった。 
……この令嬢にとって、誰かの婚約者が泣いているだとか学園の秩序が乱れることなどはどうでもいいのだ。
ただ隣に男性陣をはべらしているだとか、私のことを悔しがらせている……そんなことばかりが彼女を動かしている。

「ふふっ、かわいそうですねぇ。愛されもしないで、文句ばっかり。……でも仕方ないですよね?ヴィクトリア様ってば、女としての魅力がなぁんにも無いんだもの」

「……」

「女の子の魅力ですよ、分かりますぅ?私みたいに可愛くって甘え上手で、愛さずにはいられないっていうような。ね!」

「それは……」

私が口を開きかけた、その時だった。

「うるさいぞ、何の騒ぎだ……」

まるで何かタイミングを見計らったかのように、そこに現れたのはジェラルド殿下だった。
するとミナの態度は一変する。先ほどから浮かべていた嘲笑は瞬間的に消え失せ、彼女は両手で顔を覆うと大粒の涙を流し始めたのだ。

「ひっ、ううっ……ごめんなさい、ごめんなさいっ……!」

「ミナ!?どうした、何があった!」

殿下が慌てて駆け寄る。 ミナ嬢は震えながら、殿下の背中に隠れるようにして私を指差した。

「ヴィクトリア様が……酷いんです……! 私がただみんなと仲良くしていただけなのに、泥棒猫とかふしだらな女とか……!」

「……言っておりません」

一応否定はしておくけれど、当然のように殿下は聞く耳を持っていなかった。

「ヴィクトリア貴様、またか!」

殿下は私を睨みつけ、ミナ嬢を庇うように立ちはだかる。
カイン様やレイ様も、ミナ嬢の涙を見てまたしてもころっと態度を変える。

「ヴィクトリア嬢、今の言い草は酷いぞ」

「彼女が何をしたって言うんだ」

などと言い、私を責め立て始めた。
……これは……この人たち、一体何を聞いていたのかしら……?

「……あなた方、本当は人の発する言葉なんて何も聞いていないんじゃないの?」

「なっ」

「なんだと、どういう意味だ!」

途端にお二方は怒り始めた。

…………いけません。
頭の中でつぶやくだけで済ませようとした疑問が、そのまま口から出てしまったようです。
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